ウオッチドッグは、2021年度に行われた琵琶湖市民清掃のごみ収集運搬の随意契約金に対する監査請求をめぐり、3つの関係文書を一文一文、詳細に検証した。その結果、監査請求した市民らが「違法だ」と訴えた主張のうち、重要項目である「経費節減」や、ごみ収集車の「稼働台数」などについて、大津市監査委員が判断を回避したまま、棄却という結論を出していたことが明らかになった。監査委員は、請求人の主張の一部をすっ飛ばして、判断を放棄した。監査するという本来の責務を果たしておらず、機能不全に陥っている。

検証した3つの文書は以下の通り。 

1
①大津市民らの「監査請求書」 

市民らが「違法だ」と主張する問題提起。7月29日付。

2
②佐藤健司市長による「市長の意見書」

情報公開請求で開示。上記①に対する市長自らの反論。8月15日付。

3
③大津市監査委員による「監査委員の判断(監査結果)」

上記①②など、市民側と大津市側の双方主張を受け止めた上で、監査委員が下した判断と監査結果。9月26日付。 

監査委員は、監査請求人の市民らが作成した「監査請求書」(上記①)を受け取った後、監査請求人、担当部局へそれぞれ聞き取り調査を実施する。その過程で、今回は佐藤市長から「市長の意見書」(上記②)が提出された。調査をした後、「監査の結果」を請求人らに通知し、市ホームページでも公開する。「監査結果」の中で、監査委員が審査して出した「結果」に対する説明、理由となるのが「監査委員の判断」(上記③)部分にあたる。

これらの文書を精査すると、「監査委員の判断」(上記③)の中に、②「市長の意見書」(上記②)の内容を、そのままコピー&ペースト(切り抜きと貼り付け、コピペ)した箇所が多数あることがわかった。監査委員は、「市長の意見書」(上記②)の内容の、一部コピペ、全文コピペを繰り返していた。

市民の問題提起も、市長の反論も取り上げない監査

さらに詳しく検証すると、①②で触れているのに、③では全く欠落している項目が2つあった。つまり、市民側が問題提起し、それに対して市長が反論しているにも関わらず監査委員は2項目を取り上げていなかった。具体的には…

①監査請求書

1)「経費節減の意志がない。経費の異常な肥大化」

2)「随意契約した事業者の(ごみ収集車の)稼働台数が適正ではない

②市長の意見書反論)

1)「経費の節減について」
2)「収集業者が配車している車両台数について」

③監査委員の判断

1)2)ともに言及なし

監査請求人の市民らは、監査請求のどちらの項目も、多数の証拠資料(中には実地調査した際の写真)を添付して監査委員へ提出していた。にもかかわらず、監査委員はこれらの項目について、判断を回避した。すなわち、市民らの主張について、認めるとも、認めないとも判断しなかった。

“隠蔽”、“茶番”、“忖度” 代表監査の責任

「監査請求書」、「市長の意見書」に書かれているのに、監査委員が判断を放棄した部分こそ、監査委員が大津市政に忖度し、触れないでおこうとした箇所ということになる。「市長の意見書」を、そのまま「監査委員の判断」として流用してしまってはマズイと考えた部分だ。監査委員は市民のための監査を実施しておらず、監査される側と一体となり、“隠蔽”、“茶番”、“忖度”していたことになる。本来、監査委員に求められる、公正な監査とは言えない。特に、代表監査委員の土屋薫氏の責任は大きい。

このうち、1)「経費節減」については、「地方自治法第2条14項」の地方公共団体は、その事務を処理するに当っては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」にあたり、監査請求人の市民側が「監査請求書」の中で「琵琶湖市民清掃のごみ収集運搬の随意契約は違法」と主張する際の肝となる部分でもある。

「経費節減」に関し、「市長の意見書」には、「地方公共団体は、事務の遂行にあたり、最少の経費で最大の効果をもたらせられるよう不断の努力を続けなければならないことを強く認識しているところであり、このことは、琵琶湖市民清掃における必要経費の支出においても意識されなければならない」と書かれていた。しかし、監査委員は、市長の意見にあたるこの部分を採用しなかった。

つまり、これら2項目については、監査請求人である市民らの主張を、監査委員は少なくとも否定しなかった。言い分を認めたのと同然だ。監査委員は本来、市民らの主張に対して判断を放棄した部分を残しながら、全体の判断を下すことはできない。