大津市の越直美市長の目玉政策、コミュニティセンター構想が頓挫した。9月の市議会に提案したコミュニティセンター条例案を自ら取り下げた。それも、差し替え案を直ちに出すと言いながら、それも1日で撤回するというドタバタ劇だった。
 各学区にある公民館の施設自体はそのまま使い、中身を変えようというのが「コミュニティセンター」構想だ。運営を任されるのが「まちづくり協議会」という新しい組織だ。そこでは、任意団体の自治連合会だけでなく、自治会のほか、各種団体、事業者、個人などが担い手となり、地域全体で活動内容を協議して、計画を策定し、運営する。そんなバラ色の計画を、これまで大津市は説明してきた。
 ところが、市民にとっては「バラ色」でないことが、ここに来て明らかになってきた。越市長や大津市がようやく、コミュニティセンターの本当の姿を語るようになったからだ。大津市はせっせと新たな資料を作り、市議会だけには配付した。簡単に言えば、コミュニティセンターは施設内での「飲酒OK」となることに象徴されるように、公民館の時代よりも、法的な縛りが外され、自由度が大きくなる、というものだ。一方、越市長は10月3日になって、まちづくり協議会の中心は大津市自治連合会だと言明した。
 ということは、新たなコミュニティセンターは、任意団体に過ぎない大津市自治連合会が、これまで以上に意のままに使える施設になる。自治連の幹部が自由を謳歌する格好の施設が誕生しようとしている。これが越市長が市議会で可決・成立を図ったコミュニティセンター条例の正体だ。
 しかし、ウオッチドッグが再三指摘してきたように、越市長や大津市は、「バラ色」の部分だけしか市民には説明せず、「飲酒OK」やら「大津市自治連合会が中心」やらを一切隠し続けてきた。越市長はずっと前から描いていた構想を、市民に対してだけは「後出し」する。市民には知らせず、市議会にはぎりぎりの段階でちょろっと説明しただけで、条例案を成立させようとした。まさに“だまし討ち”、市民に対する背信行為だろう。
 もう「バラ色」の説明は聞きたくない。なぜ「大津市自治連合会が中心」に運営するのか。なぜ「飲酒OK」なのか。なぜ本当の姿を説明してこなかったのか。なぜ越市長はそれでよしとするのか。大津市はまっとうな住民説明会を開き、説明をやり直す責任がある。