高知県の物部川流域の取材に入ったウオッチドッグ編集部は、初日の7月3日に物部川漁協の松浦秀俊組合長が運転する車で上流に向かった。漁協の事務所から走り出して30分もしない中、組合長が「左側に見えるのが物部川の下流ダム、杉田(すいた)ダムです」と教えてくれた。

山道に入ってすぐにダムがあること自体驚いた。発電用の小さなダムだった。堤頂長は173メートル。

河口からわずか13キロにある杉田ダムが漁業関係者を悩ませているという。

杉田ダム/松浦組合長が写真提供

「このダムは下流に支流の川がないので澄んだ水が入ってきません。濁水が長期化しやすいです」

低濃度の濁水でも長期化すると、アユにとってストレスのかかる水環境となり「冷水病」になりやすい。

健全なアユは生殖巣が発達するが、長期間濁水でさらされたアユは冷水病を発症し、尾びれが赤変、欠損してしまう。濁流の長期化は、天然アユが湧きたつ川の実現の足かせになっている。

7月5日、物部川河口を視察した。渇水の時は河口が狭くなるという。海に行ったアユが河口へ戻り遡上できるように、河口の管理も大事という話だった。
※アユは11月から5月まで海で育ち、海から河口に戻り6月から8月まで川を遡上、9月から10月までに産卵し一生を終える。

松浦組合長が説明を続けた。

「ダムは自己矛盾を抱えてます」

「ダムにより砂礫の供給が止まり、河床の低下が進むと、河床が深掘れして固定化します。一方、河原の上昇が起きて河道の二極化が進みます。その掘れる場所が護岸や堤防の根元であれば、破堤する恐れがあります」

河道の2極化/生成Alイラスト

ダムにより砂礫が流れなくなると下記のような状況になるという。

①ダムによって川底がスカスカに

  1. 土砂の沈殿:ダムの上流で大小の石や砂が堆積。
  2. 飢えた水:下流には砂礫を含まない水が流れる。
  3. 削られる川底:流水が下流の川底を削る。砂礫(あんこ)が抜けて川底がスカスカになる。

②河岸の崩壊と崖化

  1. 石の流失:砂礫が消え、支えを失った巨石が流される。
  2. 深掘れ:川底がどんどん深く削られていく。
  3. 垂直な崖化:増水のたびに崖の根本が削られ、切り立った崖に変わる。

③水抜き現象と山斜面の崩落

  1. 本来の川:川底が浅く、山の斜面は草木の根と土壌が絡み合って安定している。
  2. 水抜き:川底が下がると、山の斜面から急激に水が抜ける。
  3. 結合の弱体化:水分が抜けて植物の根と土壌の結びつきが弱まる。
  4. 地すべり:木の重みに耐えられなくなり、斜面の表土がズレ落ち、崩落する。

④河道の2極化

  1.上流部:流速が速いため、両側や川底が深掘れする。
   2.下流部:深く掘れる場所がある一方、削られた土砂が堆積。局所的に高くなる場所ができる。

⑤結果

「異常に深い場所」と「土砂が詰まった高い場所」が混在する。不可逆的な2極化が進む。

7月4日、土砂の堆積で川が変化したわかりやすい場所ということで、永瀬ダムのすぐ下流にある水位観測塔を橋の上から撮影した。塔の下部が6.5メートルほど土砂で埋もれてしまい、短い塔になっている。すぐそばの岩も、現在は頭の部分だけが見える状態。当時は背が高い岩だった。

土砂が6.5メートル堆積し塔の下部が埋まっている
本来の塔のイメージを再現(生成Alで作成)

次回につづく。