ウオッチドッグは、前身の大津WEB新報を含め、住民に丸投げする大津市の防災体制を、東日本大震災の教訓から何度も批判してきた。防災対策は住民任せでは機能しないと、繰り返し指摘した。今回、その通りのことが起こった。

今回の台風21号の災害レベルでさえ、各々の担当課は、ほとんど動いていなかった。「民生委員がやるだろう」、「自主防災会がやるだろう」、「自治会がやるだろう」などと、他人任せの姿勢に終始し、当事者意識が欠如していた。大雨の被災地や、停電が続く地域を、職員自ら確認しようともしない。

防災は住民に任せると言いながら、今回の台風被害では、住民から上がってきた情報を重視せず、関電の情報を基に会議をしている。住民がどのような状況に置かれているかを把握せず、警戒本部を解散した。この組織は、何を警戒していたのだろうか。誰がどうやって情報を集め、分析し、判断し、最新の情報を住民に流すのか。少なくとも警戒本部は、その機能を全く果たしていなかったと言える。

大津市がまとめた「市民センター機能等のあり方」を、いま一度見てみよう。大津市は「災害時の迅速な対応を可能とするため、市民センターとと地域の防災機能は住民主体で運営することを基本とする」という項目を置いている。ところが、今回「迅速な対応」は全くできていなかった。機能する、機能しないという以前に、防災体制そのものが整っていないことが露わになった。

市民の不安が募るのは当然のことだ。「住民主体」は耳障りがよい言葉だ。しかし、防災は住民の命が関わる問題である。行政には住民の命を守る責任がある。このままでは「住民主体」は、住民自治の尊重ではなく、行政の責任逃れと同義になってしまう。大きな災害が起こったら、大津市は行政としてどう動くか。深刻な被害が出た後になって、「住民に任せていました」では済まされない。主体性をもった基本的な防災体制を構築することが先決だろう。

↓2017年4月6日付・大津WEB新報の記事