大津市の越直美市長は、10月2日に、公民館をコミュニュセンター化にするのは、「自主自立のまちづくりを進めるのが目的」と大津市政記者クラブの記者らを緊急に集め、自身の考えを講釈した。

「何が自主自立のまちづくりだ。地域活動の上に、自治連合会が乗っかっていること自体、地域住民の自主自立の阻害要因だ」とウオッチドッグ記者は、過去を回想して、そう思った。

今から11年前、ウオッチドッグ記者は、学区社会福祉協議会の役員となった。別に「自らやります」と言って挙手したわけではない。当時のウオッチドッグ記者の地元A学区は、隣接学区から分離独立したばかりで、自治連合会の組織が出来て1年目だった。ウオッチドッグ記者は、過去に子育てサークルの代表などをしていた経験もあり、福祉を勉強中ということを聞きつけた当時の学区社会福祉協議会の役員らから「手伝ってほしい」と頼まれた。

ここから、ウオッチドッグ記者が地域にどっぷり関わることになる。この時期に見た、ありのままの姿をご紹介しよう。当時、学区自治連合会が発足し2年目の時でもあり、各種団体(社協、体協、人推協など)はみんな、若い役員らでいっぱいだった。今後のまちづくりをどうしようかと希望に燃えていた人が多かった。まちづくりのNPOを立ち上げた人らもいた。

試行錯誤しながら、まちづくりを進めていたが、自治連合会が発足して3年目に、どうも胡散臭いと思う面々が、突如、自治会の会長として出て来た。そのうちの1人が「自治連合会長をやります」と宣言した。この人物は、後に琵琶湖市民清掃の補助金不正が見つかって追及されることになるのだが、この時は、「まさか。そこまで」と気づかなかった。この人物は、分離独立する前の隣接学区の時代に、長らく学区社協の役員や民生委員をやっていた経験もあった。隣接学区で培った運営方法を、こちらの新しい学区でも踏襲させようとしていたのがみえた。

自治連合会の発足した初年度から、連合会の会議の場に、NPOの会長なども参加していたが、自治連合会の新役員となった面々は、「今後は、自治会長と各種団体(社協、体協、人推協など)の会長だけで会議をするので、出ていってください」と追い出した。地域の祭りやイベントなどで積極的に自主自立のボランティア活動をしていたNPO団体の代表を追い出したことになる。

またある時、ウオッチドッグ記者は、地域の女性たちに声をかけ、子育て世帯へ向けた地域情報誌を、民間の助成金を活用しながら、自主自立的に作成したことがあった。出来上がった地域情報誌を自治連合会を通して、子育て世帯が多い自治会へ配布してもらうよう依頼した。しかし、「こういうものを作るということを、前もって聞かされていない」とトンチンカンなことを言い出して、配布することを拒否する自治会長がいた。

「女性たちが自らの足で動いて作ったものを、何であんたにいちいちお伺い立てなければならないんだよ。カネを出しているわけでもあるまいし、えらそうに」と抗議文をその自治会長へ出してから、作成した女性たちで、子育て世帯が多い自治会の世帯一軒一軒へ、配布して回った経緯があった。

その後、一部の自治会へ配布されたこの地域情報誌の評判がよかったこともあり、配布していなかった自治会の会長から「うちの自治会にも欲しいので、もっと作ってほしい」という要望が自治連合会の会議で出た。ウオッチドッグ記者は、「もう1度、新たに作ってほしいということは、自治連合会から作成の支援金を出してくれるということですね?」と聞くと、「それはできない」とのこと。

「作成してほしいと言いながら、支援金を出さないということは、どうやって作るんですか。民間助成金も同じものを使えませんよ」と腹が立った。が、「どうしても必要なのでお願いします」という人がいることもあり、こんな使えない自治連合会に構っていても仕方がないと、民間企業らに広告を出すからスポンサーになってほしいと話をつけ、新たな地域情報誌を作成した。この時は、自治連合会からの要望ということもあり、出来上がった情報誌は、全世帯へ自治会を通じて配布された。

また、ある時、ウオッチドッグ記者は、学区社会福祉協議会の役員をしていたので、その学区社協の予算で、地域の子育てサークルや草刈りなどのボランティア活動をしている高齢者団体へ助成金を支出しようと、「まちづくり助成金」制度を新設した。

助成金の支出にあたっては、実際に、その活動実態を見て、何に使用するのかの聞き取りと相場を確認して、助成金の支出が適切かどうかを役員らで協議してから決めた。支出後も、実際に使われているのかも確認した。そんなとき、全体予算20万円の学区社協のまちづくり助成金の内、5万円を助成してほしいと申請書を出してきた人物がいた。

誰あろう、当時の自治連合会長だった。自らが代表している「X自治会のふれあいサロン」の活動に助成してほしいということだった。この「ふれあいサロン」は、X自治会員だけを対象にしたものだった。

活動内容を読むと、自治会館で行う「囲碁教室」や「麻雀大会」など。「麻雀のふれあいサロンというのなら、X自治会から金を出してもらってください」と、学区社協として、助成金の支出を拒否した。5万円を何に使うのかも書いていなかった。

すると、このX自治会の民生委員児童委員の爺さんが、ウオッチドッグ記者に対して、「ふれあいサロンに金を出すのは社協の役目だろう」と怒鳴りつけてきた。女性だから、怒鳴れば、言うことを聞くと思ったのか。そこで「地域全体のための活動でもないものにみんなから預かった金を出せるか」とウオッチドッグ記者が怒鳴り返した。こんな人物が民生委員をやっているぐらいだから、民生委員の組織もどうしようもないなあと悟った。

その後、ウオッチドッグ記者に言ってもテコでも動かないと思った自治連合会長ら麻雀仲間は、当時の温厚な学区社協会長へ、「地域コミュニティのために支援するのが社協の役割ではないか。なぜ、ふれあいサロンに助成できないのか」などと書いてきた抗議文を出してきた。

それに対して「地域コミュニティというのなら、いろんなスポーツ団体などの活動も地域コミュニティだろう。何を基準に線引きするのか。地域全体のため公的な活動をしている団体へ、預かった学区みんなのお金から支出するのがまちづくり助成金の趣旨だ。個人的な趣味の活動にまで、みんなの金を出せるか。社協は、小地域活動を奨励しているのだから、X自治会へお願いしてお金を出してもらってくださいよ」という内容の返信を出した。

その後、これまでの経緯を記録として書き留め、自治連合会の会議の中で、自治会長らに配布して説明した。「地域住民のための20万円の学区社協のまちづくり助成金ですが、自らが代表のふれあいサロンに使うため予算の4分の1の5万円を欲しいと自治連合会長が言ってきましてね。このふれあいサロンの活動ですが、X自治会員のための麻雀や囲碁教室です。自分のところのX自治会から出してもらってくださいと拒否したところ、こんなことが起きました」と暴露した。この会議の後、自治連合会長は、まちづくり助成金の申請を引っ込めた。

公的活動でないものに「地域コミュニティ」という言葉を濫用し、あの手この手で、みんなの金を分捕ろうとする不届き者がいるということを、ウオッチドッグ記者はこの時に学習した。「地域コミュニティ」は、不届き者らにとって、“打ち出の小槌”だ。

この2年後ぐらいに、ウオッチドッグ記者ら当時の学区社協の役員は、胡散臭い面々で占めている自治連合会の活動へ協力するのが、馬鹿馬鹿しくなって組織を辞めた。当時の人権推進協議会のベタベタ会長は、不正した自治連合会長と仲良しこよしだったが、この人物が社協の会長へそのままスライドした。この人物は、地域の子育てサークルや、高齢者のボランティア活動へ助成していた「まちづくり助成金」制度を廃止した。本当に地域のために活動している自主自立の団体への助成を廃止するような人物が、今も社協の役員として居座っている。

数年後、余談として面白い話を耳にした。スポーツ少年団の活動で知り合った保護者から聞いた話だが、ふれあいサロンの活動をしているX自治会の話だった。X自治会館では、このふれあいサロンの麻雀卓が自治会館に常設されており、爺さんらがタバコをふかしながら入り浸っているため、タバコ臭いし、麻雀卓が邪魔で、子どもたちの集まりなどで使えないとのこと。ウオッチドッグ記者のY自治会のY自治会館は、室内は禁煙だし、広いし、子どもたちが活動しやすくて羨ましいわ、という話だった。

一団体が自治会館を私物化している例として出したが、公民館もこうなったら目も当てられない。

かつて、まちづくりに燃えていた各種団体などの若い役員らも、胡散臭い面々が自治連合会の役員として居座り続けると、どんどん変化していった。実力なしの自治連合会長のような人物にも、ベタベタ、ヨイショを始めた。

各種団体の役員らは、ある種の特権意識を持ち、見栄と形骸化した行事の遂行にいそしんだ。政治色と宗教色を排したニュートラルなまちづくりを進めようとした当初の理想は挫かれた。たいしたことがない行事を大仰に盛大に催し、政治家らに声をかけ、地域に呼んできて交際をすることを目的とするようになった。

地域の間で、支配する者と、支配される側で分断するようなまちづくりの仕組みは、上下関係がないネットワークの関係性を破壊する。自主自立のまちづくりに欠かせないのは、1人1人が地域活動に楽しんで参加し、1人1人の活動を尊重するということだ。本来の地域課題は何かということを協議するわけでもなく、お仕着せ行事を強制的に遂行する「まちづくり」しかやったことが自治連合会に、地域住民のためのまちづくり計画が策定できるとは思えない。