ウオッチドッグ記者の自宅へも5月31日に「特別定額給付金」の封筒が届いた。封筒を見て仰天した。なんで、申請書の宛先が神戸? 市ホームページで確認すると「神戸市須磨区」の住所に宛てた封筒が掲載されていた。まったく同じ画像なので、大津市から届いたものに間違いない。
「どこの業者へ委託しているのさ??」。市ホームページには、民間事業者の名前は出ていなかった。そこで6月1日になって、大多数の大津市民と同じように、市へ電話で問い合わせた。いくつかの疑問点があった。特別定額給付金の担当課にも、封筒に書いている電話番号にかけても、大津市コールセンターにかけても、いっこうに繋がらなかった。人事課への取材のついでに、問い合わせの伝言をお願いしたが、担当者から折り返しの電話はなかった。
京都新聞も6月2日付で、「10万円『給付金詐欺では?』大津なのに申請書宛先が神戸 大津市に問い合わせ殺到、なぜ……」という記事を報道した。
「なんで、こんなことをしているだろう?」。そこで、背景を調査してみた。
6月3日午前中までの取材でわかったことをお伝えしよう。
「特別定額給付金」の封筒が届いた。差し出し名は「大津市役所 大津市特別定額給付金事務センター」だが、住所は「神戸市須磨区」になっていた。申請書を送付する封書の宛先は、神戸市須磨区にある「神戸名谷ワークラボ」だった。




大津市ホームページで確認した。間違いなかった。



特別定額給付金の市ホームページに、「それ、給付金を装った詐欺かもしれません」と書いているチラシを添付していた。ブラックジョークかと思った。自治体が、「詐欺かも?」と誤解を受けるようなことをして、どうすんだよ。
これまでの新型コロナウイルス感染症の後手後手の対応にも呆れたが、今回の件は、さすがに、呆れを通りこして、「どうしようもないな」と思った。大型連休を含め、4月下旬から12日間も本庁舎を閉鎖し、やっと5月7日に再開。佐藤健司市長をはじめとして市職員が、がむしゃらに市民のために仕事をしてくれるかと期待したが、部長、次長、課長ら市幹部まで、1週間ごとの2交代制を続けていた。「何してるんだろう」と思っていたが、まさか、特別定額給付金の事務作業まで、民間事業者に業務委託しているとは思わなかった。本庁舎には、約1,200人の市職員がいるのに……。6月1日にやっと、2交代制を終了し、通常業務に戻った矢先のことだった。

↓京都市

↓神戸市

↓大阪市

↓奈良市


特別定額給付金の担当課に電話しても繋がらなかった。封書に書いている電話番号に電話しても繋がらなかった。大津市コールセンターに電話しても繋がらなかった。

仕方がないので、人事課への別件取材のついでに、「どうして、市職員で定額給付金の事務作業をやらないのか?」と聞いた。人事課は、「特別定額給付金の担当課でないとわかりません」という答えだった。ウオッチドッグ記者は、下記を聞いた。
・民間事業者の名前は?
・いくらで業務委託したのか?
・個人情報の宝庫のような申請書を、民間事業者が扱うにあたり、どのような守秘義務を課しているのか?
・取扱いについての契約内容は?
・チェックする際、住民基本台帳を使用しているのか?
・神戸市の申請場所に、大津市の職員がいるのか?





業務委託については、住民基本台帳システムの委託事業について書いていたけど、給付に関する委託事業については書いてない。その後に、また、別の連絡が出ているかもしれないので、これについては、継続して調査する。
総務省からのメールは、4月22日に発信されている。この時期は、クラスター発生による本庁舎の閉鎖直前で、佐藤市長は、臨時職員の募集について、何にも動いてなかったんじゃないのかなあ。24日には、23学区の市民センターを巡回して激励していたし。



↓2020年6月2日付・京都新聞の記事(抜粋)

特別定額給付金の担当課に電話した。やっと繋がったので、6月1日に人事課に電話で話したことと、ほぼ同じ質問した。担当課は、「民間事業者の名前は、公表していません」と話した。「名前も公表できない、よくわからない民間事業者へ、なんで、大津市民の個人情報を送らなければならないの?」と聞いた。
「別の者から折り返し電話させていただきます」ということだった。しばらくして、携帯に着信が入っていた。着信に電話をしたら、福祉政策課だった。しかし、担当者が、不在で取材ができなかった。
↓6月2日夜の大津市ホームページ/「緊急情報」と「大事なお知らせ」


福祉政策課ではなく、特別定額給付金の担当課から電話が来た。質問をしたら、このような答えだった。
Q:民間事業者の名前は?
A:パーソルテンプスタッフ株式会社。
Q:あの施設は、神戸市とパーソルテンプスタッフが共同で運営しているようだが。神戸市はどういう関わりをしているか?
Q:神戸市の関わりは知らない。元々、学校施設だったものを改装した施設という話は聞いている。
Q:いくらで業務委託したのか?
A:公表に向けて準備している。今は言えない。4月20日頃に委託先と話を進め、5月18日の補正予算可決後に、契約した。過去に、福祉関係の臨時給付金の業務委託をしたことがあった。その時は、全世帯ではなかったが。
Q:個人情報の宝庫のような申請書を、民間事業者が扱うにあたり、どのような守秘義務を課しているのか?
A:ここだけではなく、委託業務をお願いするときは、基準をもうけている。特記事項が ある。
Q:取扱いについての契約内容は?チェック済みの申請書は、どうなるのか?
A:最終的に、大津市が保管する。
Q:全部揃ってから、大津市へ渡すのか、それとも、一定の期間、集まってから大津市へ 渡すのか? 大津市職員が受け取りに行くのか?
A:確認してから答えたい。
Q:チェックする際、住民基本台帳を使用しているのか?
A:住民基本台帳から、住所、世帯構成などの一部データを抽出し、事業者とシステム上 で共有している。
Q:神戸市の申請場所に、大津市の職員がいるのか?
A:いない。
Q:なぜ、大津市役所で事務作業をしなかったのか?
A :15万世帯の給付事務を行う場所として、一定の広さがあるところは、なかなかなかった。慣れている事業者に依頼したほうが早い。
Q:大津市役所の別館の大会議室はけっこうな広さがあるが…。
A:別館の大会議室は、会議などで使用していることがある。
Q:4月22日に総務省から、臨時職員の雇用を促す事務連絡が届いていたと思うが、コロナで職を失った大津市民を臨時職員として雇用し、給付事務にあたってもらったほうが良かったんじゃないか?
A:慣れていない人を臨時職員として雇用しても、指導するのに時間がかかる。
Q:大津市職員が1,200人ぐらい本庁舎にいると思うが、大量動員して優先的に事務をやったらできたのでは?
A:そういうご意見も多いが、他にも業務があるので。
Q:なぜ、事業者名をホームページで公表しないのか?
A:必ずしも公表しなければいけないことではない。
Q:どこの事業者かわからないところに、個人情報を渡すことについて、市民が不安に なって、大津市へ確認の電話をした人が多かったと思うが。1日に電話が繋がらなかっ た。
A:初日だから、電話が多かった。そのことの問い合わせだけではない。
事業者名を電話で公表したから、大津市ホームページに出ているかと確認したが、3日午前10時30分時点で出ていなかった。
大津市特別定額給付金の担当者との電話の後、神戸市のホームページで調べたら、「神戸名谷ワークラボAOZORA」は、学校跡地ではなく、旧神戸市立あおぞら幼稚園の跡地だった。神戸市が、まちづくり事業の一環として活用している施設ということになる。
↓神戸市企画調整課未来都市推進課の報道資料より。

↓2020年6月2日付・京都新聞/「詐欺では?」と心配した大津市民がたくさんいたことを知った。
