毎年恒例となっている大津市と大津市自治連合会の宴会の前に行われる自治連の総会で、市職員が誰も総会資料や配布資料を受け取らないという悪習が続いている。にもかかわらず、大津市情報公開・個人情報保護審査会は、「文書が存在しないとする非公開の決定は妥当」という結果を出し続けている。大津市情報公開条例の目的は、「公正で透明な信頼される市政の運営の確保」にあるが、審査会はふみこんだ判断をせず、市が文書を持っていないことだけを理由に、市の立場を妥当としている。
ウオッチドッグは、2014年から2018年まで「大津市の公文書の扱いに問題あり」と情報公開制度の趣旨に照らして問題提起をしてきた。
◉2014年
2012年まで、大津市自治協働課は、大津市自治連合会の事務局をしていた。しかし、大津市自治連合会の過去5年分の総会資料を情報公開請求したが、総会資料は存在しなかった。市は、事務局として自治連へ密切に関わりながら、総会資料を保管せず、問い合わせしたウオッチドッグ記者へ「ない」と言って、運営実態を明らかにしなかった。
◉2015年
「平成27年度(2015年)に大津市自治連合会総会で配布された総会資料」を情報公開請求した。
市自治協働課は、文書は「存在しない」という非公開の決定通知を出した。当時の担当職員は、「公務で参加した。見るだけ見て必要なかったから焼却した」という説明をした。ウオッチドッグ記者は、市の決定に異議申し立ての審査請求をした。審査会は、市自治協働課を実地調査したが、「本件公文書を確認できなかった」とし、「市の判断通り」という答申結果を出した。
◉2016年
「平成28年(2016年)5月に琵琶湖ホテルで行われた大津市自治連合会の総会に公務で参加した職員が受け取った総会資料や配布物」という情報公開請求をした。
市自治協働課は、該当文書を「取得していない」とし、非公開の決定通知書を出した。ウオッチドッグ記者は、市の決定に異議申し立ての審査請求をした。ウオッチドッグ記者の審査請求に対し、市自治協働課は水面下で「いかに、却下できるか」を画策。審査会の諮問に移る前に、市は顧問弁護士へ相談し、ウオッチドッグ記者に対し、条例にない「照会文」を送付するという前代未聞の対応をとった。一連の経緯を中日新聞が、2016年9月9日付で報道した。
この一連の騒動の後、審査会の諮問へ移った。審査会は、「文書を保有しているとは認められないため、市の判断を妥当」とする答申結果をまたもや出した。しかし、最後に、審査会としての意見を付記。「補助事業として総会が行われたことを証する資料として保有することが望ましい」や「実施機関においては、大津市自治連合会に対し、同会の有するその事業を自治会員に説明する責務を全うされるようにすべく情報公開の運用につき助言を行うことを検討されたい」とした。
◉2018年
「2018年5月10日の大津市自治連合会の総会に公務で参加した市職員が受け取った大津市自治連合会の総会資料」を情報公開請求した。
市自治協働課は、「自治連合会の総会に出席しておらず、当該文書を取得していない。大津市では保有していない」という非公開の決定通知書を出した。ウオッチドッグ記者は、これに対し、「前回の審査会は、市として自治連の総会資料を保有することが望ましいと意見をしていた。市職員が、琵琶湖ホテルの会場にいながら、総会に参加していないと主張するのは、公務員としての仕事をしていないに等しい。総会後の宴会に、市長や市幹部らが参加していた」と審査請求した。
審査会は、「保有するのが望ましいと意見をしたのは、市職員が総会に参加した時のことで、補助金交付申請書に、総会議案書の添付を求めるのなら、総会に出席しなくても、補助事業の監督に支障がでるわけでもない」ため、「大津市の判断は妥当」という答申を出した。
しかし、、2016年の補助金交付申請書には、総会議案書の一部しか添付されていなかったことが判明したため、2016年の審査請求で、ウオッチドッグ記者は、証拠資料を添付し、意見書を提出していた。一部しか総会資料が添付されない年度もあったのに、交付申請書に添付するのだから、市職員が総会に参加しなくても補助事業に支障がでるわけではないとする審査会の判断は矛盾している。その補助事業で、琵琶湖ホテルへ総会会場代が支払われている。総会後、市自治連が交付申請書を提出する時まで、誰が大津市自治連合会長なのかわからない状態のまま、自治連の事務局スペースを市役所内に無償で提供していることになる。総会時に、総会資料を受け取らないのなら、団体の運営実態がわからないという空白期間が生じることになる。市の監督に支障が出るのは明白だ。
大津市情報公開・個人情報保護審査会は、「公正で透明な信頼される市政の運営の確保」という目的に照らしてでなく、市が文書を持っていないというだけで、市の判断を妥当としてきた。
受け取る機会を持ちながら、あえて文書を受け取らないという大津市の手管を審査会が妥当とするのなら、市政にとって本来は重要な文書でも、恣意的に受け取らないことができる。つまり、公文書でないとする行政の誤魔化しを横行させることになる。大津市から、大津市自治連合会へ支出している運営補助金300万円の中から、琵琶湖ホテルの会場代などの総会経費が充てられている。
大津市情報公開・個人情報保護審査会の委員は、越直美市長が委嘱した学識経験者(学者や弁護士など)で構成している。
※大津市情報公開条例の目的
第1条 この条例は、市民の公文書の公開を求める権利を明らかにするとともに、市政情報の公開の総合的な推進に関し必要な事項を定めることにより、いわゆる市民の知る権利を尊重し、市の有するその諸活動を市民に説明する責務が全うされるようにするとともに、市民の市政への参加を一層促進し、市民の理解と協力を得て、公正で透明な信頼される市政の運営の確保に努め、もって地方自治の本旨に即した市政の推進に寄与することを目的とする。
↓大津市自治連合会運営補助金交付基準
審査会が、文書があるかどうかだけの視点で「市の判断を妥当」と判断するなら、大津市が過去にやってきた 「会場前にいたが、参加しない」 や「公務でお手伝いしたが、受け取らない」、「見るだけ見て必要ないから、焼却」という公務員として問題ある言動を「良し」として認めることになるのでは。
市民の皆さんは、こうしたやり方をどう見るのでしょうか。大津市の「非公開」を不服としたウオッチドッグ記者は、審査会へ、しつこく審査請求を重ねてきました。その度に「市の判断は妥当」とした過去の審査会の答申結果を掲載します。市長が任命した学者の意見より、市民の声、世間の常識に耳を傾けたいと思う今日このごろです。 大津市には、情報公開条例の目的を守ってほしいですね。
↓2016年3月22日・審査会の答申第34号
↓2017年3月3日・審査会の答申第42号
↓2019年3月12日・審査会の答申第56号