2018年は、財務省の公文書の改ざん問題が、さまざまなメディアで大きく取り上げられました。しかし、何が問題なのかよくわからないという声も多かったと思います。そこで、かつて厚労省や滋賀県、大津市に情報公開請求をした公文書で、数々の嘘を見つけ出したウオッチドッグが、情報公開制度と公文書の役割を解説します。

Q:公文書の改ざんは、どうして問題なのですか?

A:公文書とは、国や地方公共団体が、あらゆる政策や事業を遂行する職務上で作成する文書をいいます。これを改ざんする、書き換えるということは、その政策や事業が、実際とは異なる内容になってしまい、それが記録されることになります。歴史を改ざんするに等しい行為です。

Q:歴史の改ざんになるとはどういうことですか?

A:正確な過去と現状を知ることができなくなり、正しい分析と判断ができなくなります。例えば、100人の生活困窮者が、行政を訪れて支援の申請をするとします。しかし、申請を受けた行政が、数をゼロとして文書を作成したらどうなるでしょう? 実際は100人が申請したという事実はあるのに、公文書の上では申請者はゼロになります。その結果、100人の申請は放置された状態となります。将来的にも、それが記録として残り、実際にはあったことが「なかった」という歴史が作り上げられます。戦争の場合、実際は自国が壊滅状態なのに、勝っているという内容に公文書を書き換えたとしたらどうなるでしょうか。

Q:どうして今回、公文書の改ざんがあちこちで続いたのでしょうか? 文書が役所内に存在したのに、「ない」「廃棄した」という虚偽の説明も横行しました。

A:滋賀県や大津市もそうですが、行政職員は、政治家の顔色をうかがっています。県民、市民が選んだ人という背景もあり、有力政治家の圧力でやりたくないことをさせられたり、不都合なことを隠蔽したりというようなことはあるようです。国も同じだと思いますよ。しわ寄せは、現場の職員に来ます。

Q:こういうことが起きないよう国民、県民、市民は、どうしたらいいのでしょうか?

A:疑問に感じたことがあったら、間違いがないかどうかを、まず公文書で確認するようにしましょう。事実と違うことが記録されていたら、それ自体問題です。公文書の公開に難色を示す行政は、不都合な事実を隠している可能性が高いと言えるでしょう。職務を正しく遂行しない行政は、必ず凋落します。その一方で、私利私欲のため、行政職員に不当な圧力をかけるような政治家を国民や、県民、市民は選出しないことが大事です。現場の行政職員も、公務員として本当は後ろめたいことをしたくないはずです。悪いことだとわかっていながら、やらざるえないというのは、過酷な状況です。私利私欲の政治家を追い落とすことができるのは、民主主義の成熟度にかかっています。

Q:公文書を確認するには、どんな方法があるのでしょうか?

A:行政や議会のホームページで確認をしたり、または、情報公開制度を使う方法があります。

Q:情報公開制度とは何ですか?

A:情報公開制度とは、1999年に施行された「公正で民主的な行政の推進に資することを目的」にした制度です。行政文書の開示を請求する権利を定めた国の法律です。国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政を目指すことを目的にしています。成熟した国になるために欠かせない制度です。

Q:都道府県、市町村にも情報公開制度はありますか?

A:国だけでなく、県や市町にも、それぞれ情報公開制度の条例があります。使ってみてください。例えば、大津市では、2002年に大津市情報公開条例が施行されています。条例の目的は、「市民の知る権利を尊重し、市の有するその諸活動を市民に説明する責務が全うされるようにすること、市民の市政への参加を一層促進し、市民の理解と協力を得て、公正で透明な信頼される市政の運営の確保に努め、もって地方自治の本旨に即した市政の推進に寄与すること」です。