11月のとある日、ウオッチキャットは、黒い毛並みを艶々にして、大津市のピアコ淡海へ向かった。ウオッチキャットは政治家として、8年間の市政の成果を、にゃんこクラブの記者らへ披露するため、ピアコ淡海で記者会見をした。
ウオッチキャットは、集まったにゃんこクラブの記者たちに向かって、「全身全霊で尽くした。市民との約束を達成した」と話した。記者会見の前に、ウオッチキャット後援会用の「問答集」を、にゃんこクラブの記者らへ配布した。
ウオッチドッグ記者
もしもし、キャットさん。すみません。今、配られたのは、後援会向けのチラシではないですか?にゃんこクラブの記者は、キャットさんの後援会員ではないですが…。
ウオッチキャット
キャットの最大の応援部隊は、にゃんこクラブの記者たちだニャ。今から始まる質問のご参考までに配ったニャ。
もしもし、キャットさん。そもそも、どうして、ピアコ淡海で記者会見をするのですか? 市政のことなら、いつも通り、市役所で会見したほうがいいんじゃないですか?
一世一代の晴れ舞台だニャ。古びた役所より、琵琶湖の前で、会見したかったニャ。本音は、よく使っていた琵琶湖ホテルでやりたかったニャ。きれいなホテルのほうが、キャットの黒い毛並みが映えるからニャ。
もしもし、キャットさん。後援会用のチラシは受け取りましたが、ホームページにあるマニュフェストのロードマップは、配布されないのでしょうか?
キャットの部下らが作成したマニュフェストのロードマップは、細かく書いているので、記者に突っ込まれたら不都合な部分もあるニャ。それに、メディア受けするもの以外は、部下に全部丸投げしたから知らないニャ。キャットは、8年間全身全霊で、市政に尽くしたニャ。にゃんこクラブの記者たちに褒めてもらいたいニャ。
もしもし、キャットさん。キャットさんがやってきた市政についての評価って、キャットさんが自分ですることでも、にゃんこクラブの“お仲間”記者たちがすることではないですよね? 市民がすることじゃないですか?
にゃんこクラブの記者たちが、もしキャット礼賛の記事を書いてくれたら、それを読んだ市民もキャットの功績を褒めてくれるニャ。
もしもし、キャットさん。そんなことはないと思いますよ。実際は違うんじゃない?って、気づく人は気づきますって。嘘や欺瞞は、いつか市民が知ることになりますよ。
隠したいものは、全部、隠したから大丈夫だニャ。
キャットさんの政治手法は、荒っぽいと言われてますが…?
キャットの政治手法は、「創造的破壊」だニャ。
全て焼き尽くして破壊した後に何も残っていないように思いますが…。創造しないまま、政治を終えるんですか?
キャットは、政治家じゃないニャ。自分が政治家だと思ったことは一度もないニャ。8年間尽くしたから、悔いはないニャ。嫌われてもいいから、やるべきことはやってきた。将来世代のためにやってきたニャ。
公文書の破棄事件は、どうなったのですか? 保存しなければならない重要な文書を、キャットさんが爪でビリビリに破いたあの件ですが…。
しばらく、ゆっくりし、キャットにしかできない、新たな「自分探し」をしたいから、破った文書のことなど、どうでもよいニャ。礼賛記事だけをファイルして、記念に持って行くニャ。
ウオッチドッグ記者は、「ハッ」とうたた寝から覚めた。横で、キャットも丸くなって寝ていた。そういえば、似たような記者会見が、ついこの間もあったなあと思い出した。キャットは黒い毛並みだが、笑顔で会見をした人は、白っぽいスーツ姿だったような…。
「公約達成」を鵜呑みに/報道は実績を絶賛/越市長の不出馬会見/ウオッチ大津№156
↓2019年11月15日付・京都新聞