大津市の越直美市長が迷走している。9月初めに市議会に提出したコミュニティセンター条例案を、9月下旬になって撤回した。そして、直ちに修正案を提出し、市議会での審議を急ぎ、10月中に可決成立を図る意向を示していた。ところが、2日になって修正案提出を見送ることを決めた。わずか1日足らずで再撤退。その理由は「大津市自治連合会から『地域に説明する時間がほしい。修正案の提出を見送ってほしい』という申し出があったため」という。
この説明で、越市長が押し進めるコミュニティセンター構想が誰わのためのものなのか、はっきりした。越市長の頭にあるのは、市議会でも市民でもなく、大津市自治連合会の“ご意向”だけだ。
越市長はなぜ、取り下げなければならないような、お粗末な条例案を提出したのか。市議会での審議で、批判が相次いだのに、越市長はなお拙速な修正案で乗り切ろうとした。なぜ時間をかけて十分審議しようとしないのか。市議会を軽視しているからだろう。
大津市が行ったアンケート調査の結果が示すように、全36学区で開かれた意見交換会に参加した市民の7割ほどが「現状のままでよい」とした。にもかかわらず、越市長は条例案を市議会に提出した。いったん取り下げたが、直ちに修正案を出そうとしていた。そこには市民の声に耳を傾けるという姿勢はない。
越市長は、任意団体にすぎない大津市自治連合会の幹部の意向に従う。ウオッチドッグはこれまで再三、両者の蜜月ぶりを批判してきた。例えば、越市長と市幹部は大津市自治連合会との間で毎年、琵琶湖ホテルで大宴会を開いている。
蜜月状態なのに、情報交換をしていないというのも不可解だ。最初の条例案を提出する前に、十分、大津市自治連合会と話をしたのではないか。撤回して直ちに修正案を出す、と越市長が言った段階でも、大津市自治連合会とは何の話もしていなかったことになる。これでは説明になっていない。
迷走する越市長。稚拙な条例案や、度重なる方針転換で、市の幹部職員や市議会が振り回されている。市民不在のコミュニティセンターにしたのは、越市長の責任だ。