ウオッチドッグは、大津市の市民センター統廃合問題や、公民館のコミュニュセンター化について、「問題あり」という記事を展開してきた。根拠なく発信してきたわけではない。記者がこれまで、地域のコミュニティ活動を、たっぷり実践してきた経験と、いわゆる民間人による公共施設管理の実態を見てきた経験と、地域福祉を研究してきた経緯を踏まえ、越直美市長が独断で進めているこの計画は「問題あり」だと判断した。

今回は、ウオッチドッグ記者が見た「本当にあった公共施設の民間管理者の話」をお伝えしよう。

今から12年ほど前、ウオッチドッグ記者は、PTAのママさんバレーのサークルに所属していました。毎週土曜日の夜に、小学校の体育館でバレーボールをしていました。当時、体育館を借りる時は、市民センターに行き、市職員を通して手続きをしていました。その後、しばらくして、体力的な限界を感じて、ウオッチドッグ記者は、バレーボールのサークルを引退しました。

しばらく、小学校の体育館から遠ざかっていましたが、5年前に、子どもがスポーツ少年団に入ることになり、体育館を借りる手続きを久しぶりにすることになりました。その際、地元A学区の体育協議会のメンバーが、学校体育施設開放運営委員会の管理指導員として、大津市から業務委託を受け、時間外や休日などに学校体育館を利用するサークルや団体に対して、利用申請の受付をするようになっていたことに驚きました。

ウオッチドッグ記者の地元A学区では、学区内だけでなく、隣接学区の体育館も利用できます。そこで、隣接地域にある小学校の体育館を借りるため、B学区の体育協議会の管理指導員へ利用申請をしました。

隣接B学区体協の男性管理指導員C氏から、体育館を借りる際の注意事項や、鍵の返却場所の説明を、ウオッチドッグ記者を含め保護者らが受けました。鍵の返却場所は、C氏の自宅前の空き家に設置されているポストでした。管理指導員のC氏は、加えタバコをしながら、鍵の返却場所の説明をした後、こう話し出しました。

「前に、ここに返却するのを間違えて、わしの自宅のポストへ鍵を入れた団体がおって。ここに返したらあかんやろと、その団体に1カ月間、体育館を使用させなかった。同じような間違いをしたら同じ目に遭うから、あんたらも気いつけや」と高飛車な言い方で言い放ちました。

一緒にいた女性の保護者たちが、「怖ーい」と漏らしてました。ウオッチドッグ記者は、「アホか。このおっさんは。あんたに、そんなことが出来るどんな権限があるんだよ。返却を間違えただけで、公共施設を貸さないなんて、どこにそんな規定があるんじゃ」と思い、後でたっぷり調べたろと思いました。

隣接B学区の体育館利用の調整会議に参加した部役員から聞いた話では、C氏らは、スポーツ少年団の女性保護者らに、自分らがやるべき事務まで押し付けていたということでした。

またある時は、C氏らの指示で、体育館前にある「すのこ(みざら)」のペンキ塗りまでさせられていました。どうして、公共施設の体育館を借りただけで、ペンキ塗りをさせられるのか。

またある時は、地元A学区の体協から、「1月に行われるマラソン大会の手伝いをしてください」と、日時と役割を勝手に決められた通告がありました。「お手伝いできますか?」という確認もなく、「体育館を利用している部の代表ということで、何を勝手に名前を入れているんじゃ」と怒り心頭になりました。部として、体育館のモップ洗濯や、ワックス掛けなどやるべきことは、しっかりやってました。スポーツ少年団に加入したただけで、体協の行事手伝いまでしなければならないことを疑問に思ったウオッチドッグ記者は、すぐさま、学区体協の役員D氏に電話しました。

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1月のマラソン大会の手伝いですけど、私は出ませんよ。
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体育館を利用している団体の皆さんには、手伝いに参加してもらっている。ひとつの部だけ参加しないというのはどうなんだ。
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体育館を借りただけで、どうして、体協の行事の手伝いをしなければならないのですか? そもそも、体育振興というのなら、本当にマラソンを好きな人を増やして、手伝ってもらったらいいじゃないですか。
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地域の方からもお手伝いに参加していただいている。
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それって、自治会の役員ですよね。そうではなく、本当にマラソンを好きな人から、継続して手伝いしてもらような形にしたらどうですか。お手伝いしてくれる人を回覧して、呼びかけたらどうですか。手伝いする人がいないのなら、その行事自体に魅力がないということで止めればいいことで。自治会やスポ少の役員らを、手伝いとして 強制的に招集するようなことは、ボランティア活動とはいえません。私は出ませんよ。

という経緯で、ウオッチドッグ記者は、体協主催のマラソン大会の手伝いに参加しませんでした。市体協や学区体協主催の行事では、形骸化しているのに、手伝いや参加者として、自治会役員や体育館の利用団体の役員らを強制的に招集することや、それに類することは山ほどあります。それなのに、「たくさんの人が参加してくれました。来年もまたやりましょう」で終わり。週末のこうした強制的な行事手伝いへの負担が大きく、スポーツ少年団への加入者が増えないというケースも起きてました。こうした仕組みは、結果的に子どもたちのスポーツ振興にとって、マイナスになっていると感じました。

ウオッチドッグ記者は当時、部代表として、地元A学区の体協の会議に参加して、「スポーツ少年団の保護者らにとって、部の運営と学区体協の行事手伝いは、二重負担になっているので改善してください。大津市だけですよ、こんなことをしているのは。草津市では、学校体育館を利用している団体が、体協の行事手伝いをしなければならないなんて仕組みはないです」と問題提起しました。A学区体協の会長は、「検討します」とだけ返答しましたが、今も相変わらずの状態が続いています。

体育館を利用しただけで、体協に所属している管理指導者から、ペンキ塗りをさせられたり、鍵返却の間違いで、1カ月間の利用停止を受けたり、体協に行事手伝いを強制させられたりというのはおかしすぎる。そう思ったウオッチドッグ記者は、各学区の体協を所管している大津市の市民スポーツ課へ確認しに行った。関係資料を入手し、体協に任せている学校体育館の管理指導者の問題を伝えた。

当時、調査した結果として、体育施設開放事業として体協の管理指導者に支出している業務委託金は、小学校体育館で年21万円で、中学校体育館で年11万円だった。地元A学区の体協は、調整会議を毎月行っていたが、隣接のB学区では、年2回の調整会議しかやっていなかった。隣接のB学区では、事務まで利用団体へやらせているということらしいので、年21万円を何に使っているのか疑問に思った。業務の日数と時間と内容を市へしっかり報告してから、報酬を渡す仕組みにすべきだろう。

「何に使ったのかを市は把握しているのですか?」と市民スポーツ課へ聞いたところ、「これまでは、年2回一括して、地元へ委託金をお渡ししていますので、何に使用したのかまで市として把握していません。今後のことを含め、内部検討を始めています」という答えだった。2018年度から、学区の人口比に応じての委託金に変わったようだが、当時は、人口が多い少ないに関係なく、どの学区も年21万円で同額だった。

「体育館を借りた利用団体へ、管理指導者が強制的にペンキ塗りをさせていましたけど、そんなことができるんですか?」ということも聞いたら、市民スポーツ課の職員は「えっ。そんなことが…」と驚いていた。

「やっていけないことだったら、その管理指導者を市役所まで呼び出して、市が指導してくださいよ」と依頼したが、地元の利用団体の人から聞いた話では、その後も、利用者にペンキ塗りのようなことをやらせているらしい。市民スポーツ課は何も動かなかったということだろう。この事案は、ウオッチドッグ記者の継続調査案件として、残っている。あれから、どういう委託金の支出形態になったのか、どのようなチェック体制に変わったのかを、時間ができたら確認するつもりだ。

公共施設の管理という公的な業務にも関わらず、自ら作り出した勝手な権限を振りかざし、規定に則り業務を行っていないC氏のような管理者がいる。一方、ウオッチドッグ記者の地元学区のように真面目にやっている管理者もいる。

管理者を信頼して、仕事を丸投げするような運営方法は、今の時代にそぐわない。委託する市としては、利用団体へ、学校施設開放運営委員会に対する苦情窓口を設けるなど、管理者の資質向上を目指した態勢を作るべきだ。公的施設の管理運営を民間人へ丸投げして任せる業務委託は、利用する市民の不満を増幅するだけだ。

利用団体同士でもめ事が起きた時も、同じ地域の住民が管理指導員になっていると、もめごとを調整できなかったり、不適切な利用をしている団体へ厳しい指導や適切な助言ができなかったり、という事案も起きている。

これは、学校体育館の利用で起きた出来事だ。今後、自治連合会が主体となるまちづくり協議会を指定管理者として、公民館の管理運営を、業務委託するような事態になると、体育館管理と同じようなことが起きる可能性が大きい。そもそも、大津市として、公民館利用に関しては、大雑把な実施案と条例案しか提示していない。適正な業務を遂行しなかった時の罰則規定や苦情窓口の設置もないのに、一民間人が、公共施設を公平、公正に管理できるのか、はなはだ疑問である。