徳島県の一級河川・那賀川の流域を昨年7月に取材したウオッチドッグ編集部は、ちょうど1年後の今年7月、高知県の一級河川・物部川流域を取材した。

那賀川は、剣山山脈のジロウギュウに源を発し、徳島県内を西から東へと流れている。一方、物部川は、同じ剣山山脈の白髪山を源流として南西へ流れている。那賀川は全長約125キロ、物部川は約71キロで半分強の規模だ。この短い川にダムに、上流から永瀬、吉野、杉田(すいた)の3つのダムが建設されている。

これら2つの一級河川は共通点が多い。ダムの「堆砂」が計画堆砂容量(※ダムが100年間で溜まると想定した土砂の量)を既に超えていた。流域の森林が荒廃し、土砂や流木が流入している。川底がえぐられ、下がるなど多くの課題を抱えている。

物部川流域図/国土交通省HPより(赤色のサークルはウオッチドック編集部による)
物部川流域の現状と課題/国土交通省HPより

「高知県は山の高低差が大きいので急流なんです。地形的にダムが作りやすかったんでしょう」

取材に協力してくれた物部川漁協の松浦秀俊組合長が永瀬ダムを案内しながら説明してくれた。

確かに、高知県は平地が少ないと肌で感じた。川沿いを車で走るとすぐ深い山に入る。山も急に高くなり、道路からは川をはるか下に見下ろす光景が続いた。

物部川は全長約71キロで、急傾斜を走れば半日で上流にたどり着く。琵琶湖の南北の長さは約63.5㎞。71㎞というと琵琶湖から瀬田川の洗堰までの距離ぐらいだろうか。滋賀県民の地理感覚でいうと琵琶湖に3つのダムが作られているようなものだろう。

物部川に作られた3つのダムの概要

ダム名 目的 竣工年 堤高 総貯水容量 管理者
永瀬ダム 洪水調節・かんがい用水の供給・発電 1956年 87m 49,090千m³(約4,909万m³) 四国地方建設局(管理は高知県)
吉野ダム 発電 1953年 26.9m 2,091千m³(約209万m³) 高知県公営企業局
杉田ダム 発電 1959年 44m 10,532千m³(約1,053万m³) 高知県公営企業局

 

上記の写真は、物部川上流に作られた永瀬ダム(堤高約87メートル、堤頂長約207メートルの重力式コンクリートダム)をウオッチドック編集部が撮影した。高知県を取材した3日間は雨の時間帯が多かった。数日前も雨が降り続いていたので、川の水がいつもより多いという。

「雨が続いていた後なので、いつもより川の水が多いです」

そう話していた松浦組合長から、後日、永瀬ダムの下流にある吉野ダムの写真が送られてきた。

この写真を見る限り、水量は少なく上流から2番目の吉野ダムから下流の杉田ダムまではほとんど水が流れていないのではないか。増水時に泳いでいた魚はどこに行ったのだろうか。

吉野ダム上流(松浦組合長が写真提供)
ウオッチドッグ記者

7月4日はさらに水力発電のため水利用している永瀬ダム発電所を視察した。取水口は流木でいっぱいだった。2027年3月まで、流木を処理するための収集運搬の工事をするという立て看板があった。こうした作業をしないと水力発電のための取水ができない。集めても切りがない流木の処理には、どれだけの費用がかかるのか。多額の費用に見合う発電量を確保しているのだろうか。疑問は尽きない。

同じ場所の渇水時の写真があるということで、後日、松浦組合長が下記写真を提供してくれた。この川では、この周辺の魚は全滅したのだろう。

2019年4月の渇水時に撮影/永瀬ダムの取水口が干上がった状態(松浦組合長より写真提供)

【参照】土佐の急流 物部川/国土交通省HPより

国土交通省は物部川について「歴史的景観が素敵」と説明している。「かつては」という条件を付ける必要がありそうだ。

歴史的景観が素敵な、土佐の急流 物部川

物部川は、高知県の白髪山(標高1,770m)にその源を発し、中・上流域にかけて山地に囲まれた峡谷をほぼ南西に流れ、土佐山田町で山地を離れたのち香長平野を南流して土佐湾に注いでいます。高知県においては四万十川、仁淀川に次ぐ流路延長71km、流域面積508km2の第3の河川です。

~国土交通省HPより~