大津市が1万5千筆の住民の署名を受け取らなかった問題で、報道各社は一斉に大津市の姿勢を批判したが、これまで市民センター支所統廃合の問題をメディアはどう取材、報道してきたのか。ウオッチドッグが検証すると、いくつも問題点が見えてきた。

メディアの報道① 3年間、市長記者会見で質問なし
ウオッチドッグが大津市ホームページで調査したところ、市政記者クラブの記者が、市長の定例記者会見で、この問題を取り上げたのは、2018年2月の毎日新聞が初めてだった。つまり、市政記者クラブ所属の記者たちは、市民の関心が高いテーマに関わらず、計画が出てから3年間、市長へ質問を全くしていなかったことになる。

メディアの報道② 肝心な部分はわからない
大津市が2017年11月に、市民センター統廃合の「素案」を公表し、メディアが報道した。そのすぐ後、2018年2月の毎日新聞の報道では、中央学区自治連合会が集めている署名の問題を取り上げている。しかし、毎日新聞の記事では、「なぜ、今、署名なのか。なぜ、もっと早く学区自治連合会は、情報を出さなかったのか?」という肝心な部分がわからない。

メディアの報道③ 越市長の「受け取らない」発言を問題視せず
2018年2月定例記者会見で、毎日新聞の記者が市長へ、中央学区自治連合会の署名集めについて質問した。越直美市長は、「大津市自治連合会長から、学区ごとの署名は受け取らないようにという要請があり、署名を受け取らない」という回答をしていた。自治体の首長としてありえない発言だったが、この問題発言を取り上げたメディアは、どこもなかった。

メディアの報道④ 市自治連会長のコメントを検証せず
2018年3月26日付の京都新聞が、大津市自治連合会長の谷正男氏が、「市は4年間検討してきたというが内部の話で市民合意が出来ていない」とコメントしたと報道した。


しかし、市民センター支所統廃合の計画づくりには大津市自治連合会も関わってきたという事実がある。谷氏による「内部の話」には、大津市と一緒に検討してきた組織として大津市自治連合会も含まれる。大津市ホームページの市民センター改革推進室の2014年度の資料では、2015年1月19日と3月24日に、大津市と大津市自治連合会は、市民センター統廃合計画について、意見交換をしている。京都新聞は、これらを調査せず、市自治連会長の「市民合意できていない」というコメントをそのまま取り上げた。この報道では、市自治連の会長がまるで、36学区住民のために、市民センター統廃合の反対行動を起こしている、という印象を読者に与えてしまう。

メディアの報道⑤ 本当に5月まで署名を集めたのか?
5月10日に大津市と大津市自治連合会が大宴会を開いたが、その直後の5月21日に、3学区の自治連合会長が大津市へ約1万5000筆の署名を提出しようとして拒否された。この動きを報じた京都新聞の記事に、事実とは思われない部分がある。青山、瀬田南、中央の3学区自治連合会が今年1月~5月までに署名を集めたという記述だ。ウオッチドッグ記者の調査では、2月までに3学区の自治連合会は、住民の署名を集め終わっていた。3月~5月の間も署名を集めていたというのは、提出が大幅に遅れた言い訳にしか聞こえない。