自民党の新幹事長に甘利明議員が就任した。2016年1月に週刊文春が、「甘利明大臣事務所に賄賂1,200万円を渡した」とスクープ報道。この実名告発記事が2021年10月2日、週刊文春の電子版で再公開された。この記事を読んで、大臣室を舞台にした、典型的なワイロ(菓子折り+現金)のやりとりに、不謹慎ながら「面白すぎる」と思ってしまった。いつもは、政権ヨイショ報道が多い産経新聞ですら、かつては2016年1月29日付で、時代劇風に「お主もワルよのう」というタイトルの記事まで書いていた。

https://www.sankei.com/article/20160129-Q55OC2KTZFOUHLMWWFHJ4CTBJM/

2016年1月21日・28日号の週刊文春のスクープから始まる

2021年10月2日に、週刊文春が電子版で2016年当時のスクープ報道を無料で再公開している。これは、必見!

《自民党幹事長就任》政界激震スクープ「甘利明大臣事務所に賄賂1200万円を渡した」実名告発——甘利氏「金銭授受」記事を再公開
甘利幹事長は本当に口利き疑惑の説明責任を果たしたのか?

https://bunshun.jp/denshiban/articles/b1736

(記事抜粋)①2013年11月14日 大臣室にて

 「うちの社長が、桐の箱に入ったとらやの羊羹と一緒に紙袋の中に、封筒に入れた現金五十万円を添えて、『これはお礼です』と言って甘利大臣に手渡しました。紙袋を受け取ると、清島所長が大臣に何か耳打ちしていました。すると、甘利氏は『あぁ』と言って五十万円の入った封筒を取り出し、スーツの内ポケットにしまったのです。そして羊羹が入った紙袋は、椅子の横に置きました。事前に面会は十五分だけと清島氏から言われていたのですが、結局四十分くらい大臣室で雑談をしました。そして全員で記念写真を撮りましょうということになったのです。大臣に渡した五十万円は、三日前に横浜銀行東海大学駅前支店でピン札に替えて、札のナンバーがわかるようにコピーもとっておきました」

2016年1月28日号・週刊文春

(記事抜粋)②2014年2月1日 神奈川県大和事務所にて 

「この日は、大臣に新たなURとのトラブルを説明するために伺いました。数センチ程の厚みがある青いファイルに資料を挟み、事前に清島所長から指示されていた通り、要点をまとめたA4用紙二枚を持参しました。十時半を過ぎたころ大臣が現れ、挨拶をすませると、所長が、『この資料を見てください』と言って、私のファイルを大臣に手渡したのです。真剣に目を通していただき、『これはどういうこと?』と、いくつか質問もされました。すぐに要点を理解されたようで、やはり頭のいい方ですね。大臣は、『一色さん、ちゃんとやってるんだね。わかりました』と言い、所長に『これ(資料)、東京の河野君(現・大臣秘書官の河野一郎氏)に預けなさい』と指示しました。

そして所長が『一色さん、例のものを』と小声で言うので、私は現金五十万円が入った封筒を大臣に差し出しました。甘利さんは『ありがとう』と言って、封筒を受け取りました。そして最後に、所長がシャッターを押し、私と大臣の写真を撮ってくれたのです」

2016年1月28日号・週刊文春

2016年1月21日付の週刊文春の報道後、大手メディアはどのような追っかけ報道をしたのか。朝日新聞と読売新聞の過去報道をチェックして振りかえってみよう。2社の報道から記事の見出しなどをピックアップした。

2016年1月21日付・朝日新聞(夕刊)

甘利氏、業者と面会認める 現金授受疑惑「記憶あいまい」閣僚辞任は否定 

2016年1月22日付・朝日新聞(朝刊)

・300万円「返した」 甘利氏側、支持者に説明 現金授受疑惑
・甘利氏、与党から進退論 業者と面会認める 金銭授受疑惑

2016年1月23日付・朝日新聞(朝刊)

・(天声人語)甘利氏のあいまいな記憶
・甘利氏の演説、野党退席 金銭授受疑惑「お騒がせ」と陳謝

2016年1月26日付・朝日新聞(朝刊)

菅氏「甘利氏説明は28日」 本人「業者の会合に出た」 金銭授受疑惑

2016年1月27日付・朝日新聞(夕刊)

首相、甘利氏続投の意向 「説明果たした上で」 参院代表質問

2016年1月27日付・朝日新聞(朝刊)

商品券受け取り否定 国交省の現・前局長 甘利氏疑惑

2016年1月28日付・朝日新聞(朝刊)

・甘利氏 疑惑きょう説明
・任命責任、首相「私に」 代表質問、甘利氏疑惑巡り答弁
・国会、与党ベース一転 予算審議入り遅れ 甘利氏疑惑

2016年1月29日付・朝日新聞(朝刊)

・甘利氏 残る疑惑 口利き・接待、弁護士が調査 現金授受問題
・大臣室、 のし袋50万円 甘利経済再生大臣辞任

【記事抜粋】
大臣室で、菓子折りとともに渡された現金50万円。甘利明経済再生相は28日、これを受け取ったことを認めた。あくまでも「適正に処理した」と主張したが、識者らは「市民感覚ではアウト」と指摘する。「口利き」については詳しい説明がなく、疑惑は残ったままだ。
(中略)
14年にも今度は地元事務所で、菓子折りと50万円の封筒を受け取ったと認めた。(中略)「いい人とだけ付き合っていても選挙に落ちてしまう。問口を広げて来るものは拒まず、という風にしないと当選しない。残念ながら」
(中略)
建設会社側から秘書が300万円を受け取っていたことも明らかにした。「返せず、秘書が自分の机の引き出しに保管してしまった」

2016年1月29日付・読売新聞

【社説】甘利経済相辞任 秘書の監督責任は免れない

2016年1月30日付・読売新聞

甘利氏献金疑惑 秘書面談 半年間に集中 URと昨夏から11回

2016年1月30日付・朝日新聞(朝刊)

(声)「政治とカネ」いつまで繰り返す

【投書抜粋】
私も国民の一人として長く政治を見てきたが、今も昔も政治家はどうしてこうも金銭に関して無神経なのか。国民からすると何十万円、何百万円という現金を簡単にやりとりするとは考えられない。
(中略)
このような事態を黙認している我々有権者にも、責任の一端はある。出たい人より出したい人を選ぶ。政治家に注文はつけても、おねだりしない。ちょっとでも疑惑のある政治家には絶対に一票を投じない。こうした当たり前のことを、改めて言わなければならないのが悲しい。

2016年2月1日付・朝日新聞(朝刊)

甘利氏会見と食い違い 現金授受問題、建設担当者が証言

2016年2月2日付・読売新聞

甘利氏献金疑惑 秘書「事務所の顔立てて」 URが面談の内容を公表

2016年2月3日付・読売新聞

UR職員を聴収  甘利氏の違法献金疑惑 東京地検

2016年2月4日付・読売新聞

秘書の姿勢「圧力」指摘 甘利氏献金疑惑 URと面談

2016年2月11日付・読売新聞

秘書に補償額漏らす 甘利氏献金疑惑 UR「不適切だった」

2016年2月16日付・朝日新聞(夕刊)

睡眠障害診断、甘利氏が休養

2016年2月16日付・読売新聞

甘利氏元秘書 「URに20億円要求」提案 録音データ 野党が公開

2016年2月16日付・読売新聞

政治献金の透明化 現金授受 見直し必要(解説)

【記事抜粋】
甘利明前経済再生相を巡る違法現金疑惑で、甘利氏とその秘書は、千葉県白石市の建設会社側からの政治献金を現金で受け取っていた。献金で現金の授受を認めているのは、主要先進国で日本だけ。識者は「現金授受を禁止し、献金の透明化を図るべきだ」と指摘している。
(中略)
国会図書館の資料などによると、米国では現金による寄付は100ドル(約1万1000円)までしか認められず、寄付は主に振り込みと小切手によって行われる。寄付の量的制限のないドイツでも、政党に対する現金での献金は1000ユーロ(約13万円)までに制限。フランスでは選挙前の1年間は、特定の口座に収支を記録することが義務づけられているという。
甘利氏の疑惑を受け、国会では企業・団体献金の禁止を求める声が上がっているが、まず現金授受の見直しから始めるべきだろう。

2016年2月17日付・読売新聞

甘利氏が睡眠障害 1か月の自宅療養 本会議欠席理由で報告

2016年2月17日付・朝日新聞(朝刊)

元秘書 レクサス要求か 民主、録音公表し主張 甘利氏問題

2016年2月19日付・読売新聞

UR幹部出席要求 新たな録音データ 甘利氏元秘書

2016年2月21日付・読売新聞

「今日のノート」悪い冗談

【記事抜粋】
着物が普段着だったころ、他人に見られたくない金銭や物の受け渡しは、袖の下の袂(たもと)に隠すようにして行ったという。転じて、賄賂ややましい金品を「袖の下」というようになった。
この人は着物の時代のように金銭のやりとりは奥ゆかしく、と考えていたのだろう。現金入りの封筒をスーツのポケットに入れたという週刊誌の報道に、「政治家以前に人間としての品位が疑われる」と憤り、事実を否定した。違法献金疑惑で経済再生相を辞任した甘利明衆議院議員である。
たた、問われたのは金銭授受の姿勢ではない。菓子折りの紙袋の50万円は、政治活動の応援か、快気祝いか。どんな趣旨かも確かめもせず、政治献金として処理する姿勢である。また、昵懇(じっこん)でもない人から多額の快気祝いを受ける金銭感覚であろう。

2016年4月9日付・朝日新聞(朝刊)

・甘利氏問題、強制捜査 地検、URなど捜査 元秘書を任意聴取
・口利きの見返りか、焦点 甘利氏側、現金授受問題

2016年4月10日付・朝日新聞(朝刊)

・(社説)甘利氏の疑惑 説明責任はどうなった
・国交省職員も任意聴取 甘利氏側、現金授受問題 東京地検

2016年4月11日付・朝日新聞(夕刊)

調査報告書を地検に提出 甘利氏側、口利き否定

2016年4月12日付・読売新聞

・【社説】甘利氏資金疑惑 捜査で「口利き」の有無解明を
・甘利氏問題 建設会社に不透明補償 移転先建築不可 UR把握か

2016年4月14日付・読売新聞

甘利氏問題 UR職員を数十万円接待 建設会社側 補償交渉担当ら2人に

2016年4月14日付・朝日新聞(朝刊)

「補償に影響ないと認識」UR、詳細明かさず 職員、収賄容疑の可能性も

2016年4月26日付・読売新聞

接待を受けたUR職員 代金など返却済み 理事長説明

2016年5月19日付・読売新聞

甘利氏の欠席理由説明

2016年5月31日付・朝日新聞(朝刊)

甘利氏、不起訴処分へ 現金授受問題、元秘書も 東京地検

2016年6月1日付・朝日新聞(朝刊)

甘利前大臣、不起訴 違法口利き「証拠なし」東京地検特捜部

【記事抜粋】
捜査の壁となったのは、あっせん利得処罰法違反の要件である「権限に基づく影響力の行使」を立証することだ。「違法と想定する口利きは『言うことをきかないと国会で取り上げる』などという圧力。政治家や秘書の一般的な口利きまでを違法としていない」と検察幹部は言う。
(中略)
一方、ロッキード事件の捜査に携わった元検事の堀田力弁護士は、秘書が業者から口利きの依頼を受け、現金を受け取っていたという「典型的な癒着の構図」を重視する。「検察は『権限に基づく影響力を行使した』と積極的に解釈すべきだ。限定的に解釈するのは国民の常識にかなわず、政治不信、検察不信を招く。起訴して裁判所の解釈をあおぐべきだったと指摘した。
法務省によると、同法が成立した2000年以降、同法違反による一審判決は9件。国会議員やその秘書が立件された例はない。

2016年6月1日付・読売新聞

・【社説】甘利氏不起訴 灰色の口利き利得を説明せよ
・甘利氏不起訴 説明責任 果たさぬまま 1月以降公の場に現れず

【記事抜粋】
閣僚辞任につながった甘利明・前経済再生相(66)を巡る現金授受問題は、東京地検特捜部が31日、甘利氏と元秘書2人を不起訴(嫌疑不十分)としたことで捜査が終結した。ただ、甘利氏は今年1月の記者会見以降、公の場に姿を見せておらず、説明責任はまだ果たされないままだ。
(中略)
国会議員が支援者から陳情を受け、役所に橋渡しする行為は、政治活動として日常的に行われている。だからこそ、2001年に施行されたあっせん利得処罰法は、罰則の適用に「権限に基づく影響力の行使」という極めて高いハードルを課した。
「言うことを聞かないと、国会で質問するぞ」などの極端な発言がなければ同法違反は成立せず、これまで国会議員や秘書に適用された例はない。口利きを依頼した側が不満を抱くような対応しかしなかった甘利氏側に、同法違反を適用するのは困難だったといえる。
ただ、民間企業が国側の機関から補償金を受け取るための交渉に有力政治家が介入し、見返りに多額の現金を受け取る行為に国民が疑念を抱くのは当然だろう。「政治家の清廉潔白性を保つことで国民の信頼を得る」という同法の目的に沿うよう、国会議員は常に自らを律する姿勢が求められる。

2016年6月2日付・朝日新聞(朝刊)

(社説)甘利氏不起訴 政治不信深めたザル法

【記事抜粋】
あんなにおかしなことをしても罪にならないのかー。多くの人が釈然としない思いを抱いたのではないか。
(中略)
甘利氏らは都市再生機構(UR)と土地の補償交渉をしていた業者から計600万円を受け取るなどした。その前後に元秘書は業者側にたってURに働きかけをしており、あっせん利得処罰法違反の疑いがもたれた。だが、起訴できるだけの証拠がそろわなかったという。
16年前にこの法律が議員立法でつくられたときから、ザル法との批判がついてまわった。とりわけ問題とされたのは、国会議員らが口利きの見返りに金を手にしても、「権限に基づく影響力」を行使しなければ摘発されないことだった。
(中略)
政治家やその秘書が人々の要望を聞き、役所などに伝えるのがいけないという言うのではない。口を利いても金をもらうことはしない。違反した者は罰する。必要なのは、当時も今も、この単純で当たり前の考えにたち、それを実行たらしめる法律だ。
あっせん利得処罰法は、政治家らの清廉さをたもち、国民の信頼を得ることを目的としている、だが甘利氏らの一連の行いと不起訴という結末によって、政治不信はむしろ深まった。
批判の目は甘利氏にとどまらず、お手盛りで法律をさだめ、そのままにしてきた国会にも向けられている。与野党とも問題がどこにあるか検証し、見直しにむけて動くべきだ。
起訴はまぬがれたが、甘利氏の刑事責任と道義的・政治的責任は別である。大臣を辞任したことし(2016年)1月末以降、体調不良を理由に国会を休みつづけ、秘書の行動について「調査を進め、公表する」との約束は、いまだに果たされていない。

2016年6月7日付・朝日新聞(朝刊)

❝復帰宣言❞不安の声も 甘利氏、再発防止語らず/神奈川県

【記事抜粋】
前経済再生相の甘利明衆議院議員(神奈川13区)が6日、大和市の地元事務所前で会見し、「政務に復帰する」と釈明した。現金授受問題で大臣を辞任して以来、4か月ぶりで公の立場に立ち、国民と神奈川県民に向けて謝罪。一方、独自調査の説明時期や事務所改革について語ることはなかった。

2016年7月12日付・読売新聞

「甘利氏側要請での補償金の増額なし」 UR外部調査委

【記事抜粋】
(中略)
接待が90万円にのぼったとする一方、「甘利氏や秘書の要望で、補償金が増額された事実はなかった」とした。
URは11日付で、52歳の職員(同日付で自主退職)を停職3か月、43歳の職員を停職1か月の懲戒処分とした。調査結果によると、2人は2014年7月~15年12月 神奈川県のフィリピンパブなどで元総務担当者から8回の飲食接待を受け、「タクシー代」として現金を受け取っていた。接待の場に甘利氏や秘書は同席せず、内部情報の漏洩などはなかったとしている。

2016年8月2日付・朝日新聞

甘利氏「私の件は決着した」現金授受問題、不起訴確定受け登院

【記事抜粋】
甘利明・前経済再生担当相(66)が1日、現金授受問題で閣僚辞任後に初めて国会に登院し、同日開かれた衆院本会議に出席した。
(中略)
甘利氏は、1月末の辞任直後から「睡眠障害」の療養を理由に、半年余り国会を欠席していた。

2016年8月14日付・読売新聞

「 気流」8月14日 オピニオン「政治とカネ」 大阪本社(投書)

【投書一部抜粋】
・不透明感がぬぐえぬ政治とカネの問題の決着だった。(中略)3人が建設会社から口利きを依頼されたという告発を受けた特捜部は、議員の権限を行使したと認められず、確かな政治資金とは見なせなかったと判断した。では、高額の現金授受に問題はないのか。私は灰色に近いとの感じがしている。政治にカネはつきものだが、議員には歳費や文書通信費があり、政党交付金なども血税から支払われる。私は、一部の政治家のマヒした金銭感覚を糾弾したい。政治家は、厳として襟を正すべきである。

2016年8月31日付・読売新聞

自民 甘利氏を党総務に

自民党は30日の総務会で、甘利明・前経済再生相を党総務に起用する人事を決定した。

2016年9月15日付・読売新聞

甘利氏「違法見当たらず」 現金授受問題 調査報告書なし

【記事抜粋】
自民党の甘利明・前経済再生相(67)は14日、東京・千代田区の党本部で記者会見し、現金授受で不起訴となった元秘書2人に対する弁護士の調査結果を説明した。法律違反は見当たらなかったとしたが、調査報告書はなく、会見を直前に設定して短時間で済ませたことに、識者から疑問の声が出ている。
(中略)
甘利氏は1月に大臣辞任を表明した際、元検事の弁護士による調査を行うとしていた。この日の会見での説明によると、「先日、弁護士から口頭で結果の説明を受けた」という。甘利氏の説明では、特捜部が不起訴とした点については弁護士も同じ結論という。検察審査会が「URに影響力を行使した見返りに現金を受け取った可能性がある」と指摘した点も、「2人は(URに対し)元総務担当者との面談設定などのお願いに終始している」との理由で、問題はなかったとした。元秘書らは元総務担当者から繰り返し接待を受けていたが、甘利氏は言及せず、質問されても「2桁回数で、一度に数万円」と答えたにとどまった。会見実施が報道各社に知らされたのは直前で、13分で終了した。

2016年8月18日付・読売新聞

(社説)甘利氏の責任 速やかな説明を求める

【記事抜粋】
国民が抱く憤りも、機能しない法律に対するいらだちも、理解していないのではないか。
(中略)
一般に、検察が法令を厳格に解釈し、刑罰権の発動に抑制的なのは結構だ。しかし、今回、検審が示したまっとうな市民感覚をふまえ、裁判所に判断を求める道はなかったのか。ザル法に命を吹きこむ好機を逃し、幕引きとなったのは釈然としない。
もちろん、幕が引かれたのは刑事責任の追及であって、甘利氏の監督責任や道義的責任は残されたままだ。国会閉会にあわせたように体調は回復し、自身を含む関係者の不起訴も確定した。いまこそ約束していた調査結果を明らかにし、自らの見解を語らなければならない。
国民は甘利氏に十分な時間を与えた。次は氏が十分な時間を確保して記者会見し、国会でも質問にしっかり答える番だ。閣僚を辞めたときに語った「政治家としての美学」「政治家としての矜持(きょうじ)」が問われている。

ウオッチドッグまとめ

2021年10月、自民党の新幹事長に就任した。甘利明議員は、2012年12月から2016年1月まで経済再生相だった。2016年1月21日、28日号の週刊文春により、甘利議員や秘書らへの1,200万円賄賂報道がスクープされた後、1月28日に大臣を辞任。その直後の2月から「睡眠障害」と称し国会に現れず。大臣を辞任後は、第190回の常会(1月4日~6月1日まで)に出席しなかった。5月末に不起訴処分が報じられると、国会閉会後の6月6日に、神奈川県の地元事務所前で「政務に復帰する」と記者会見をした。その後、たった3日しか開かれない第191回の臨時会(8月1日~3日)に出席するため、半年ぶりに国会へ登院した。
甘利明議員は、2016年2月から7月まで半年間、国会で議員活動をしていなかったが、歳費月額129万4000円×6か月=776万4,000円と、文書通信交通滞在費月額100万円×6か月=600万円が支給されている。合計金額は、1,376万4000円

大臣室などで、業者から(お菓子+現金)の賄賂を受け取り、バレると病気と称し説明責任を果たさず国会からトンズラ。国会議員としての責務を果たさず、何もしていなくても、1,376万4000円が受け取れるのだから、国会の法律は、議員らの特権を維持するためのザル法だらけとしか言いようがない。

↓衆議院ホームページより/2016年(平成28年)国会会期