大津市自治連合会が「年末警戒警察激励品」として、滋賀県警にカップ麺180個を差し入れた問題は、不透明さを増している。県警側の説明は多くの点で不可解だ。

まず、県警側に受け取った事実を示す記録はない。にもかかわらず、県警はなぜか「受け取った事実はある」と当初から主張していた。不可解な説明の始まりだ。

次に、「県警のだれが、いつ、自治連合会の誰から、どのように受け取ったのか」について、県警側は「調査させてほしい」と言い、年をまたぎ、回答までに10日間を要した。なぜ調査に時間がかかるのか、なぜ調査していない前に「受け取った」という結論を示すことができたのか。この点も不可解だ。

しかも、大津署の四谷尚佳副署長はウオッチドッグの電話による問い合わせに対し、激高した。なぜそれほど苛立つのか。

そして、年明けに出てきた回答は「大津署が100個、大津北署が80個を受け取った。これらはだいたいの数字」というものだった。その根拠は「署員の記憶」だという。しかし、「いつ」「誰が」「誰から」受け取ったかは分からないという。このような説明で納得する市民がいるだろうか。

カップ麺の個数に関する県警の説明は、大津市自治連合会が残した領収書の記載と一致するように見える。ところが、本当にそうだろうか。

不可解な説明に疑念は増すばかりだ。問題点を整理してみた。

疑念① 箱で持参したのではないか?
支出伝票の但し書きには、「天ぷらそば84個」と「きつねうどん96個」とある。ウオッチドッグの独自取材で、イオンの自社ブランド「TOPVALUE」のカップ麺だとわかった。記者が、販売店に確認すると、出荷数が多いときは、12個入りの1箱で用意しているという。天ぷらそばは、12個入りが7箱で、きつねうどんは、12個入りが8箱ということになる。しかし、県警の説明では、受け取った数を「100」と「80」に分けている。つまり、カップ麺の出荷形態を知らずに、署員数が多い大津署が100個、少ない大津北署が80個と、適当に個数を振り分けた形にしたのではないか。

疑念② 連合会の誰が持ってきたか不明?
「誰が何人で警察署を訪れて、激励品を渡したのか?」と質問について、県警は「自治会の誰かだと思うが、そこまではわからない」と説明する。カップ麺の個数は記憶しながら、持って来た人物も、人数もわからないという。激励品をわざわざ持って来た人物を記憶しないとは、これほど失礼な話はない。それとも、人物を明らかにできない理由でもあるのだろうか。

疑念シリーズ③ 180個のカップ麺を誰に配ったか?
大津署の署員数は272人で、大津北警察署の署員数は83人。歳末の警戒は、全署員が出動するという。大津自治連合会から受け取ったカップ麺は180個。では、それぞれの署で誰に配ったのか? 県警の回答は「出動した署員です」。ここから県警の説明が蛇行する。「全員が受け取るには数が不足するが、どうしたのか?」という質問には、当初、「警察署の親睦会費(個人負担)の中から不足分のカップ麺を購入して配布したと思う」と説明していた。その後「不公平がないよう処理している」という説明に変わった。本当にカップ麺を手にし、食べた署員がいるのだろうか。

疑念④ 購入後、1カ月保管?
「2つの警察署はいつ受け取ったのか?」という質問に対しては、県警は「2016年の年末だと思う」と説明した。記者が入手している支出伝票には、12月1日付の販売店の領収書が添付されている。12月1日にカップ麵12個入り計15箱を購入しながら、年末まで、自治連合会役員の自宅などで保管していたことになる。購入した当日か翌日には、相手先に届けるのが一般的な対応だろう。県警は、伝票の発行期日を確認せず、名目が「年末警戒警察激励品」なので、ついつい「年末だと思う」と答えたのではないか。

疑念⑤ なぜ当時の会長は説明しない?
激励品を渡したとされる年度に、大津市自治連合会長だった清水耕二氏に、所管する大津市役所の自治協働課を介して、再三取材を申し入れている。しかし、1月になっても、会長から連絡は来なかった。なぜ明確な説明をしようとしないのか。