大津市議会では、市民センター統廃合問題がどのように審議されてきたのか。詳細に検証してみると、この問題をめぐる、大津市政と大津市自治連合会に対する、“与党会派”市議の意図が見えてくる。結局、市民の立場を装いながら、大津市自治連合会を何かと擁護しようとしていたことが浮かび上がってきた。

ウオッチドッグ記者は、大津市議会の津田新三市議(湖誠会、自民党)へ11月27日、電話取材をした際、市民センター統廃合問題についても質問をした。というのも、市民センター統廃合問題で、大津市が約1万5千筆の反対署名の受け取り拒否をした前代未聞の出来事があった直後の2018年6月議会で、湖誠会の議員らは、誰1人として市長へ追及はおろか、質問していなかったからだ。

ウオッチドッグ記者は、津田市議へ「2017年11月に素案が出た後、湖誠会の中で、何か縛りでもあったんですかね?」と聞くと、「そんなことあるわけない。近藤(市議)が質問していただろう」と説明した。

後で調べると、署名拒否後の市議会で、湖誠会の市議らは、誰も質問していなかったが、素案が出た後の2018年2月の議会で、3人が質問していた。津田市議が名前を連呼していた、近藤眞弘市議も、確かに市民センター統廃合問題について質問していた。

この2月議会は、越直美市長が記者会見で、「大津市自治連合会長から学区ごとの署名を受け取らないようにと要請があった」と発言して、報道された直後に開かれている。

ウオッチドッグは、2月議会(3月2日)の近藤市議の質問と、それに対する、越市長や市民部の井上佳子部長の答弁に注目した。

市議会の会議録をみると、近藤市議の質問は、「市民」の後に、ほぼ毎回「自治連合会」を添え、「関心」、「意見」、「批判」、「紛糾」の言葉を並べている。(資料に青色で明示)。

近藤市議の質問に対する市長の答弁は、「市民の皆様への十分な説明」、「市民の皆様に正しく御理解いただく」とある。不思議なことに、近藤市議が添えた「自治連合会」の名前は出てこない。自治連合会の名前が出てくるのは、これからの協議に関することだけだった。さらに、市民部長の答弁では、11月28日の大津市自治連合会の定例会でも、一部の学区自治連合会から、意見が出されたとあるが、「厳しい」、「紛糾した」というようなことを感じとっているような回答ではない。

ウオッチドッグ記者の取材でも、この統廃合問題が初めて報道された後の2015年5月の定例会で、「どうなっているんだ」という意見が自治連合会から出たことを確認している。しかし、その後の3年間、定例会が紛糾するほどの議論が起きたということは、取材の中で聞いたことがない。

ウオッチドッグ記者が入手している「市民センターあり方検討」に関する資料でも、大津市自治連合会へ報告したとする公文書が残されている。2016年には、広域支所がどこになるかがほぼ決まったという情報も掴んでいた。蚊帳の外にいるウオッチドッグ記者でさえ、大まかな概要を掴んでいたのだから、市から直接、説明を受けたり、質問する機会があった自治連合会長が「素案」の概要を知らなかったとは考えられない。

こうしたことから、ウオッチドッグ記者は次のような仮説を立てている。

大津市は2014年度から、越市長を中心に内部で市民センター統廃合の計画を練っていた(ウオッチ市議会№1参照)。その当時から、計画の全貌を知っている大津市自治連合会の幹部らは、なるべく市民には広く知られないような形で、これを着々と進めようとしていた。

ところが、越市長へ内々に要請した「学区ごとの個別の署名を受け取らないように」という話が、越市長のあけっぴろげな発言で世間に知れ渡ってしまった。慌てた大津市自治連合会の幹部らは、自治連合会も市民と同じ立場で、統廃合ついては「批判」、「意見」してきたとカモフラージュすることにした。自治連合会とべったりな湖誠会議員らに、自治連合会も怒っているぞというメッセージを、市議会の質問の中で発信してもらった。

近藤市議の質問に「2月の市長定例記者会見の報道によりますと、大津市自治連合会と協議する中で、個別の学区自治連合会からの反対署名を受け取ることは避けてほしいと要請されたとお答えされています」とあったが、その後に続く質問が、「市民センター再編に反対する署名運動はどの学区で、いくつあるのか」という的外れな質問に変わっている。的外れだというのは、「どうして、大津市自治連合会長が、各学区の反対署名の受け取りに口を出すのか。そんな権限あるのか」という市民感情の怒りとは、かけ離れた質問になっているからだ。

この質問に対して、越市長は「大津市自治連合会として学区自治連合会の個別対応を認めるとなったときには、お話したいと思います」と、これまた、ズレまくりの回答をしている。これではまるで、「大津市自治連合会長様が、学区自治連合会の個別対応をお認めにならないと、市長である私は、各学区自治連合会と話をしません」と言っているようなものだろう。

そもそも、自治会に未加入の大津市民は4割もいる。大津市政は、自治連合会のためにあるのではない。越市長も、近藤市議も、大津市自治連合会は、各学区自治連合会の上部組織でなく(規定でも、補助金の流れでも)、ただの連絡調整組織であるということを全く理解していないようだ。間違った認識のままに、市長と市議が市議会でやりとりしている。市長や市議の問題意識は、市民感覚ともズレまくっていることも、また明らかになった。

大津市議会(2018年2月通常会議)3月2日-24号 近藤眞弘議員(湖誠会)


↓署名拒否問題が全国ニュースにもなった直後の2018年6月市議会での一般質問。湖誠会(自民党)、公明党は誰も質問せず。


↓「市民センターあり方検討」に関する公文書公開対象リスト/自治連合会への報告書の記載もあり。