京都新聞の森敏之記者が2018年1月26日付朝刊で、旧優生保護法の強制不妊手術に関する公文書を、滋賀県と京都府が破棄していた事実を独自調査で明らかにした。
それによると、「差別と偏見に基づき障害者の生殖能力を奪っておきながら、その記録の大半を滋賀県と京都府が既に破棄した」という。全国で初めて名乗り出た女性(60代)が損害賠償請求訴訟を起こす動きがある中、高齢になった犠牲者たちの被害の立証ができず、司法救済の道が閉ざされたことを問題提起している。
さらに、滋賀県の開示文書から、「手術を拒む女性の家族を「無知と盲愛」と侮蔑し、本人の意思に反して生殖能力を奪おうとした旧優生保護法や行政の暗部が垣間見える」とし、過酷な状況に置かれた当時の被害者や家族の心情を紙面で訴えている。
旧優生保護法とは/京都新聞2018年1月26日付朝刊の記事より
「不良な子孫の出生を防止する」との優生思想に基づき1948年に施行された。ナチス・ドイツの「断種法」の考えを取り入れた国民優生法が前身。知的障害や精神疾患・遺伝性とされた疾患などを理由に不妊手術や人工妊娠中絶を認めた。医師が必要と判断すれば、本人の同意がなくても都道府県の「優生保護審査会」の決定で不妊手術が行うことが可能で、53年の国の通知は身体拘束や麻酔使用、だました上での手術も容認していた。96年、障害者差別や強制不妊手術に関する条文を削除し、母体保護法に改定された。
旧優生保護法とは/コトバンクより
1948年に施行され、遺伝性疾患やハンセン病、精神障害などを理由に不妊手術や中絶を認めた。日弁連によると、全国で手術を受けた約8万4千人のうち、約1万6500人は同意なく不妊手術をされた。96年に「母体保護法」に改正され、優生手術の規定は廃止された。