新コーナーの「メディア遊歩道」を始めます。メディア遊歩道は、時事問題やメディアの問題などを、記者とデスクが散歩しながら、気楽に話し合うイメージのコーナーです。

第1回のテーマは、デスクの仕事、そして記者とデスクです。

ウオッチドッグの編集部紹介をみた人から、よく聞かれるのが、「デスクって何? もう1人の記者?」という質問です。そこで、記者とデスクの関係、デスクの役割を、元新聞記者の小黒デスクに聞いてみました。

そもそも、ウオッチドッグと新聞社のデスクって違いますか? 新聞社のデスクの仕事って何ですか?

 

デスクの語源は、英語でDESKです。「机さん」ですね。自ら外に出かけて取材はしません。机に張り付いて、記者が書いた原稿をチェックするのが大きな仕事です。もう一つは、取材と出稿に関する指示と確認です。ウオッチドッグでも、次は、どういうテーマにしようか、このテーマはどう取材しようか、などどデスクと記者が相談していますよね。

してますね。

 

これが非常に大事です。SNSを含め、インターネットが身近になり、マスメディアでなくても、簡単に情報を発信できるようになりました。しかし、発信されるものが、自分1人が書いたものか、それとも、誰かのチェックを受けているのか、という違いは大きいです。

ただ思いついたまま発信するだけでは、1人よがりの記事になる傾向にありますね。

 

新聞社の場合だと、必ず二重、三重、四重のチェックを受ける仕組みになっています。記事の信頼性がずっと高かったのには理由があるわけです。

知り合いの新聞記者が「デスクに原稿を変えられた」とかよく言ってましたが。

 

私が新人記者のころ、手書きで原稿を書いてましたが、直される以前に、ゴミ箱に捨てられていたことがありました。

 

えっ( ゚Д゚)ゴミ箱にポイですか?

正確に言うと、目の前で原稿用紙をズタズタに破かれ、ゴミ箱に投げ捨てられました(笑)。

 

小黒デスクが、まさか当時は、お粗末な原稿を書いていたとか?

取材が不十分だったので、「この程度の取材で記事にはならない」ということですね。デスクにしてみたら「こんな原稿をオレに読ませるなよ」と。

厳しいですね。

 

取材が十分か、不十分かは割と簡単にわかります。取材が十分であれば、少々文章が下手でも、言いたいことは伝わります。

いろんな記者の話を聞くと、みんながみんな鋭いデスクだけではないような気がしますが?

 

医者の世界と一緒です。いろいろなデスクがいます。取材現場には、現場の考え方や思いがあります。例えば、あの記者会見は腹が立ったとか。でも、頭がカッカしたままでは、よい原稿は書けません。

頭がカッカして書くことは、私にもよくあります。

 

整理して、冷静に徹底批判する記事になれば、記者も納得するはずです。それを指南したり、また、相談するのが、有能なデスクだと言えます。記者とデスクが相談して、よいアイデアが浮かぶこともしばしばありますよね。このコラボレーションが重要なんです。

なるほど。

 

自分が世に訴えたいと思って取材に時間をかけて、ようやく完成した原稿を、デスクが通さない。お互い、自由に意見交換できるような関係でない。そういう関係性の中で、意図しない方向に書き直されてしまう。そういうデスクは記者にとっては困ったものです。でも、どの組織にも、仕事ができるデスクもいれば、できの悪いデスクもいると思ったほうがよさそうです。

納得して書き直しをしなかったら、記者の釈然とした思いは残るでしょうね。

 

記者の経験がないデスクというのはいないはずです。したがって、よい記者を育てる上で、デスクは重要な役割を果たします。よい記者にはよいデスクあり。

デスクの良しあしで、記者が伸びるかどうか左右されるということですか?

 

教育係としてのデスクの役割は大きいです。「近頃の記者は・・」という話になりますが、取材先がほとんど接することがない、デスクの仕事はどうなんだろうと思ってしまいます。記者だけの問題ではなく、デスクの力量や、デスクと取り巻く職場環境に問題があるのではないかと疑ってかかる必要があります。

デスクの問題というと?

新聞社では人員削減のため、昔に比べれば、デスクの仕事量は増えているはずです。原稿をしっかり見れる時間がない、取材の相談をする余裕がない。そうなると、記者の面倒も十分に見ることができていない、ということになります。憂うべき状態です。

どうしたらいいんですか?

 

まずは、大学で基本を学ぶべきではないかと。また、記者になってからも、それこそ、OBの力も動員して、記者1人1人の力を上げていくことが必要だと思います。プロのアスリートにも、経験豊富なコーチついているでしょう。記者とデスクの関係もそれと同じです。

<散歩を終えて>

今まで、「ウオッチドッグデスクって何しているの? もう1人の記者?」と聞かれる度に、説明が面倒なので「ウオッチドッグ記者の暴走を止める人」と話してました。そうすると、みんなが「あ~」と妙に納得してました。今回、「メディア遊歩道」で取り上げた「デスクって何?」で、読者の皆さんもデスクの重要さを理解してもらえたらいいのですが。