「京都TOMORROW」は、ちょうど30年前の10月に創刊号が発行されました。発起人の1人で、編集委員だった折田泰宏弁護士に、創刊に至った当時の思いを振り返ってもらいました。
■議論の場
どうして、「京都TOMORROW」を発行しようと思ったのですか?
京都は観光で有名だとしても、地域としてきちんと分析したり、論じたりするそういう場がない。マスコミには、それなりの有名人が出て京都について語るわけですけど、京都のイメージがすでにあって、それにあわせた形でマスコミが取り上げている。本当の京都について、いろんな議論をし、しかもそういう有名人じゃでなくて、京都というところはいろんな知識とか揃っているのだから、そういう人たちの発言する場を作ろうと思った。
発起人になって呼びかけたのですか?
牧野文夫さんから話があって、一緒にやろうかとなった。
牧野さんは、最初のシリーズの編集長だったと伺いましたが。
そう。彼はNHKの記者をしていて。
創刊号の表紙に、発起人の方の名前がたくさん書いてましたが。
知り合いで関心のある人に声をかけたんだ。
■市民の目線
創刊号の編集後記に「自立した市民とともこの雑誌はある」とありましたが、そういうふうに、市民の目から見た雑誌作りを目指したのですか?
そう。あくまで、市民からの目線で。
内容が凝縮されていると感じました。他に比べても中身が濃い雑誌だったと思うのですが、編集と記事を書いたりと、全部、先生がまとめていたのですか?
いや、3回ぐらい変わりますけどね。その都度、編集委員って。僕を含めて3、4人で集まって作業していた。
この方にお願いするって…。
企画を作って、誰に頼むかって。
記者みたいなことも?
記者はしない。
じゃ、編集者ですか?
そう、編集者だね。
アプローチしながら、人に頼んで書いてもらって、それをまとめあげる?
僕が書いているのは、それは必ず1つぐらい書いてますけど。あとは、現地取材みたいなものはありますよね。
先生がインタビューもされてましたね?
そうそう。
■座談会も
ものすごくお若い写真が載ってました(笑)。
座談会とかね。
それも先生が企画して、いろんな方に声をかけたりですか?
司会したりね。あの中で、面白いのが、政治を取り上げたのがあって。今の立憲民主党(幹事長)の福山哲郎君とかね、京都の(その後の)民進(党系)の人たちが若い時、うちの事務所の会議室に集まってもらって。これからの政治をどうするかというテーマで。写真が載っていて。みんな松下政経塾で政治を勉強して、それで政界に出ていった。まだ、本当に燃えている頃の…(笑)。
今はどうなんですか(笑)。京都の国体の問題もテーマになっていましたが、大津でも国体がありますし、似たような問題があるなと思いました。体協の問題も現場で関わっておかしいと思ってましたから。
他に、テーマとしては、「占領期の京都」とか、戦後どういう遺跡が残っているとかね。当時は誰も取り上げなかったけど、最近ようやくそれを研究し始めた研究者が出てきました。
時代の先に問題提起をされていたということですね。弁護士をやりながらやっていたのですか?
趣味みたいなもんだね(笑)。
趣味というのはよくわかります(笑)。私も同じです。それは何か残したいという気持ちもあって?
それもあるけども。やっぱり、京都にはそういう場がなかったんでね。地域からの発信を進めて雑誌を作ろうと。そこから日本全体の文化は、生まれてくるし。今は、テレビは無茶苦茶じゃないですか。新聞は大手の新聞しかないよね。新聞の地域版はあるけど、なんだか下位のように扱われている。地域で発信しているというと、ラーメンだったり、グルメのニュースばかり。そうではなくて、いろんな発信があるということで、やり始めた。
なるほど。
■マスコミが追随
あの雑誌で発信することで、メジャーのマスコミがそれを見て取り上げることもあるし。実際そういうこともあったし。
そうなんですね。毎月出版していたのですか?
初めは旬刊でやっていたけど、だんだん遅れて崩れてきた。初めは、2か月に1回ぐらいかな。
どれだけやっているのかと驚きました(笑)。十何年間も続けていましたね。
当時、ちゃんと本屋にも並んでいて。止めていったのは活字媒体の限界を感じてね。止めるだったら、ネットでと。バックナンバーを復活してくれたらありがたい話で。今でも、時々、大学生が卒論に書くための材料としてバックナンバーをほしいと言ってきたこともあったから。
今回、「京都TOMORROW」をサイトで紹介させていただきます。関わった方に、随時、インタビュー記事を出していきたいのですが。
編集に関わった人が、牧野さんの他に2人(編集長)います。
よろしくお願いします。
◆発起人◆
発起人は16人。創刊号の編集委員は、牧野氏、高橋(彰)氏、折田氏、谷本氏、中山氏の5人。□は編集委員。
天野博氏 (自営業) |
石田紀郎氏 (京大助手『当時』) |
小国英夫氏 (福祉施設長) |
折田泰宏氏 (弁護士) |
坂田史郎氏 (京都市民) |
吹田恭子氏 (京都市民) |
杦本育夫氏 (市民運動家) |
高橋幸子氏 (エッセイスト) |
高橋章三氏 (京都市民) |
谷本さやか氏 (編集者) |
中山和弘氏 (写真家) |
長尾憲彰氏 (住職) |
深沢照代氏 (京都市民) |
富士谷あつ子氏 (評論家) |
牧野文夫氏 (NHK記者) |
松岡千津子氏 (京都市民) |
今後のサイト展開として、かつての編集委員の方たちに、過去の「京都TOMMOROW」を振り返っていただきながら、現在の「京都TOMORROW」も発信していただきたいと思っています。
PDF:京都TOMORROW.vol1「創刊号」68ページ/1988年10月
表紙をクリックすると、全ページへ↓創刊号の最初のページ。編集部一同が「創刊によせて」で、雑誌誕生の思いをよせている。そのまま転載する。
↓下記は、最後のページ。5人の編集委員による「編集後記」