大津市では毎年、学区自治連合会が主催する「新年交礼会」なるパーティーが、滋賀県選出の国会議員、滋賀県議、大津市議らを招いて開かれている。数年前に比べると、自治会役員の参加数が大幅に増加している一方、真の地域貢献者が招かれている様子はない。議員らは票集めに、自治連合会長は権威付けに、双方がこの会を利用している構図は、最近注目を集める内閣府主催の「桜を見る会」と似た部分がある。

ウオッチドッグ記者の地元A学区で、A学区自治連合会の議事録が回覧板で回ってきた。毎年恒例の「新年交礼会」について、会議で自治会長らへ案内されていた。2020年1月某日にロイヤルオークホテル(大津市萱野浦)で、会費6,500円(各自治会まとめ)の新年交礼会を開催する予定だという。送迎バスが出ることや、各自治会からは最大5人まで参加できるので、12月中に地元の市民センターか、学区自治連役員へ連絡してほしい、という内容だった。

「新年交礼会で、各自治会から最大5人参加とはどういうことだ?」とウオッチドッグ記者は、不思議に思った。

2010年度は各自治会から1人

ウオッチドッグ記者が、A学区社会福祉協議会の役員をしていた2010年当時、前年(2009年)に新年交礼会というものが、ロイヤルオークホテルで行われていたことを初めて知った。ホテルでの開催に対し、A学区自治連合会の会議で、一部から批判の声が出たこともあり、2010年度(2011年1月)は某自治会館で開催した。各自治会からは、自治会長1人だけの参加だった。

参加者も明細も不明

この新年交礼会だが、地元住民には、誰が参加して、どんなことをやっているのか、会合の実態はほとんど知られていない。ウオッチドッグ記者は、A学区自治連の総会に出て、2010年度の収支報告書を見て驚いた。「これが噂の新年交礼会か? 何だこれは?」と思い、当時のA学区自治連の会計担当者へ、総会や定例会で質問したことがあった。

収支決算書には、新年交礼会費として、二十数万円の金額が一括して支出として計上してあったが、誰が参加したのかも、何に使ったのかも記載していなかった。

「この新年交礼会は誰が参加しているのですか?」というウオッチドッグ記者の質問に、A学区自治連の会計担当者は「大津市と地域住民の意見交換や交流の会です」などと回答したと記憶している。「誰が参加したのかと、この事業の詳しい収支を見せてください」とその場で、会計担当者に約束させた。

市議も参加、おかしな収支

渋々だったが自治連役員から後日、名簿と収支内訳がメールで届いた。ウオッチドッグ記者は、2010年度(2011年1月)の新年交礼会の名簿と収支内訳を見て、「これはおかしい」と思った。参加者名簿を見て「オイオイ、議員らも来てるじゃないの」とさらに驚いた。国会議員、滋賀県議、それに大津市議。ほとんどの議員は、6,000円の会費を支払っていたが、1万円を支払っている議員が2人(県議1人、市議1人)いた。どうして、受け取り金額に違いがあるのかと不思議に思った。次回の市議会議員選挙の候補者まで参加していた。「この候補者はうちの学区と、これまでどんな関係があるんだ? 誰が呼んだ?」と呆れ果てた。

真の地域貢献者は招待されず

長年、子どもたちの安全を見守ってきた人たちや、地域内で草刈りを定期的に行っているボランティア団体など、本当に地域に貢献している人たちを労う会ならまだしも、輪番であたった1年限りの自治会長や、「とりあえずこの役職なので、来ました」的な市職員や、「うちの地域のために何か動いてくれたことがありましたか?」と思うような市議らが、役立たずの自治連会長の音頭の下に集まった、ただの飲み会にしか見えなかった。当時、参加したある市議は「自治連合会長が(議員)自宅まで、招待状を届けに来たから気持ち悪かった。それならばということで参加しただけ」と話していた。

大津市職員も何人か参加していたが、教育長と自治振興課長の会費は、5,000円で、その他の参加者は6,000円だった。48人が参加して、294,000円の収入が計上されているが、支出の部は、余剰金が全くなく収支がぴったりだった。まるで最初から、例外的に議員2人だけが1万円、教育長ら2人だけが5,000円を持参する、と把握していたかのような、収支内訳となっていた。特に、食事代の金額が細かすぎて不自然だった。終了後に、帳尻合わせをしたと思える内訳だった。

質素なパーティーだが正装で

後日、参加した自治会長に感想を聞くと、ほとんど食べるものがなかったというお粗末な実態だった。これだけの会費を徴収して、食べるものが少なかったというのも不思議に思った。質素なパーティーに関わらず、自治会長全員に、「正装してくるように」というお達しが、A学区自治連合会長からあったというから、これまた驚いた。

たかだか自治会館でやる新年交礼会に、正装の強要をすること自体、バカバカしいと思ったが、田園地帯にある自治会館まで、自治連や協議会の役員らが正装して、田んぼのあぜ道を通っている姿を想像しただけで、大爆笑した。

ウオッチドッグ記者が所属していた当時のA学区社協の会長は、「こんなものに行く必要なし」と欠席した。現在のA学区社協会長は、2010年度当時、「人権・生涯」学習推進協議会の会長として、自身と事務局長が一緒に参加するという入れ込みようだった。現在では、学区社協や協議会の役員らの参加者数も、格段に増えているのかもしれない。

2010年度の新年交礼会の名簿と収支内訳

各自治会から5人までOK/市長も参加

この2010年度の新年交礼会は、48人が参加していたが、各自治会からは、自治会長1人の参加だった。ウオッチドッグ記者が、自治会の役員をしていた2014年当時も、自治会長1人の参加だった。新年交礼会の参加費は、自治会費から支払われている。

ところが、2019年度の新年交礼会は、各自治会から5人まで参加できるまで規模が拡大した。2010年、2011年とウオッチドッグ記者が連合会に関わっていた当時は、ロイヤルオークホテルでの開催を止めていたが、その後、復活させていた。2011年度の新年交礼会では、市長選の候補者、当時の目片信市長も、わざわざ自治会館まで来ていたという。2014年度は越直美市長も、ロイヤルオークホテルで開催していた新年交礼会に来ていたという。

会則改正、チェック体制機能せず

ウオッチドッグ記者の地元A学区自治連合会では、2014年度に現在の会長が中心となって、住民に周知しないまま、会則を勝手に改正した。自治会の会長でない人物が、A学区自治連合会長に就くことができ、改選制限がない永年会長の体制に変えた。各自治会から選出された自治会長らで、協議、運営してきた従来のやり方ではなくなった。各自治会の声が反映されにくい仕組みになった。長期にわたり1人の人物が、学区自治連を牛耳ることになり、住民から集めた自治会費の使途について、チェック体制がますます機能しなくなった。

そんな中での新年交礼会の規模の拡大だった。何の目的でやっているのかよくみえない新年交礼会だったが、ウオッチドッグ記者は、「これって、話題の内閣府が主催する『桜を見る会』の構造とよく似ているなあ」と気づいた。

「桜を見る会」と「新年交礼会」の比較

↓ 11月14日付・FNN jpプライムオンライン(毎年恒例の「桜を見る会」が中止に 曖昧な招待理由を過去の参加者から探ってみた)の図より

FNNの図を参考に、ウオッチドッグ記者の地元自治連合会が主催の新年交礼会の仕組みを図にしてみた。

まとめ

市長や議員と写真撮影

かつて参加した自治会長らから聞いた話では、新年交礼会では、市長や議員らと写真撮影なども行われたという。ウオッチドッグ記者には、理解不能な行動だ。しかし、市長や議員と話をすることがうれしくてたまらんという自治会長が、実際にはいて、こうした自治会長が、新年交礼会という場を設けてくれた学区自治連会長に忠誠を誓うような言動があったり、おかしな運営方法の片棒をかついだりしていたのも、実際にみてきた。

権威作りと票稼ぎ、双方で基盤づくりに利用

ウオッチドッグ記者はこう思った。

権威のない人物(学区自治連合会長)らが、自らの権威を作り出すために、人寄せパンダ的に、市長や議員を呼ぶ。市長や議員らも、有権者にアピールできる機会ととらえ、積極的に顔を出す。学区自治連合会長としては、連合会を私物化している実態が明らかにならないように、批判されないように、そして、できるだけ長く会長職を続けていけるように、「身内」「お仲間」を増やしていこうとする。多くの自治会員を新年交礼会に参加させるため、自治会長だけでなく、自治会の役員らも参加させて、規模を拡大する。多くの自治会員を会合に参加させ、懐柔しながら、学区自治連と政治家らの双方の基盤づくりに利用する。

こんな構図が見えてくる。

やましいことがなければ公開できる

後ろめたいものが何かあったのか、内閣府は「桜を見る会」の招待客名簿を破棄した。ところが、ウオッチドッグ記者は、学区社協の役員を辞めてから8年経過したが、当時のありとあらゆる文書を今も保存している。やましいことをひとつもしていなかったという自負もあり、どこからどう資料を検証してもらっても、構わないから公開できる。当時見つけたA学区自治連のおかしな実態を証明する資料も保存している。みんなのお金を預かって運営してきた以上、いつでも説明責任を果たす義務があると考えているからだ。

ウオッチドッグ記者は、これまで自治連や大津市を取材してきた。その経験から思うに、公的な活動をしている団体が、大事な文書を平気ですぐ破棄したり、隠そうとするようになったら、まず第一に、後ろめたい何かがあるとみて間違いない。
規定に則らず、公文書を隠蔽、破棄するような面々は、結局は「後ろめたい言動をいかにかき消すか?」の自己保身しか考えていない。こうした政治家を信頼してしまうと、将来的にロクなことにならない。

↓過去のウオッチドッグ記事を参考まで。かつて、越市長は、自治連や一部団体の新年交礼会に、公費で積極的に顔を出していた。

交際費で新年会51件/建設団体や自治連と/越市長と副市長/2015年1月/ウオッチ大津№7

【記者レポート】「総会」を「事業報告会」へ改悪/住民に案内せず開催/大津市の自治会問題/ウオッチ大津№24