ウオッチドッグは、ニュースサイト「ハンター」に対する鹿児島県警の強制捜査の一報を知ってから、同サイトによる一連の報道にほぼ目を通した。

2021年9月、コロナ療養施設で女性スタッフが、鹿児島県医師会が派遣した男性職員から性被害を受けた。女性スタッフは告訴し、翌2022年1月に受理された。「ハンター」はこの告訴事件の真相を取材し、詳細に報道してきた。一方、県医師会は同年9月27日、県知事宛に調査報告書を提出し、会見を開き、処分内容を公表した。男性職員に対する処分は、「停職3か月」という甘いものだった。

鹿児島県医師会、職員わいせつ事件で「人権無視」の記者会見|県への報告に食い違い|「合意があった」を既成事実化

ウオッチドッグ記者

鹿児島県医師会による「甘い処分」の公表からわずか1か月後(2022年10月末)、男性職員が退職しました。停職3か月の処分明けに職場復帰することなく退職した事情について、「ハンター」は関係者へ取材をしました。そこで、この男性職員に関する新たな情報を得ました。

ここから怒涛の展開! 男性職員にまつわる新事実を、「ハンター」が次々とあばいていきます。

①セクハラとパワハラの常習性/被害女性は他にも

鹿児島県医師会、わいせつ事件男性職員の常習ハラスメントを隠蔽|崩れる「合意に基づく性行為」

②身内は警察官(警部補)/女性が被害を訴えた署で勤務

2023年1月20日付「ハンター」の報道によると、被害女性が、2022年1月に鹿児島中央署に性被害を訴えた際、同署が門前払いにしていたという。驚くべき内容。被害女性の告訴状を受理しなかった同署では当時、わいせつ行為をした男性職員の父親が、警部補として勤務していた。

鹿児島県警が性被害を訴えた女性を門前払い|医師会・わいせつ行為者の父は元警官

このありえない対応について、ニュースサイト「ハンター」は、「鹿児島中央署が、組織ぐるみで強制性交が疑われる事案のもみ消しを図った可能性が高い」と書いてます。

関係者の話によれば、鹿児島中央署が強制性交の告訴状提出を拒んだのは昨年1月。同署に助けを求めたのは、県が設置した新型コロナウイルスの療養施設で鹿児島県医師会の男性職員(昨年10月に退職。本稿では「男性職員」)に強制性交されたとして告訴状を提出しようとした療養施設の女性スタッフAさんだった。

Aさんに応対したのは、同署強行犯係の「マエゾノ」と名乗る女性警察官だったが、「自分も性被害にあったことがある。それをなくすために警察官になった」と言いながら、終始一貫して訴えの受理を拒絶。「防犯カメラなどの証拠がない」、「(訴えると)精神的にも労力的にも大変。あなたが望む結果にはならない」などと言い募り、「検事が判断する材料がない」として突き放していた。

女性警察官は聴取中、「上司に確認してくる」と何度も離席。指示を受けたらしく、「(訴えは)受理できない」として何度も告訴断念を迫っていた。当日の女性警察官の言動からみて、鹿児島中央警察署が、組織ぐるみで強制性交が疑われる事案のもみ消しを図った可能性が高い。

2023年1月20日付・ニュースサイト「ハンター」の記事より

2023年1月10日、こうした不可解な鹿児島中央署の対応に対して、「ハンター」は同署へ赴き、取材を申し込みました。しかし、拒否されました。やむなく署長の井上昌一氏(当時)宛の質問書を受付に渡しましたが、後日、警務課(同署)より「受け取れない」と配達証明付きで戻ってきました。

質問書の内容はなかなか興味深いものです。「ハンター」の記事から、文書画像をダウンロードしました。

県警に取材を拒絶されたハンターの「質問状」

ちなみに、「ハンター」が文書を渡した2023年1月当時、鹿児島中央署の署長だった井上昌一氏は、2か月後の3月17日付発令で、鹿児島県警の刑事部長に異動になることが2月24日に公表されました。

こうした責任者の退職や異動により、身内を庇い、真相に蓋をしてうやむやにしようとする県警と県医師会の「隠蔽体質」を感じとった「ハンター」は、さらにいっそう取材を深めていきました。次回は、内部告発により明らかになった事実を解説していきます。