ウオッチドック編集部は2026年7月3日、「アンパンマン」が描かれている岡山発高知行の特急電車に乗り、土佐山田駅(高知県香美市)に降り立った。昔ながらの小さな駅のホームには、到着メロディーの「アンパンマンマーチ」が鳴り響いた。アンパンマンの産みの親、やなせたかしさんの故郷・香美市への玄関口だ。
この小さな駅に降り立ったのは、徳島県那賀川のダムと土砂問題などを昨年取材したのがきっかけだった。同じ剣山(つるぎさん)山系を源流とする物部川(ものべがわ)のいまを知りたいと思ったからだ。ちなみに、やなせたかしさんが生まれたのは物部川のほとり。NHKの連続テレビ小説『あんぱん』で、俳優の阿部サダヲさん演じる「屋村草吉(ヤムおじさん)」が釣りをしていた川こそが近くを流れる物部川だ。
今回の取材では、川の未来を憂う2人に力を貸してもらった。現地を案内していただいた物部川漁協の松浦秀俊組合長と、取材に協力していただいたのがNews Kochiの依光隆明記者(※元高知新聞、元朝日新聞の記者)だ。

到着してすぐ、漁協の事務所へ向かった。松浦組合長は漁協の調査資料や「物部川21世紀の森と水の会」の発行雑誌、数々の写真を提示しながら、理路整然と言葉を紡ぐ。真摯な語り口の中で、特に印象に残った言葉があった。

「高知県は、かつて全国1の天然アユの漁獲高があったんだけど、今は激減しているんです」
「アユが激減した理由は、森と川と海の断絶です」
「物部川はかつてはよい川でした。今はすっかり変わってしまった・・・」
「物部川を取り巻く環境は厳しいです」
「アユが消える将来が来るかもしれない」
(※左の写真は、物部川漁協の松浦秀俊組合長)
松浦組合長が語る言葉の端々からは、日本の森、川、海が悲鳴を上げている現状への強い危機感が伝わってきた。ウオッチドックの連載「森と水シリーズ」では、日本各地の森と水の問題を取り上げている。3日間という限られた期間だったが、地元の川を誰よりも愛し、知り尽くした松浦組合長の案内のもと、物部川でいま何が起きているのか、傷跡と再生への道のりを辿ることにした。(次号につづく)
