文通費の改正を審議するため、これまでの経過資料が全ての国会議員に配布された。しかし、議員らにとって不都合な歴史的経緯を、衆院法制局が、法律案概要の「改正の趣旨」には記載していないことがわかった。

衆参両院は4月15日、「文書通信交通滞在費」を「調査研究広報滞在費」に名称と目的を変えて、事実上の使途拡大を進める法案を可決した。その2か月前の2月25日には、法改正に向けた参考資料として、国立国会図書館が作成した「文書通信交通滞在費の創設及び改正経過」(2月25日刊行)という冊子を、国会議員全員に配布した。

衆院法制局は、この資料を、文通費の法改正に向けた「法律案概要」を作成する上で参考資料にしたという。衆院法制局が作成した「改正の趣旨と文書通信交通滞在費の性格に関する歴史的経緯」によると、議員活動の例として「調査研究」、「広報」、「国民との交流」、「滞在」などがある。これらの性格には、歴史的経緯があるとして、1966年(昭和41年)の「議員歳費等に関する調査会答申」を例示している。この答申の中には、「議員の国政に関する調査研究活動の強化」という文言が入っているため、今回の改正法案の名称と目的に「調査研究」が加わることは妥当だと説明している。

衆院法制局が参考文献とした国立国会図書館作成の資料によると、1966年に歳費法の改正があり「調査研究費」を新設し、調査会の答申に従い、「課税対象とする」という。「滞在雑費」も「費目が合理的でない」として廃止となっている。当時は、国会議員歳費の値上げの動きに対する世論の批判を受けて、言論界、経営者団体、労働組合、婦人団体、与野党議員らの意見を聴取しつつ、全12回の調査審議を行ったという。

世論の批判を受けて課税対象となった「調査研究費」は、1974年(昭和49年)に、「通信交通費」と統合され、新たに「文書通信交通費」に衣替えした。この時の経緯に関する記述はない。当時の報道によると、「調査研究費」は収入として扱われ、課税対象となっていたが、新たな「文書通信交通費」は、「費用弁償の性格が強い」として、非課税になったという。

また、1993年(平成5年)に歳費法を改正して、「文書通信交通費」を「文書通信交通滞在費」に改称して、増額が行われた。この改正時に、廃止となっていた「滞在」の名称と目的を復活させた。

このように、歴代の国会議員らは、世論の批判を受けると「文通費」の法改正を繰り返してきた。一時期は一部を課税対象としたり、また一時期は一部を廃止するなど、修正を繰り返し、世論の批判を沈静化させ、時が過ぎると自らの都合のよい形に復活させてきた。

今年に入ると、1974年に統合した「通信交通」と「調査研究」のうち、経費という性格が強い「通信交通」という名称と目的を捨て、使途拡大がしやすい「調査研究」に衣替えした。しかし、「調査研究費」は課税対象とするべきだとした過去の答申結果を無視している。

↓衆院・法制局作成「国会法及び国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案概要」

↓国立国会図書館「文書通信交通滞在費の創設及び改正経過」

https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_12125294_po_1175.pdf?contentNo=1&alternativeNo=

↓該当部分のP10からP12まで抜粋