大津市が、住民票などの証明書の発行業務を、コンビニエンスストアに委託した場合、市民が負担する手数料の半分以上が、総務省の外郭団体とコンビニへ回っていることが、取材でわかった。市は毎回の手数料だけでなく、毎年、負担金として470万円を、この団体に支払っている。市は支所機能を縮小するための代替手段として、コンビニ利用を市民へ勧めているが、市の財政負担が増加する面については全く説明していない。

市戸籍住民課によると、市民がコンビニで証明書を取得するには、マイナンバーカードが必要となる。マイナンバーカードを国全体で管理しているのは、総務省の外郭団体「地方公共団体情報システム機構」。コンビニにおける各種証明書の発行手数料は1件200円で、このうち115円が、この団体とコンビニの取り分になり、残りの85円が大津市へ入る。

一方、市役所や各支所の窓口で、証明書を取得する際の手数料は1件当たり300円。これに比べ、コンビニ利用では市民が負担する手数料は200円に減額される。しかし、市は新たにこの団体やコンビニへ経費を支払うことになるため、全体としては、逆に市の財政負担が増える可能性もある。

大津市の市民センター統廃合問題で、2月1日に公表した「実施案」によると、36のうち25の市民センターで、支所機能が縮小される。開館時間が短くなり、公共料金の取り扱いもやめ、納税証明書や戸籍、市税など各種証明書の発行もできなくなる。市は代替手段として、マイナンバーカードを使ってのコンビニでの証明書発行を提案している。

支所機能が縮小する学区の中には、山中比叡平学区のように、町の中心部から離れた場所に1軒のコンビニしかなく、高齢者世帯が多いところがある。それぞれの学区の、どの場所に何軒のコンビニがあるのか、市民にとって不便はないのかなど、市は具体的な検討を行っていない。

市戸籍住民課は、コンビニでの行政手続きを進める目的は、「市民の利便性の向上のため」と説明している。

参照:週刊現代の「マイナンバーカード」についての報道
「マイナンバー」導入から2年、暮らしが全然便利にならないワケ/2017年12月5日、ITジャーナリスト 佃 均氏

血税3兆円がムダに!? 総務官僚が引き起こしたマイナンバーという名の「人災」/2016年5月24日付、週刊現代の記事より抜粋↓

「総務省は『電子政府をつくる』としてマイナンバーの利用対象を拡大していくつもりです。これで潤うのは、特需がもたらされるIT産業だけ。今後、3兆円規模とも言われるマイナンバー市場が生まれると言われていて、関連する民間企業がどんどん増えていく。そして、それらの企業が総務官僚の天下り先候補となっていくわけです」(白鴎大学法学部教授の石村耕治氏)

実際、マイナンバーのシステムを受注した富士通、NEC、日立製作所などには、総務官僚たちがすでに天下っている。石村氏が続ける。

「ダムや道路が作りにくくなった時代に、マイナンバーはジャブジャブとカネをつぎ込める新しい公共事業になりつつある。しかも、総務官僚は『このシステムを災害に活用する』などと詭弁を並べて、今後もどんどん税金を放り込んでいくでしょう。マイナンバーは永久に工事が終わらない公共事業と化すわけです」

地方公共団体情報システム機構について/ウィキペディアより

✎まとめと解説
地方公共団体情報システム機構の前身は、財団法人「地方自治情報センター」。2003年から、住民基本台帳ネットワークシステムを運営していた。旧自治官僚の天下り先で、歴代理事長の大半は、旧自治事務次官経験者。2010年の民主党政権時代に、事業仕分けの対象とされた。2013年の自民党政権下で、地方公共団体システム機構法が成立し、2014年に、地方自治情報センターから、地方公共団体情報システム機構に名称を変えて、マイナンバーカードの導入を進めた。
「無駄事業の団体」という批判がおきたら、イメージ払拭のためか、団体の名称を変えている。自治連合会がまちづくり協議会へ名称を変えようとするやり方とよく似ている。

✎ウオッチドッグの取材
ウオッチドッグ記者は、地方公共団体情報システム機構の総務課に電話した。事情を説明すると、「取材でしたら…」といくつかたらい回しにされた後、情報化支援戦略部の企画担当(TEL:03-5214-3453)にいる広報担当者に代わった。

いくつか質問をした。
①理事長は、元銀行マンで、副理事長は、総務省の天下りOBというのは、本当かどうか?
「理事長は確かに元銀行員だが、副理事長や理事は、総務省OBというより、総務省から出向している」

※ホームページに役員らの経歴が書いている部分をあるということで、教えてもらう。
https://www.j-lis.go.jp/data/open/cnt/3/1087/1/20180727_yakuinnkeireki.pdf

②職員数は、何人か?
「200人」

③200人の職員は、ホームページに所在地として書いている全国町村議員会館にいるのか?
「全員ではない」

④前身は「地方自治情報センター」かどうか?
「間違いない」

⑤地方自治情報センターが、民主党時代の2010年に、無駄事業のひとつとして、事業仕分けの対象になっていたのは本当か?
「調べてからでないと答えられない」

⑥大津市と交わした契約書を情報公開請求したら、45日の延長となった。自治体が保有している契約書を公開するか非公開するかを判断するのに、一々お伺いを立てるような決まりがあるのか?
「担当課に確認してから、返答したい」

⑦貴団体からの返答に時間がかかって、文書開示が延長となった、と大津市は説明している。なぜ、これほど、時間がかかるのか?
「担当課に確認してから、返答したい」

⑧大津市では、コンビニでマイナンバーカードを使うと、115円を手数料として、貴団体(とコンビニ)が受け取ることになっている。この手数料は、どんな名目で受け取ることになっているのか?
「担当課に確認してから、返答したい」

⑨大津市から、貴団体へ負担金が支払われているが、その名目は何か?
「担当課に確認してから、返答したい」

⑩貴団体の予算の中に、「地方公共団体負担金収入(51億円)」とあるが、これが、各自治体から集めた負担金なのか? コンビニの手数料分は、どこの科目にあたるのか?
「担当課に確認してから、返答したい」

↓「地方公共団体情報システム機構」の2018年度の予算


最後に、先方より「差支えなければ、どうして、このようなことをお調べになっているのか教えていただけませんか?」と丁寧な質問があったので、「大津市は、コンビニでの証明書発行を進めてましてね。その関係で、貴団体関連の文書を情報公開請求したら、公開か非公開か判断するのに、大津市から、機密情報かどうかを貴団体に確認するのに45日かかるという文書が届きました。どんな機密情報があるのかと、興味を持ったんですよ」と、こちらも丁寧に返答した。という経緯で、いくつかの質問については、回答待ち状態となっている。

↓Google地図/山中にある山中比叡平学区。コンビニエンスストアは、中心部から遠く1軒のみ(赤印)。車で移動できない高齢者は、徒歩で坂道を上り下りしなければならない。

↓2018年11月18日の意見交換会で配布された「市民センターあり方検討に係る学区意見交換会」の「素案」(コンビニについて記載ある部分)

↓市民センター機能等のあり方(実施案)/支所機能に関する部分

 

次ページでは、過去に起きたマイナンバーカードについて、日経コンピューターの記事をいくつか掲載する。

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