大津市の市民センター統廃合問題で、大津市が提示した「素案」では、田上学区、上田上学区など、大戸川流域にある学区の市民センターが統廃合の対象となる。しかし、地元の川口正徳市議(湖誠会、自民党)が、計画発端の2014年から、4年後の2018年9月議会までの一般質問で、この問題について一度も質問をしていなかったことがわかった。

市民センターが統廃合されれば、市職員は誰もいなくなる。素案では、田上学区と上田上学区の市民センターは、統廃合の対象となる。そうなると、地域の防災対策はどうなるのだろうか?

この地域で災害時に、行政として誰が動くのか、大津市は示していない。大戸川ダム関連を所管する大津市政策調整部の広域事業調整課は、過去から現在まで、大戸川流域の住民らにどのような被害が及ぶのか、詳細な調査結果やデータを何も持っていなかった。「国の事業だから」と、国がホームページ上で出している資料を提示しただけだった。

ダムは何のため、そして誰のためなのだろうか? ダム整備の要望の前に、大戸川流域の被害予測のハザートマップの検証と世帯数を把握し、安全対策を講じるのが先ではないか。今までは、支所長が災害関連の情報を危機防災課に伝えていたが、市民センター統廃合後に、誰が情報を収集するのだろうか?

では、市議会はどのようなチェック機能を働かせているのだろうか。湖誠会(自民党)は、「大戸川ダムの整備促進」を柱にした政策要望書を、10月3日に大津市長へ提出しているが、流域近くで暮らす住民のための防災機能に思いは及ばないようだ。地元の川口市議は、ここ4年間、市議会の一般質問で、全く質問していない。

ウオッチドッグは、2018年9月4日に関西を直撃した台風21号の影響で、避難勧告が出された学区と指定避難所と避難者数のリストを、危機防災課から入手している。防災メールも登録しているので、避難勧告などの情報も入る。当時の危機防災課から届いた防災メールを掲載する。

9月4日の台風で、最大19人の住民が、田上学区市民センターや体育館などへ避難していた。上田上学区は、ゼロだった。後日、資産税課から、危機防災課へ伝えられた、大戸川流域の田上学区と上田上学区の被害状況報告によると、家屋などへの浸水被害はなく、台風による家屋の一部損壊が、田上学区で12軒、上田上学区で4軒だった。停電被害は、田上学区で6軒、上田上学区で5軒だった。

こうしたデータの蓄積が、担当課には残されていない。国や県とのパイプ役となる大津市広域事業調整課が、何もデータとして持っていない。過去から現在までの、大戸川流域に暮らす住民たちの避難情報や被害情報こそが、ダム整備のための基本データとなるずだ。本来は、こうした情報をまず把握し、防災対策が十分か検討し、その先にダム整備を考える、という順番になる。

ところが、こうした防災対策の基本データの記録が市の担当課に残っていなければ、検討もされていない。市議会も同様だ。地元議員が質問さえしない。湖誠会は無批判に「大戸川ダムの整備促進」を、政策要望の柱に据える。まさに「先にダム整備ありき」で、市と市議会が一体となって突き進んでいる。

↓大津市危機防災課から、2018年9月4日10時03分に発信された防災メール。(田上と上田上に関する部分だけ、赤色にした。)

大津市からお知らせします。

9時45分、台風21号接近に伴い、小松、木戸、葛川、伊香立、仰木学区の土砂災害警戒区域等及び田上、上田上学区の大戸川流域に対して避難準備・高齢者等避難開始を発令しました。

避難所は、小松小学校、小松支所、木戸小学校、木戸支所、葛川支所、葛川少年自然の家、伊香立小学校、伊香立支所、仰木小学校、仰木支所、田上小学校、田上市民体育館、田上支所、上田上小学校、上田上支所です。

ご高齢の方等避難に時間のかかる方は直ちに避難してください。その他の方も避難準備を始めてください。

↓危機防災課/2018年9月4日の台風21号「避難者数推移」

↓平成31年度大津市湖誠会の政策要望書/大戸川ダムの整備促進


↓市民センター機能等のあり方に関する質問(2014年2月通常会議~2018年9月通常会議)/湖誠会の川口正徳議員(田上出身)の質問はゼロ。

 

 

ウィキペディア「大戸川」

滋賀県甲賀市信楽町多羅尾字瀑谷に源を発し、信楽盆地を貫流し、田上山地・金勝山地を間を分け入り、大津市の田上盆地を経て瀬田川(淀川)に合流する。途中、約50の支川が合流する。全長は約38 km。別名として「田上川」や「信楽川」とも呼ばれる。 滋賀県を流れる河川の多くは琵琶湖に流入するが、大戸川は直接瀬田川に合流する。

大戸川は大津・信楽圏域に属しており、森林が圏域の土地の約8割を占める。京都や奈良に近いため、大戸川上流では藤原京や平城京などの建設のために多くの木材が伐採されていった。

↓国の行政機関で出している滋賀、京都、大阪の河川地図