厚生労働省が、N95マスクを医療機関に供給できないため、「再利用」時の留意点を伝える通知書を、都道府県知事宛に送った。しかし、経済産業省は「医療現場に優先的に届いてます」とホームページで発信しており、両省の認識の違いが浮き彫りになっている。経産省へ取材すると、3月に実施した4億5千万円のマスク生産設備導入補助事業で、製造ラインをいくつ完成させたのかについて、担当職員は回答を頑なに拒んでいる。

厚労省は、医療機関へのN95マスク供給の見通しが立たないことから、再利用を認めることや、留意点を書いたお知らせ文を、4月7日と10日に各都道府県へ送った。医療現場ではマスクや消毒液などが不足しているという報道は後を絶たない。

一方、経産省は4月9日、ホームページに「今日も、医療現場で御要望の高いN95や感染症患者用マスクが医療現場に届いています」というお知らせを出した。しかし、どこの病院へどれぐらい届けたのかは情報がない。受け渡しをしている人物らの顔が写っていない、不自然な写真が掲載されている。

経産省といえば、安倍晋三首相に「アベノマスク」政策を進言した官僚がいる省庁。全国5,000万世帯へ、各2枚の布マスクを配布する「アベノマスク」を遂行するのに、466億円の費用がかかることを、メディアが4月9日に報道した。

4月14日に経産省の担当職員へ、「経産省のマスク生産設備導入補助事業4億5千万円で、いくつの製造ラインが完成したのですか?」と聞くと、「公表されている『枚数』でしか答えられません」と、回答を拒んだ。

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マスク不足は、経済産業省の怠慢さが要因ではないのかなあ。そこで、これまでの経済産業省の動きを追ってみよう。

マスクは市場に出回らず

経産省と厚労省は2月中旬、「官民連携して、毎週1億枚以上のマスクを消費者の皆さんにお届けします」というチラシを出した。ところが、不織布の使い捨てマスクは結局、市場に出回らなかった。例えば、首都圏や関西の都市部では、ドラッグストアには今なお、マスクはほとんど置かれていない。

経産省は2月、「マスク生産設備導入補助事業」を始めた。マスクを生産するため新たに設備を導入する企業らに補助金を支出するという。予算額は4億5千万円だった。3月になると追加として、アルコール消毒液とマスクを生産する企業らを支援する予算として、さらに1億6千万円を計上した。

4億5千万円や、追加された1億6千万円の予算は、経産省全体の予算規模や、他の補助事業と比較しても、微々たるものだ。

国民ウケの良い事業だけアピール

経産省は、国民やメディア向けなのか、予算に関する「PR資料」を作成している。2020年度は、コロナ関連の事業予算が主だ。マスク、消毒液、アビガンなど、国民の関心の高い事業を前面に押し出し、「これだけ予算とりました」とアピールしている。

しかし、よくよく精査すると、マスクとアルコール消毒液の生産設備導入補助額は、29億1千万円。「アベノマスク」配布事業466億円の、16分の1でしかない。全世帯に「布マスク2枚」を配布するから、使い捨てマスクの需要が減ると見積もっているのだろうか。

約1.7兆円の官民あげて「GO TOキャンペーン事業」

経産省は、新型コロナ禍が収束した後を見込んで、官民あげての「GO TOキャンペーン事業」という構想を打ち上げ、1兆6,794億円を予算計上していた。「コロナに勝った」を強調し、大々的に、キャンペーンを打ち上げるつもりのようだ。全世帯配布の「アベノマスク」のような、国民感覚とズレた施策になる可能性が高い。

約1.7兆円の「GO  TOキャンペーン事業」の予算を見込んでいるのなら、納税者でもある全世帯に、現金を一律、配った方がよほど、需要喚起するだろう。

「官民あげて」、「官民連携して」は、官僚がよく使う、問題をごまかす要注意ワードだ。新型コロナ関連で、国が出したチラシでしっかり学習した。

さらに、経産省の予算関係の資料を見ると、国家公務員の天下り先と言われている独立行政法人やいくつかの機構に、2020年度も手厚い交付金が支出されている。

独立行政法人や機構へいったん、カネを出し、そこから、民間事業者へ補助金を出す、迂回した補助事業も多数あった。直接、民間事業者へ補助したほうが余計なカネがかからないだろうに。または、地方自治体への交付金を増やし、そこから、地域の企業に補助したほうが、よほど効率がよいと思うが…。「こんな事業はいらんだろう」という事業も、コロナ騒動に紛れて入れ込んでいる。

これが経産省のやり方だ/資料で再検証

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次のチラシは、2020年2月中旬、厚労省と経産省が、各自治体へ配布したもの。「嘘ばっかり」と思った箇所を赤枠で囲んだ。
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安倍首相が、緊急事態宣言を出した4月7日、厚労省は「R95マスクを破棄するのは慎重に」という通知を都道府県宛に出していた。 医療機関に周知してほしいということだった。医療機関が、マスクを使い捨てできないなんて…。
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経産省はというと、4月7日に、産業界へ医療関連製品の生産協力を要請していた。誰もが突っ込むところ( ゚Д゚)。これからかーい?? 2月、3月は、何してたんだろう?
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経産省は4月9日、「医療現場にマスクが優先的に届いています」というお知らせを経産省ホームページに出した。でも、どこで撮影した写真かわからない。誰が受け取ったのかもわからない。
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4月9日になると、「アベノマスク」配布に466億円かかると各社が報道した。菅義偉官房長官は、20億枚の使い捨てマスクの消費が抑えられると説明していた。

↓2020年4月9日付・東京新聞

↓2020年4月9日付・毎日新聞

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厚労省は4月10日に、各都道府県宛に、医療機関が「N95マスク」を再利用する際の留意点をお知らせした。逆に言えば、それほど医療機関のマスク不足は深刻ということだろう。
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経産省が、2月頃から深刻になったマスク不足解消にどう動いたかというと、令和元年度の予備費から、4億5千万円を計上して、新たに、マスクを生産する企業へ、設備投資の導入にかかる費用の一部を補助した。 補助上限は、1本の製造ラインを作って3千万円だった。 2月28日から3月25日まで、13件の企業が採択された。追加1億6千万円の補助金は、マスクだけでなく、アルコール消毒液の生産事業者らにも出ている。

↓経済産業省のホームページから。
https://www.meti.go.jp/covid-19/mask.html

↓経済産業省ホームページ/予算より。
https://www.meti.go.jp/main/31.html

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マスク生産設備の補助金では、みみっちい金額しか出していない経産省だが、あらら、独立行政法人日本貿易振興機構には、前年より4億円増やした254億円を出す予定だって。
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独立行政法人中小企業基盤整備機構には、前年よりやや少ないものの176億円の運営交付金を出す予定。とてつもない金額さ。
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独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構には、前年より3億円増やして、40億円の運営交付金を出す予定らしい。経産省の資料を見続けると、40億円という数字は、少なく感じてきてしまう。怖いわー。
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独立行政法人情報処理推進機構(IPA)には、前年より一気に16億円も増やして、なんと、63億円を出すらしい。
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独立行政法人 経済産業研究所には、前年より大きくアップして、20億円
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経産省では、毎年、デジタルプラットフォーム構築事業で、30億円前後を使っている。なのに、どうして、経産省の動きは遅いの。
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経産省の事業は、まだまだあるよー。金額もすごいよー。紹介したのは、ほんの、ほんの一部。そして、さぁさぁ、出た出た。これが、2020年度の経産省の予算案(概要)のPR資料。
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マスク、消毒液、アビガン、人口呼吸器の補助事業を目次の次に持って来ましたー。でも、独立行政法人や機構へ出す金額から比べると、ショボいよ。
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たくさんある中で、気になった事業のひとつがこれ。「流通している新型コロナウイルス感染症関連の情報を分析」だって。意味がわからん。「海外政府が、国民や他国政府に対し、どのようなコミュニケーション手段を選択しているか調査、分析する」だって。自ら調査せずに、2億円かけて民間企業に依頼するらしい。自ら調査する気もないそんな官僚に、一生わかるか。
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「生活物資の需要抑制のための調査・広報事業」は、マスクやトイレットペーパーの買い占め騒動があったからだろうけど、「調査」「広報」するために1億4千万円を使うんだって。わざわざ金かけて調査すること? 課内でできることだろうに。
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今回の新型コロナ騒動で、台湾が既に導入した「在庫情報のリアルタイム共有システム」を、これから始めるんだって。これに2億円
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そして、PR資料の目玉、新型コロナ禍終息後を念頭に、経産省が打ち上げる予定の「GO TOキャンペーン事業」に 1兆6,794億円 。旅行商品を購入した消費者に1/2相当のクーポンを与えるらしい。オンライン飲食予約サイト経由で、期間中に飲食店を予約、来店した消費者に対し、最大1,000円のポイントを与えたり、登録飲食店で使えるプレミアム付食事券を発行予定なんだって。イベントチケットを購入した消費者に対して、割引、クーポンも発行するらしい。
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経済産業省の役人さーん。 「GO TOキャンペーン事業」より、医療機関へN95マスクとサージカルマスクが行き渡るように、 早く、 動いてちょうだい。今、潰れるかもしれない飲食店やイベント業者を、早く、救済してあげてください。天下り先だけ優遇するのは、ダメダメ。国家公務員というのなら、国民みんなが大変なときは、身を削るぐらいしましょうよ。