大津市の市民センター統廃合をめぐり、法令で定める各建物の耐用年限に照らすと、全体の約9割が今後20年以上使用可能と位置づけられていることが、市が作成したデータから明らかになった。36ある市民センターで、今後使用できる年数の平均は29年間だった。これまで、市は市民に対する説明として、「公共施設の老朽化」を強調してきた。しかし、市民センターは他の公共施設と比べても、平均の築年数は浅く、主張の前提が崩れていることになる。

市はこうしたデータを十分把握していながら、市民に対する説明資料の中では、各市民センターがいつ建てられ、耐用年限が満了までどのくらい残されているのかを示してこなかった。大津市が統廃合を進めるには不都合なデータを意図的に隠し、不適切・不公正な資料を作成したという批判は避けられない。

データは「平成28年度 大津市市民センター等の在り方検討業務 報告書」。現在は大津市のホームページから閲覧することができる。そのうち、「市民センターの基礎情報」では、36支所の建設年度のほか、耐用年限(年度)、事務室の面積、ロビーの面積などのデータが示されている。これらを、満了までの耐用年限が短いものから順に並べると、次のようになる。

2018年度時点で、耐用年限を過ぎているのは、小松だけ。そのほかに10年未満はなく、伊香立(13年)、晴嵐(14年)、仰木(16年)、滋賀(同)、雄琴(18年)の6つの市民センターが、耐用年限が20年未満になっている。施設の延床面積を基に計算すると、36の市民センター全体の11㌫に当たる。しかし、残る30の市民センター(延床面積の91㌫)は、今後21年〜58年にわたって、使用可能と位置づけられている。耐用年限満了までの残り年数の平均は、29年3か月。

一方、市が市民との意見交換会などで用いた説明資料「市民センターのこれからの在り方について」では、「大津市を取り巻く環境」として、「公共施設の老朽化」を強調している。円グラフを用いて「建築後30年以上の建物の割合 61%」と、大きなサイズの文字で強調している。あたかも、市民センターの老朽化も著しく進んでいるかのようなデータが作られている。しかし、市の公共施設全体の中で、36の市民センターは、0.5パーセントに過ぎない。

説明資料の中には、市民センターだけの老朽化を示すデータは一切ない。建設時期(築年数)や、耐用年限については全く触れていない。説明資料の書き方に沿った形で、「建築後30年以上の市民センターの割合」を算出すると、「52%」となり、市全体の平均(61%)よりも、築年数が浅くなっている。

↓ 36市民センターの基本情報(満了までの耐用年限が短い順)

市民センター
建設年度 (年度)
築年数 (年)
耐用年限 (年度)
満了までの残年数
施設のキャパシティ
事務室 (㎡) ロビー (㎡) 合計(㎡) 駐車場台数(台)
小 松 1977 41 2017 -1 37 17 54 10
伊 香 立 1971 47 2031 13 44 19 63 18
晴 嵐 1972 46 2032 14 50 50 100 16
仰 木 1974 44 2034 16 51 52 103 20
滋 賀 1974 44 2034 16 56 42 98 37
雄 琴 1976 42 2036 18 40 83 123 10
堅 田 1979 39 2039 21 108 119 227 17
坂 本 1979 39 2039 21 59 48 107 40
長 等 1979 39 2039 21 32 11 43 12
上 田 上 1979 39 2039 21 40 46 86 22
大 石 1980 38 2040 22 63 33 96 17
小 野 1981 37 2041 23 60 28 88 15
瀬 田 1981 37 2041 23 110 110 220 31
葛 川 1982 36 2042 24 41 23 64 33
唐 崎 1982 36 2042 24 60 65 125 20
南 郷 1982 36 2042 24 40 61 101 16
日 吉 台 1983 35 2043 25 46 32 78 19
山 中 比 叡 平 1983 35 2043 25 32 42 74 12
逢 坂 1983 35 2043 25 50 30 80 13
中 央 1984 34 2044 26 42 76 118 8
石 山 1986 32 2046 28 46 45 91 15
和 邇 1987 31 2047 29 126 35 161 130
膳 所 1988 30 2048 30 86 100 186 25
瀬 田 南 1990 28 2050 32 49 73 122 17
瀬 田 北 1991 27 2051 33 60 75 135 14
瀬 田 東 1992 26 2052 34 59 72 131 5
真 野 北 1993 25 2053 35 63 110 173 26
仰 木 の 里 1996 22 2056 38 72 65 137 17
下 阪 本 1998 20 2058 40 70 57 127 12
木 戸 1999 19 2059 41 97 578 675 170
真 野 2004 14 2064 46 88 19 107 20
藤 尾 2007 11 2067 49 74 71 145 40
青 山 2008 10 2068 50 70 65 135 34
田 上 2012 6 2072 54 62 64 126 22
富 士 見 2013 5 2073 55 75 45 120 33
平 野 2016 2 2076 58 99 67 166 34
30.2 29.25 4785
(平均) (平均) (合計)

↓ 市が市民との意見交換会などで用いた説明資料「市民センターのこれからの在り方について」