大津市の市民センター統廃合問題で、11月18日の意見交換会に参加したウオッチドッグ記者は、意見交換会の終了直後、市職員と雑談をしていた。その時、市職員に目で合図をして立ち去ろうとした男性に目を止めた。一般の住民とは、明らかに違う雰囲気を醸し出していた。

ウオッチドッグ記者は、その男性の後を追って、階段で呼び止めた。男性は「幸光正嗣(こうみつ・まさつぐ)です。市議会議員です」と答えた。「どこの会派ですか?」と記者が聞いたら、「湖誠会です」と答えた。「湖誠会って、市民センター統廃合問題に関心なかったんじゃないですか? どうして意見交換会に来たんですか?」と聞いたら、「関心はありますよ。委員会でも発言していました」と答えた。

ウオッチドッグ記者は、この幸光市議(湖誠会、自民党)の名前も顔も知らなかった。少数会派でも、一人会派でも、重要な案件で鋭い質問をしたり、あるいは、トンデモ発言をしていた市議は、議事録で確認したりしている。しかし、幸光市議の顔や名前を知らなかった。なんでも、地元は瀬田東だという。

「瀬田東」。瀬田東といえば、市民センター統廃合の反対署名を集めていた瀬田南と青山の間にある地域。今年の初めに、瀬田南と青山の両学区で、約1万3千筆の反対署名が集まっていた。この両学区の反対署名を大津市が受け取り拒否した問題が、2018年5月に大きく報道された。幸光市議は、近隣の地元議員。さぞかし、獅子奮迅の追及をしてくれたのだろうと、6月以降の市議会での幸光市議の質問を探すと、なんと「ゼロ」。

それではと、過去の市民センター関連の質問をみると、2015年8月の通常会議で「まちづくり協議会」について質問していた。よく読むと、これがまた、市議とは思えない“ど素人”な質問内容だった。

「市民がまちづくりに参加し地域課題に取り組むことは、住民自治本来の姿である」と、行政がよく使う理想ワードをそのまま使用。理想ワードを並べているが、瀬田南と青山で反対署名活動という住民自治が動き始めた時に、「住民自治本来の姿だから、市は署名を受け取るべきだ」と、幸光市議が公の場で発言した記録はない。何をやっていたんだ、と言わざるを得ない体たらくぶりだ。

さらに、「地域にまちづくりの権限と財源を移譲する都市内分権による地域自治の強化」とまで言い出す始末。胡散臭い公金使途を繰り返してきた自治連合会を、「まちづくり協議会」という名称に衣替えさせ、権限と財源の移譲をさせようというのか。

例えば、草津市のまちづくり協議会の場合、草津市まちづくり条例や中間支援組織として、公益財団法人草津市コミュニティ事業団というものが並行して存在する。2012年に草津市まちづくり条例の策定方針が示された後、2014年に施行された。草津市は、条例施行後、まちづくり協議会への中間支援組織として、(公財)草津市コミュニティ事業団と(社福)草津市社会福祉協議会を指定している。しかし、この草津市まちづくり条例でも、個人情報に関する取り扱いに関して、あいまいな記述も見られる。漏洩などのケースの場合、名簿管理者への罰則規定なども書いていない。

民間人に権限と財源移譲をするという大きな転換施策を進めようとしているなら、先行都市の事例情報をもっと具体的に収集し、きめ細かな調査と質問を用意するのが議員の務めではないか。他自治体の取り組みを旅行で見て「良かった、良かった」では、誰でもできる“ど素人”の質問だ。

参照記事:市民部長殿、自治連による「私物化」では?/市民センターへビール搬入/ウオッチ大津№111
https://watchdog-journalism.com/otsu111

参照記事:【記者レポート】「びっくり領収書」の自治連=広域支所候補の学区/ウオッチ大津№113
https://watchdog-journalism.com/otsu113

極めつけは「複雑多様化する市民ニーズに、多様な担い手(まちづくり協議会)が公共サービスを担っていくことが求められます」という発言。複雑多様化する社会で、法律や条例を知らない人たちが、好き勝手なことをしたら、無法地帯と化すのは目に見えている。

幸光市議は当選1回。市議会では教育厚生常任委の委員長を務めている。

2015年8月通常会議(9月7日)幸光正嗣議員の質問


↓2018年6月~市議会・通常会議の議員質問/市民センター関連について