大津市が「市民センター機能等のあり方」の新たな案を、2月1日に公表した。36学区にある各支所を2024年度までは存続させる、などとしている。新聞各紙は「住民の反発受け見直し」(京都新聞)などと、新たな案を好意的に受け止め、報道している。しかし、新たな案を読み込むと、市の狙いはあくまで市民センター(支所)の統廃合にあり、各紙の報道は的外れであることが分かる。7割の支所で機能が縮小され、市民の利便性が向上することは皆無で、ただ不便を押し付けられるだけと言ってよい。

■各「まちづくり協議会」に最大100万円の補助金

新たな案によると、市は2024年度まで全36支所を存続させ、職員を配置すると言いながら、2020年4月から、25の支所で窓口機能を大幅に縮小する。その一方、市民センター内にある公民館を2022年度内に、新たな自治組織「まちづくり協議会」が運営するコミュニティセンターに移行させ、その上で、36支所を11の組織に統廃合しようとしている。市は、対象の学区ごとに最大100万円の補助金を出し、まちづくり協議会の設置を急がせる。公民館のコミュニティセンター化について「準備が整った学区から順次移行する」。新たな案は結局、従来の「素案」に沿った、“市民センター統廃合案”であることに変わりはない。

■76%が「現状のままでよい」と回答

井上佳子市民部長は昨年11月18日、市民との意見交換会の席で「みなさまの声を聞きながら修正していきたい」と述べていたが、新たな案を「実施案」と名付けている。昨年秋に全36学区で行われた意見交換会でのアンケートでは、参加者の76%が、市民センターは「現状のままでよい」と回答した。しかし、こうした多数派の意見を、市は聞き入れず、市民センターを統廃合するための「実施案」を公表した。

■自治連会長「安心した」わけは?

一部の学区自治連は、市民センター統廃合に対する反対署名を集めた。昨年秋に各学区で行われた意見交換会でも、学区自治連の幹部は、市の従来の「素案」に対し、強い反対の意見を述べていた。しかし、市が公表した新たな案には、「36学区の自治連会長らから反対はなく、『安心した』との声が上がったという」(2月3日付京都新聞)。

コミュニティセンターは、新たな自治組織の「まちづくり協議会」が担う。新しいとはいえ、中心母体は学区の自治連合会である。「まちづくり協議会」には、早く設立した学区には、最大100万円の補助金が入る。そして既存の各種団体への補助金を全部まとめ、「より自由度の高い交付金に移行」する。つまり、現行の学区自治連が「まちづくり協議会」に衣替えし、法律に縛られていた公民館から移行したコミュニティセンターを、「自由度の高い交付金」で運営できることになる。しばらくすると、36の支所が11に統廃合され、残り25の学区には市職員がいなくなる。まちづくり協議会は、「地域のまちづくり」という名目で、「より自由度の高い交付金」を意のままに使えるようになる。学区自治連の会長が、市の新たな案に対して「安心した」のには、こうした構図があるからだ。


ウオッチドッグは、大津市が公表した新たな案を詳しく読み解き、問題点を独自に解説する。

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