大津市が住民の署名約1万5000筆を受け取らなかったことで、市民やメディアから批判の声が続々と上がっている。受け取り拒否は越直美市長自らの判断だった。一方、3学区の自治連合会長による唐突な署名提出の動きは、5月10日に大津市と大津市自治連会が大宴会を催した様子をウオッチドッグが詳報した直後に起きた。3学区の自治連合会長らも、この大宴会に参加していた。署名提出は、住民の立場に立った行動のように、各紙は報じている。

しかし、本当にそうなのか。市民センター統廃合問題をずっと追ってきたウオッチドッグ記者は、3会長による署名提出に違和感を感じている。これまで統廃合問題の情報を住民に開示せず、大津市とは馴れ合い、越市長を交えて大宴会まで催し、住民から集めた署名は数か月間ほったらかしていた。

何を今さら。3会長には住民から厳しい目が向けられ始め、署名を提出せざるを得なくなった、そこまで追い詰められた、というのが真相ではないか。署名提出にあたって、3会長が報道各社に積極的に取材を依頼していた。自分の身を守りたい、大津市側が受け取ろうが、受け取るまいが、署名提出を試みたというパフォーマンスが必要だった、というのが3会長の本音だったのではないか。3会長の唐突な行動は、自己保身が根底にあったととらえると、合点がいく。

ウオッチドッグ記者には、次のような疑問が浮かぶ。記者の地元は3学区のうちの1つだ。自治連合会長へ、下記ような質問をしたい。

2015年5月に市民センター統廃合の計画が公表された。しかし、なぜその時点で、大津市から配布された資料を、住民に回覧しなかったのか?

②2017年11月に大津市から、統廃合の素案が各自治連合会に示された。しかし、市から配布された「市民センター機能等の在り方について」の素案(30ページ)の資料を、なぜ、住民に回覧しなかったのか?

③2018年になってから、なぜ、市民センター統廃合の反対署名を集めだしたのか? 概要の資料1枚さえ添付せず、住民への説明の場も設けず、なぜ、自身の考えだけを述べた文書で「反対」の署名を集める行動に出たのか?

④約6000筆の署名を2月ごろまでに集めておきながら、なぜ、すぐ大津市へ提出しなかったのか? 署名提出責任者として会長自身の氏名を記載しておきながら、なぜ、学区単独で提出しなかったのか?

⑤大津市長宛ての署名を大津市に提出していないことを、なぜ、回覧で住民に知らせなかったのか?

⑥4月14日の学区自治連合会の総会で、署名を提出していないことを認めながら、なぜ、その後、すぐ提出しなかったのか?

⑦署名回覧の文書や、学区自治連合会の総会資料では、大津市や市長へ強い憤りを滲ませた文面を記しながら、なぜ、5月10日の大津市と大津市自治連合会のホテルでの大宴会に出席したのか?

⑧大津市と大津市自治連合会の大宴会で、越市長や幹部が同席していたのにかわらず、市民センター統廃合や署名について、なぜ、越市長らと話をしなかったのか?

⑨大津市と大津市自治連の大宴会の模様が、ウオッチドッグの記事で明らかにされた後、なぜ、事前連絡なしで秘書課へ署名を提出しに行ったのか?

⑩その際、なぜ市政記者クラブ所属のメディア各社に積極的に取材依頼をしたのか?

⑪署名を集めた期間を、なぜ「5月まで」とメディアに伝えたのか?

あらためて一連の流れを整理してみると、今回の署名提出の動きがいかにギクシャクしているかがわかる。3学区の自治連合会をはじめ、自治連合会という組織全体が、この間住民のために動いていた足跡は限られている。市民センター統廃合問題の動きを数年にわたって住民に知らせず、突然、署名活動を始め、しかし、集めた署名は提出しようとせず、大津市と大宴会を開き、ここに来て住民から批判を受けて、署名提出に向かったー。ウオッチドッグ記者は、今回の動きは、3学区自治連合会長自身の自己保身が背景にあったとみている。このまま署名を提出していなかったら、地元住民の大反発は、大津市側ではなく、3学区の自治連合会長に向かっていただろう。

ウオッチドッグ記者は、自治会のような組織が介在する場合、地域の民主的な物事の進め方というものは、こういうものだと思っているが・・。

①行政から自治会に配布された資料は、全て住民に開示する。
②コミュニティの現状と課題を考える機会を設けるため、行政や自治会は全住民を対象にした説明会の実施する。
③行政や自治会は、住民の自由な議論の場を設ける。
④行政や自治会は、議題について最初から結論ありきにはしない。住民から様々な意見を出してもらう。少数意見にも耳を傾ける。
⑤行政や自治会は、住民が何度も議論に参加し、検証する機会を設ける。合意形成のプロセスを大事にする。
⑥地域の問題について、住民の多数決で議決する。議決したことには従う。
⑦自治会内で合意した事柄は、速やかに行政へ伝える。
⑧行政や自治会はこうした経緯を全て、住民に知らせ、共通理解を深める。

3学区自治連合会長は、こうした合意プロセスを経ず、住民に必要な情報を全く開示してこなかった。しかし今回、突然の署名提出に動いた。住民軽視、追い詰められての自己保身、メディアを利用したパフォーマンス(茶番劇)、大津市との馴れ合い・・・。多くの住民にはそう映っていることだろう。住民の不信感や批判は、署名受け取りを拒否した大津市に対してだけではなく、3学区の自治連合会長や大津市自治連合会に対しても、依然として向けられている。