9月の大津市議会で、越直美市長が二転三転させたコミュニュティセンター条例案を巡るドタバタ劇で踊らされたのは、市議会だけでなく、市政記者クラブの記者たちも然りだった。越市長は、10月2日に、記者クラブの記者へ向けて、ドタバタ劇のマイナス要素をできるだけプラスに変えた言葉を使い説明した。記者たちは、市長に都合のよい言葉を無批判に、そのまま垂れ流した。

ウオッチドッグは、越市長が、コミュニュティセンター条例案を撤回して修正案を出すと決めたことを取材で知った。その修正案がどのようなものかを確認しようと思い、10月2日の午前中に市ホームページを確認した。しかし、修正案はどこにも出ていなかった。市議会事務局へ電話すると、「市長が修正案を見送ることにした」こと、午後から、「議会運営委員会が開かれる」ことを聞いた。その後、関係部署へ電話取材し、大まかな経緯と内容を把握した。

議会運営委員会が終わった後に、広報課に電話した。市長が記者クラブへ、一連の経緯を発表したのかどうか、発表したとしたら、どのような内容だったのかを教えてもらおうと思ったからだ。ウオッチドッグは、記者クラブに属していないため、市長の発表報道が入ってこない。

広報課は、「先ほど、記者会見が開かれました」と話したが、ウオッチドッグが、一連の経緯や修正案の内容について問うと「明日の朝刊を読んでください」と言った。これには、笑いがこみ上げて、「他部署は教えてくれましたので、内容はほとんど把握しているのですが、市議会や記者会見で発表したものを、広報課が市民へ説明できないなんて変ですねぇ」とだけ話した。

2日夜、ウオッチドッグは、一連の経緯について、ウオッチ市議会№15で報道した。

広報課が、「明日(3日)の朝刊を読んでください」と言っていたので、3日の各社の朝刊を参考までに見た。毎日、読売、朝日、中日が報道していた。4日に、京都が報道したようだが、読んでいない。産経は見当たらなかったが想定ずみなので、驚かなかった。

ウオッチドッグが関係部署へ取材した中で、「越市長は、9月条例案を撤回し、10月1日に修正して出すことになっていたが、見送りとなった」という内容を聞いた。市民センター改革推進室以外の職員らは「修正案」と話していた。だから、ウオッチドッグは、「修正案」という言葉を使って報道した。

最初に提出した条例案が間違いで、修正したものを出すから、一度出したものを撤回してほしいと市議会へ懇願し、9月30日の市議会で撤回を可決されたが、10月1日に市自治連から「見送り」を要望されたので、「やっぱり、やーめた」となったという認識だ。

ところがどっこい、各社の報道では、間違いの修正ではなく、「新案」、「新条例案」というピカピカの言葉が躍った。また、一任意団体にすぎない市自治連合会からの要望で、議会との約束を反故にしたことについての疑問も出ていない。

元々、学区説明会で、「まちづくり協議会への支援について」の資料を配布し、まちづくり協議会の設立期間について言及していた。公民館の管理運営を業務委託するとした「まちづくり協議会」への希望学区導入期は、2018年度から2022年度となっている。

それが、越市長が9月市議会に最初に提出したコミュニティセンター条例案では、2020年4月に「全学区一斉にコミュニティセンター化する」という中身だった。2020年4月の時点で、委託先が出来ていないのに、条例だけを先に作ろうとした。

条例を先に提出し、コミュニティセンター化を強引に進めようとしたが、住民への説明と違うということを指摘されて、批判が出る前に、一度出したものを引っ込めて、説明資料に沿った形で修正しようとしただけにすぎない。しかし、この修正案について、「修正した条例案を地域に持ち帰り説明してからでないと、今度は、自分たちが住民に批判される」と懸念した一部の学区自治連合会長らの意見が10月1日に出たことで、市議会の約束を反故にして、「見送りした」という流れだろう。

学区説明会で、条例案を含め、詳細をきちんと説明し、話し合いが行われていなかったことが一番の問題だった。見切り発車で説明会を行い、住民に説明会をしましたで、押し切ろうとした。こうした越市長の稚拙で強引な運営方法が、市議会を巻き込んだドタバタ劇となっているのに、市政記者らは背景を捉えていない。

どこが「新案」なのか。どこが新しいのか。苦し紛れの小手先の「修正案」ではないか。

取材や調査も不十分なまま、発表された翌日に、できるだけ早く出すという報道のあり方が、越市長のイメージ戦略に利用されている。

ウオッチドッグは、10月3日の各社の報道を読み、「ここは、きちんと突っ込みましょう」という部分を抜き出した。

↓2019年10月3日付の毎日新聞

『新案提出見送り』
『今議会中の市議会への提出を見送る方針を明らかにした。「市自治連合会からの申し入れがあったため」と説明している』
『記者団に「コミセンの運営を円滑に進めるため、申し入れを受け入れた」と説明した』

↓2019年10月3日付の朝日新聞

『コミセン新案見送り』
『地域に説明する時間が必要という要望を受け入れた』
『コミセンの運営主体となる「まちづくり協議会」の中心となる自治連は』
『理解を深めた後、改めて条例案を提出する』
『「自主自立をするのまちづくりを進めるのがコミセン化の目的。円滑な実施には時間が必要と判断した」と方針を変えた理由を説明した』
『コミセン化は市の行財政改革の一環』

↓2019年10月3日付の中日新聞

『新条例案提出 取りやめ』
『市としても、自治連合会はコミュニティセンター移行に関係する重要な団体と判断し、提出を見送るとした』

↓2019年10月3日付の読売新聞

『新条例案 提出見送り』
『3日に提案予定で議会にも説明していたが、市自治連合会から「地元に説明する時間が必要」と要望を受けて、方針を転換した』
『まちづくり協議会の重要な構成団体からの申し出。条例の円滑な実施のためには時間が必要と判断した』
『「来春のコミセン化を目指している地域があり、条例は必要」と述べ、改めて議会へ再提案の意向も示した』