国会議員が受け取る1人当たり年間1200万円の「文書通信交通滞在費」はこれまで、国民や有識者らから度々問題視されてきた。2001年11月19日に衆院改革に関する調査会が衆院議長へ「衆議院改革」の答申を出した。その中に、「立法事務費」のほか、「文書通信交通滞在費」の使途報告書提出の義務化を求めた答申があったが、結局、実現することはなかった。

2013年には、民主党の元総務大臣が年間1,200万円の「文通費」を海外投資に流用していたことが発覚した。この時の国民やメディアからの批判を受け、2014年の衆院選では「議員の文書通信交通滞在費の使途公開」など政治資金の透明化を複数の政党が公約に掲げたが(2014年12月9日付の読売新聞を参照)、7年経過した2021年現在も全政党での透明化は実現に至っていない。

2013年1月28日付・読売新聞

民主前参院議員 議員文通費で海外投資 歳費を含め1億円送金

 民主党の前参院議員・内藤正光元総務大臣(48)が、国会議員に年間1200支給される「文書通信交通滞在費(文通費)」を海外投資に流用していたことが関係者の話でわかった。投資目的の送金は2009年までの7年間で1億円を超えていたが、この一部に文通費が充てられていた。文通費は使途限定されているが、報告や公開の責務がなく、国会議員の「第2の給与」とも言われて問題視されており、改めて制度のあり方が問われそうだ。
 国会に提出された所得等報告書などによると、1999年から09年の間、内藤氏の収入は、ほぼ議員歳費と期末手当しかなく年2000万~2400万円。税金や社会保険料を差し引いた可所分所得は1千数百万円とみられる。
 ところが、関係者によると、内藤氏は98年7月の初当選後、海外投資を行っており、金融機関が税務署に提出する「国外送金等の調書」などから、09年までの7年間に1億円以上送金していたことが判明した。年平均だと1400万円超に上り、生活費などを考慮すると、歳費と期末手当だけは賄いきれない。このため、10年末から内藤氏への税務調査で東京国税局が投資の原資を調べたところ、口座の出入金記録や本人の説明から文通費が充てられていたことが確認されたという。
(中略)
10年7月まで参院議員を2期12年務めた内藤氏は、1億4000万円以上の文通費を受け取っていた。内藤氏の事務所関係者は、「労組出身の比例選出だったため、労組の全面支援を受けており、政治活動にお金がかからなかった。文通費は本人が管理して事務所の人間には触らせず、事務所経費には使っていなかった」と話している。
 一方、内藤氏は09年までの2年間に海外投資の利益など数十万円について同国税局から申告漏れを指摘され、追徴課税された。課税対象が少額だったのは、08年秋のリーマンショック後で投資実績があがらなかったためとみられる。また、文通費は非課税のため、同国税局は具体的な流用額まで確定させなかったという。
 内藤氏は読売新聞の取材に対し、税務調査を受けたことを認め「(追徴課税で)5万円か10万円を支払った」と話したが、投資の詳細や文通費の流用については説明を拒み、文書による取材依頼にも回答がなかった。

↓衆議院ホームページ/2001年衆議院改革に関する調査会の答申

2014年12月9日付・読売新聞

[争点 14衆院選](6)政治とカネ 「透明化」党派を超えて議論(連載)

今回の衆院選では、「政治とカネ」問題への取り組みも問われる。

(中略)

ロッキード事件やリクルート事件、事務所費問題、偽装献金事件など、永田町では「政治とカネ」の問題が幾度となく繰り返されてきた。有権者には失望感が広がる。しかし、問題を指摘された複数の議員が「単純ミス」との釈明にとどまるなど、十分な説明責任を果たしたとは言えず、有権者の政治不信を助長している側面がある。
 そもそも、国会議員の関係政治団体は、政治資金規正法で監督が義務づけられているが、形式的な確認だけで、収支の適正さはチェックされていない。今回の衆院選で、複数の政党が「議員の文書通信交通滞在費の使途公開」や「会計責任者への政治家の監督責任を強化」などを公約に掲げている。政治資金の透明化に向け、党派を超えた議論が今こそ求められている。