大津市が住民の署名の受け取りを拒否するという前代未聞の対応は、越直美市長自らの意向だったことが、5月25日までに、市長の秘書を務める職員への取材でわかった。3人の学区自治連合会長と市民部長がやりとりをしていた間、越市長は急きょ、鷲見徳彦副市長と対応を相談し、受け取り拒否を自ら決めたという。

越市長の当日の動静を明らかにしたのは、秘書課の課長補佐。説明によると、住民の署名を提出するために学区自治連合会長3人が秘書課を訪れたが、事前の連絡はなく、越市長は来客中だった。その後、越市長は鷲見副市長と、署名を受け取るかどうかについて相談したが、「受け取らない」という決定を下したという。越市長の意向は、市民部長に伝えられ、市民部長が秘書課の課長補佐とともに、学区自治連合会長らに対応したという。

課長補佐は「拒否したわけではないです。今ではないですが、受け取る意向はありました。現状では、受け取れないと判断されました」と釈明している。その理由として、①大津市自治連合会が一体としてまとめるという話が、同会長から出されていたこと、②事前連絡がなかったため、どうするかの対応の準備が出来ていなかったこと、を挙げている。

課長補佐とウオッチドッグ記者とのやりとりは以下の通り。

なぜ、大津市自治連合会長が、他学区の住民の署名の提出に口を出す権限があるのですか。何か条例などがあるのですか?

条例などはないですが、大津市自治連合会長が、市長に大津市自治連合会としてまとめると話をされてましたので。

行政は、法律や条例に基づいて行動をしなければならないのでは。任意団体の大津市自治連合会の会長が、署名を受け取らないようにと言っただけで、大津市はなぜ従うのか。約1万5000人の意見がどうして拒否されるのか。市長は弁護士出身なので、そこのところを法に基づいてはっきりご説明していただきたいのですが。

署名といいましても、今回のことだけでなくいろいろな署名があるわけで。その全てを市長まで提出されるということではないです。それぞれの所管課へ出していただいていることもあります。今回、秘書課に来られましたが、アポもなくて突然のことでしたので、所管の市民部で対応をしてもらいました。

しかし、市民センター統廃合については、2014年から市長と副市長が、先頭に立って進めてきたわけですよね。市長自ら進めた事業なので、突然でも、1万5000筆の住民の署名は受け取ればよかったのではないですか?

時期をみて受け取る意向はありました。

それが、なぜ、今ではないのですか?

大津市自治連合会として検討する時間がいるというお話でしたので、それを待ってからというつもりでした。

それはそれとして、受け取ってから検討しても良かったのではないですか?

まぁ、確かにおっしゃる通りです。そこのところが至らなかったところかもしれないので、反響の多さもあり、現在、いろいろと協議しているところです。

大津市は、大津市自治連合会が、市民センター統廃合のことについて、一体としてまとめると何度も言っていますが、このまとめるという意味がよくわかりません。それぞれの地域で課題が違います。大津市自治連合会長に、36学区の住民の質問や意見を受けるために、大津市の代わりに巡回してもらうということですか? そして、36学区の住民の意見や課題をまとめて、大津市自治連合会が、大津市へ文書で提出するということですか?

詳細は所管課でないとわかりませんが、大津市から大津市自治連合会へ一体化してまとめることについて、何か依頼しているということではないです。

大津市は時期をみて、これから、署名を受け取るとおっしゃいますが、一度失った市民の信頼を回復させるのは容易ではないでしょう。今後、現場の職員が、市民の批判の矢面に立って苦労されることになると思いますが、市長が自分の言葉で説明する機会を設けた方がよいのではないですか?

おっしゃっている意味はわかります。

秘書課の課長補佐と、このやりとりがあった25日に、大津市が一転、署名を受け取る方針を固めた、と5月26日付の京都新聞が報道した。