大津市の佐藤健司市長が、市長給与を年300万円引き上げる議案を提出し、3月27日の市議会で可決された。市長給与を引き上げする議案を巡っては、27日に毎日新聞が「厳しい財政状況なのになぜ?説明なく」という見出しで報道した。

新型コロナウイルス感染拡大で、滋賀県でも経済への影響が懸念される中、越直美前市長の時より、市長給与を大幅に増やすことになる。佐藤市政は、ほとんど実績がない就任直後に、自らの市長給与の引き上げに動いたと言える。人事課は「他の自治体並みに引き上げた」としている。

佐藤市長は、市長給与を引き上げることを、市長選の公約に掲げておらず、公に説明もしていない。これまで、大津市政は、市民に痛みを強いた施策を次々と推し進めてきた。将来の財政負担を考慮した市長や特別職の給与カットを、市議会も支持してきたが、市長が代わった途端、新市長や副市長ら特別職の給与を越市政以前に戻した。市議会も異論を唱えなかった。

今後、新型コロナの影響で、民間事業者らが厳しい経営状況に陥ることが予測される中、市長と幹部の給与だけは大幅にアップする。果たして、市民の理解が得られるのか疑問符がつく。

前市長1,150万円 → 佐藤市長1,450万円

人事課によると、市長の給与は期末手当などを含め、年総額1,640万円。越前市長の本給と期末手当はそれぞれ30%カットされ、年総額約1,150万円だった。しかし、佐藤市長が提案した10%カットにすると、年総額約1,450万円へと約300万円アップとなる。

人事課は、「他の中核市の首長の中でも、大津市長の報酬は最下層といえるので、同レベル並みに引き上げました」と他自治体を意識した変更だったと説明している。

↓大津市議会ホームページより/3月27日に可決した議案第16号

↓大津市特別職の独自カットの変遷

市長給与30%カットは、厳しい財政状況を反映した結果

ウオッチドッグが以前入手していた大津市の内部資料「特別職の独自カットの変遷」によると、越市政の2013年度に、市長給与を30%カットしている。

人事課は、「2013年度は、東日本大震災の影響で、国家公務員の給与が下がったこともあり、その余波で、大津市長の本給を30%までカットした」と説明している。国家公務員の給与減額措置期間は、2012年4月から2014年3月末まで。

その後、いったん、市長の給与を3.8%カットに戻したが、越前市長は2期目の市長選の公約で、給与を30%カットすると掲げたこともあり、2016年度に当選すると再び、給与を30%カットした。

越市政では、財政の立て直しを前面に押し出し、幼稚園統廃合や、市民センター統廃合などの計画を打ち出し、市民サービス削減や人員削減を進め、市民に痛みを強いた。そうした経緯もあり、市長や副市長らの給与カットは、世論の批判をかわす目的もあったが、自らも痛みを共有する姿勢は貫いた。市長の給与カットについては、各社が報道していた。

「バランスをとった」/佐藤市長コメント

3月27日付の毎日新聞の報道によると、佐藤市長は、記者団への説明として「1割カットは続けるが、パフォーマンスであってもいけない。『ボランティアで市長をやれ』という市民の選択があれば別だが『市長も給与をカットしているから、自分たちもカットされるのではなどと職員の士気も下がる。バランスを取った』」としている。

佐藤市長は「市民が主役」と、ことあるごとにアピールしながら、「職員の士気」という精神論を持ち出し、主役の「市民」へ直接説明していない。パフォーマンスではいけないとしながら、目片市政時代の10%カットは引き継いでいる。

↓3月27日付・毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20200326/k00/00m/040/334000c

毎日新聞は、3月27日付の記事で、2月13日に撮影した佐藤市長の写真を掲載していた。市長が記者団へ説明したとする2月13日は、大津市長から市政記者クラブへ、予算レクチャーが行われた。この日の会見では、給与のカット率変更について、市長自らの説明というより、議案を見た記者からの質問に答えた形だったとしている。広報課は「あくまでも予算レクで、定例記者会見ではない」とし、市ホームページで会見録を公開していない。市長と市政記者が、どんなやりとりをしたのか知ることができない。

広報課によると、市長の給与引き上げについて報道したのは、毎日新聞だけという。

↓2020年2月20日付・ウオッチドッグ

「手玉」にとる広報課/鵜呑みにする記者クラブ/新市長会見をめぐり/ウオッチ大津№161関連

越市政当時の会見録と給与の報道

↓2019年11月7日の越直美市長の定例記者会見/人事制度の改革
https://www.city.otsu.lg.jp/soshiki/001/1003/g/mayor/kishakaiken/h31/28626.html

↓参照記事:2018年7月3日付・毎日新聞

↓参照記事:2016年2月13日付・産経新聞