台風21号による26時間の停電時、大津市・山中比叡平の要援護者の安否確認がされていなかった問題で、地元の支所で保管している「要援護者台帳」が活用されていなかったことが、取材でわかった。

要援護者台帳は、民生委員児童委員が収集した要援護者のネットワーク台帳のうち、本人の同意が取れた情報を市社会福祉協議会から提供を受け、安否確認に必要な情報だけを抽出したものに加え、行政が保有する高齢者、障害者手帳保有者、要介護認定者など、福祉関連の情報が含まれている。支援が必要な市民のリストアップし、関係団体と共有することにより、災害時に迅速に対応するために作られている。各支所で厳重に保管している。

今回の台風による長時間の停電が起こった山中比叡平では、要援護者のリストが活用されなかった。大津市長寿政策課は「リストを開示するかどうかを決定する権限は、災害対策本部の本部長だけ。今回、リストを開けてもよいという本部長の通達が山中比叡平に出なかった」と説明している。つまり、長寿政策課は、リストを開示すべきかどうかの検討さえしていなかった。

「どのような災害の時、要援護者台帳を活用できるのか? 基準や規定はあるのか?」という質問に対して、長寿政策課の担当者は「それは、本部長でないとわからない」と、判断の責任を本部長に丸投げする考えを明らかにした。

今後も非常時には、担当部署は「要援護者台帳」を活用するかどうかの判断をせず、災害対策本部長1人の判断に委ねるという心もとない災害支援体制が続くことになる。危機・防災対策課の説明によると、今回の台風21号では、災害警戒本部が配備され、本部長は、鷲見徳彦副市長だった。

他の地区の支所長は、ウオッチドッグ記者の取材に対して「もし自分なら、災害の切羽詰まった状況下なら、本庁へ『開けるで』と連絡して、開けたと思う」と答えた。