産経新聞が報道した大津市長選の記事の一部に、事実誤認があったことがわかった。1月20日付朝刊で「市民センターの再編をめぐり、越氏に反発してきた保守系の市議らからの要請を受けて出馬」と報じたが、保守系市議らは、「反発」どころか、市民センター再編をお膳立てしてきた。

市民センター再編に関係するコミュニュセンター条例をめぐり、大津市議会では2019年9月2日に、一部議員らから「公民館のコミュニュセンター化については、稚拙な条例化を行なわず、丁寧な議論ととりくみを進め、市民への説明責任を求める請願書」が提出されていた。請願第5号である。しかし、請願第5号は、8対29の反対多数で、不採択となっている。

請願項目は、「公民館のコミュニュセンター化について、9月議会で稚拙な条例化を行わないこと」、「市民の理解と合意形成を大切にし、市民に対する説明責任を果たすよう市に求めること」という内容だった。共産党、協生会(1人会派)や清正会(1人会派)の8人が提出した請願書を、産経新聞がいう保守系会派の湖誠会と新和会19人が、反対票を投じて不採択になった。

市民センター再編問題では、越直美元市長の時代に、1万5千筆の市民の署名受け取り拒否問題が報道されたが、その直後の5月22日に市議会の公共施設特別委員会で、住民の署名を「受け取るべきだ」と発言したのは、石黒賀津子市議と、山本哲平市議(当時)の2人だけだった。
この委員会には、産経新聞がいう保守系の市議として、川口正徳市議(湖誠会)、竹内照夫市議(湖誠会)、仲野弘子市議(湖誠会)がいるが、「市民の署名を受け取るべき」という発言は誰からも出ていなかった。

つまり、市民センター再編問題で、推進しようとする越市長に対して、保守系の市議は反発してきたのではなく、後押ししてきた。

「受け取るべきだ」と市議2人/市側は態度変えず/署名受け取り拒否の報道後/ウオッチ大津№35

↓2020年1月30日付産経新聞

【解説】メディアの薄っぺらい取材

新市長の佐藤健司氏の選挙時の公約には、市民センターについて、「地域コミュニティの拠点、市民センターを守ります」のひと言だけ書いてあった。「守ります」とはどういう意味なのだろうか? 施設のことなのか、はたまた、市民の行政サービスのことなのか? 何をどう守るのか?

選挙期間中は、「越市政の行政サービスの切り捨て」を批判し、市民との対話を大々的にアピールしていた割には、「暮らし安心」は、お粗末なマニュフェストと言わざる得ない。

市民センター問題で、越市政に反発していた市民を取り込むために、とりあえず加えたマニュフェストの文言としかみえなかった。選挙を戦う政治家がよくやる手口だといえばそれまでだが、よく調べもしないで、越元市長に反発してきた保守系市議らとの対立というイメージを作り上げて、報道するメディアの薄っぺらい取材には呆れるものがある。これではプロの取材とは言えない。

メディアが罪深いのは、読者や市民に、間違ったイメージを植え付けていることだ。薄っぺらい取材に基づく事実誤認の報道がこれ以上拡散しないことを願うばかりだ。

今後、越市政時代には、何でもかんでも尻尾ふりふりの賛成票を投じていた市議らが、佐藤市政になると、どう変わるのか。越市政時代に決めたことを撤回する議案に、今度は、賛成を投じる醜態がみられるのではないか、注視していきたい。

「越市政の継承にノー(読売新聞)」と書いていた報道もあったが、越市政を支えていた「保守系市議らの醜態にもノー」だろう。二元代表制とは、そういうことだ。越元市長の暴走を止めなかった最大会派の湖誠会や新和会の市議らにも責任があった。市議会全体の責任でもある。そして、市役所に記者室がありながら、真相を報道しなかった、産経新聞をはじめとした市政記者クラブの記者らの責任でもある。

※誤記訂正
 2020年2月14日、大津市議会事務局より誤記の指摘あり、親和会を新和会へ、清生会を清正会へ修正しました。お詫びします。

↓佐藤市長の2020年選挙時のマニュフェスト(一部)