鹿児島県警が、福岡市を拠点に活動している調査報道サイト「ハンター」の事務所を強制捜査して、取材元を割り出した問題。ウオッチドッグでは「ハンター」の過去の報道などを検証し、現場で何が起きていたのか、わかりやすく解説する。ウオッチドッグは、鹿児島県警による令和の報道弾圧を非難する一方、「ハンター」を自主的に応援する。
【独自入手】鹿児島県警で組織的隠蔽加速|捜査記録「速やかに廃棄」指示
お騒がせの鹿児島県警とはどんな組織なのでしょうか。ウオッチドッグが、「ハンター」の過去の記事で注目したのはこれ。「ハンター」が入手した、鹿児島県警の内部文書『刑事企画課だより(2023年10月2日付)/鹿児島県警刑事企画課が課員向けに発行』。(赤色の枠はハンター編集部)。ハンターの記事から資料画像をダウンロードしました。
「事件記録」(犯罪事件受理簿や事件指揮簿などの公文書が含まれている可能性あり)を作成する必要がないと指示しています。
また、「保管している事件の記録の写し」も「不要と判断されるものは速やかに破棄しましょう」と指示をしています。
極めつけはコレ。「再審や国賠請求等において、破棄せず保管して捜査書類やその写しが組織的にプラスになることはありません!!」と断言しているところ。国民よりまずは「組織のプラスを考えろ」という指示を、警察官らに出しています。ど直球の本音を文書にして指示しているところがすごいです!
《再審や国賠請求等において、廃棄せずに保管していた捜査書類やその写しが組織的にプラスになることはありません!!》(*上の画像)
もはや組織的な隠蔽の奨励。引き合いに出された再審請求や国家賠償請求は、国民の重要な権利として認められている。鹿児島県警はそれを頭から否定し、「組織的なプラス」を優先して証拠をどんどん廃棄しようというのだ。
ニュースサイト「ハンター」/小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)氏の記事より抜粋
「ハンター」で記事を書いている札幌市在住の小笠原淳氏は、北海道警察の未発表不祥事を掘り起こしたジャーナリスト。2022年~23年頃は、鹿児島県警の不祥事に関する調査をしていました。
小笠原氏が2022年1月に鹿児島県警へ情報公開請求し、2月に入手したのが「2019年1月1日から2023年1月18日までの「懲戒処分台帳」「訓戒処分台帳」に記録された各事案について」。鹿児島県警より計121件の不祥事を記録した公文書の交付を受けました。そして、その直後の2023年3月に追加資料を鹿児島県警へ情報公開請求しました。
それが、「不祥事の捜査の記録」と「公表の記録」の2種類。結果は、「不祥事の捜査記録」は「存否応答拒否」、「公表の記録」は「一部開示」。この2種類の記録をなぜ、小笠原氏は情報公開請求をしたのでしょうか。その理由を下記の「ハンター」掲載記事の中で説明しています。
懲戒処分などの対象となった不祥事には、法令違反にあたる事案が含まれている可能性が高い。その場合、捜査機関である警察は当然ながらその事件を捜査することになる。捜査すれば、それに伴って公文書が作成・取得される。先述した「事件指揮簿」などだ。これの開示を求める理由はつまり、警察が身内の法令違反を見逃がさず、一般の県民の犯罪と同じように適切に捜査しているかどうかを確認するためだ。万引きをして処分された警察官がいたとして、その万引き事件が真っ当に捜査されていればその記録が残る。お目こぼしとなっていたら記録は残らない。開示される記録をもとの開示文書(過去5年間の不祥事記録)と突き合わせることで、どの事案が適切に捜査されどの事案が握り潰されたのかがたちどころにわかるわけだ。
2023年10月3日付・ニュースサイト「ハンター」/小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)氏の記事より抜粋
鹿児島県警の闇(上)|警官不祥事の捜査記録を存否応答拒否で隠蔽
鹿児島県警が「警官不祥事の捜査記録」を小笠原氏へ開示しなかったこと、「ハンター」の追及報道後に、刑事企画課が「公文書の破棄指示」を出したことが、今回の一連の公益通報&報道弾圧に繋がる発端でしょう。
なぜ、そもそも「ハンター」は「警官不祥事の捜査記録」を求めたのでしょうか。次回はより詳細に解説します。