厚労省内に置かれた、新型コロナウイルスの「クラスター対策班」は、ウオッチドッグの取材に対して、7月13日時点で国内で発生したクラスター(集団感染)は約380件に上るとしたが、根拠となるデータの情報源は、都道府県からの報告ではなく、メディアが報道した記事だったことがわかった。そのため、全国で発生したクラスターの実態を、迅速かつ正確に把握していない可能性が高い。いつ、どこで発生したクラスターに対し、対策班がどのような対応を取ったのか、関連の情報は公開されていない。
政府のクラスター対策班が公表している「全国クラスターマップ」は3月31日に時点のもので、その後更新されていないことは、ウオッチ霞が関№8が報じている。各地のクラスター発生情報の拠り所が報道記事だったことは、対策班の杜撰な仕事ぶりを浮き彫りにした形だ。
厚労省が2月26日付で各都道府県宛に出した事務連絡によると、政府のクラスター対策班は、「新型コロナウイルス感染症対策本部」の決定により、設置されたとしている。目的として、「感染の流行を早期に終息させるためには、クラスター(集団)が次のクラスター(集団)を生み出すことを防止することが極めて重要であり、徹底した対策を講じていくべきである」とし、クラスター対策を強化していく方針であることを伝えている。
こうした方針にもかかわらず、政府のクラスター対策班は、地方自治体から、相談があったときにしか動かない仕組みになっている。しかも、各地のクラスター発生の情報を収集する手段も、地方自治体が発表した内容を、メディアが報道した後に、「必要に応じて収集」しているという。
「メディアが報道したものだけを集めているという説明だが、そうなると、新聞の全国版しか目を通していないのでは? 全国津々浦々で発生するクラスターの情報を、どのような形で全て集めることができるのか?」というウオッチドッグの問いに、「全国版だけではない。必要に応じて集めている」と説明していた。しかし、具体的な情報収集の方法については答えなかった。
都道府県に対して、クラスター発生の報告を義務づけないことについて、政府のクラスター対策班は「地方自治体の負担になるから」と説明した。政府への報告を義務付けないため、逆に、政府はいつでも「全てを把握しているわけではない」と責任逃れができる仕組みになっている。
↓3月15日時点として、厚労省が公表した全国クラスターマップ(10都道府県、計15件)/和歌山県のクラスターについて、記載があった。10人以上の「医療機関を介した感染」。
↓3月31日時点として、厚労省が公表した全国クラスターマップ(14都道府県、計26件)/3月15日時点で掲載されていた和歌山県のクラスターが削除され、ゼロとなっている。
↓2月26日に、厚労省から、各都道府県宛に出した「患者クラスター(集団)対策について」の事務連絡