自民党前幹事長の甘利明氏が、少子化対策の消費税増税案を持ち出し、発言に注目が集まった。甘利氏は自民党の税制調査会の顧問を務める。税制調査会は政府内にも存在する。政府税制調査会は、首相の諮問に応じて税制に関する基本的事項を調査審議する機関だ。毎年度の税制改正に関する答申のほか、3年に1度、将来の税制改正の方向に関する中期答申を作成している。一見すると、政府税調査会があらゆる権限を持っているように思えるが、与党自民党の税制調査会の方が、実質的な権限を持っているという。

「税制調査会とは何か」と調査している中で、政府税制調査会の委員の名簿を内閣府ホームページで目にした。調査会の委員のリストに、新聞社の名前があった。産経新聞社の東京本社論説副委員長と、読売新聞社の東京本社相談役だ。この人たちは政府の委員として何をしているのか? 何のために会議に出席しているのだろうか?

政府税制調査会で協議したことは、内閣府ホームページで議事録が公開されている。記者会見も行われ、会見録も公開されている。非公開の会議体ではないのに、わざわざ報道機関が調査会の委員として参加する意味がどこにあるのか。他の委員のように、税制に精通している学識経験者とも言えないだろう。内閣府と財務省の御用達として、世論を誘導するため、増税に向けた“提灯記事”を書くためではないのか。報道機関の役割、「権力監視」はどこえやら。すっかり政府側の一員となっている。

↓政府税制調査会「委員・特別委員名簿」/内閣府ホームページより

↓2022年政府税制調査会の議事録と会見録/内閣府ホームページより

政府の「税制調査会とは
内閣総理大臣の諮問に応じて税制に関する基本的事項を調査審議する諮問機関。税調と略称される。1962年(昭和37)以降、旧総理府に常設されていたが、2001年(平成13)1月から内閣府の所属となった。税制調査会は、各界の代表者および学識経験者からなる30人以内の委員によって構成されるが、特別の事項あるいは専門の事項を調査審議するために必要がある場合には、若干名の特別委員あるいは専門委員を置くことができる。毎年度の税制改正に関する答申のほか、3年に一度、将来の税制改正の方向に関する中期答申を作成している。

 なお、自由民主党にも税制調査会という同名の機関が設けられており、両者を区別して、前者を政府税調、後者を自民党税調とよぶこともある。昨今、毎年の税制改正案は事実上自民党税調が策定することが多く、また政府税調へ諮問される大蔵省(現財務省)案もそれを反映してつくられ、政府税調の権威低下がいわれて久しい。しかしながら、連立政権の常態化や自民党税調内の世代交代、さらに官邸主導による税制改革への動きなどにより、その影響力も薄れてきている。

小学館 「日本大百科全書(ニッポニカ」より