市内36カ所にある市民センターを10カ所に統廃合する大津市の計画に対して、反対する署名集めを一部の自治連合会が始めた。しかし、自治連合会は少なくとも3年前から大津市の計画や問題点を知っていたのに関わらず、住民にほとんど説明してこなかった。なぜ今ごろになって、自治連合会は率先して住民に署名を呼び掛けるのか。ウオッチドッグが過去に入手していた調査資料と取材から、自治連合会が主導する署名活動は、住民の不満や怒りをガス抜きするための茶番劇だとわかった。

毎日新聞の1月30日付朝刊は、次のように報じている。

大津市が市内36カ所の市民センターの支所機能を10カ所に統廃合する計画に対し、同市中央学区自治連合会が反対の署名活動を行っている。安孫子邦夫会長は「計画は市民センター内にある公民館の全廃につながり、受け入れられない」と訴えている。
↓2018年1月18日付の毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20180130/ddl/k25/010/557000c

青山学区自治連合会の藤本英雄会長は、住民に対する説明文書に、中央学区の記事で用いた「統廃合は弱者直撃」の「弱者」をそのまま使い、青山学区自治連合会長名で住民の署名を集めている。説明文書の日付は2018年2月で、「青山学区自治連合会としては現行の1学区1支所体制堅持を求める」とし、集めた署名は、越直美市長宛てに提出するとしている。

こうした動きはいかにも、住民のために、自治連が先頭に立って署名活動を行っているように見える。

しかし、事実は異なる。自治連は数年前から、市民センター統廃合の詳細な計画について知り得る立場にあった。にもかかわらず、住民に対してほとんど説明してこなかった。意図的に説明を控え、問題を表面化させない意図があったことがうかがえる。

ウォッチドッグ記者が入手した資料では、2015年1月19日に、市民センター機能について協議する「大津市と大津市自治連合会の意見交換会」が行われている。さらに、「市民センター統廃合」について最初の報道がされた2015年5月以降は、大津市から自治連合会が説明を複数回受けたとする「大津市市民センター機能等の在り方検討業務に係るスケジュール」という資料も存在している。

大津市の担当職員によると、2016年12月に、大津市ホームページで「市民センター機能等あり方検討」の資料を掲載し、翌月に大津市自治連合会の定例会で説明したという。このように、自治連合会長らが市民センター統廃合の計画の詳細を把握していたことは明らかだ。

メディアが伝えるように、ここ数か月、住民の多くが市民センターの統廃合計画を知るようになり、反対の声が各地で高まってきた。そのため、不満の矛先が自治連合会や幹部に向かわないよう、火消しに走ることになった。その一つが署名活動で、まさに、その場を取り繕う茶番劇だと言える。

経緯をよく知る市民センターの支所長は2016年当時、「1年前(2015年度)に住民が本気で署名活動を始めていたら、流れが変わったかもしれない。もう、遅い。市民センターの統廃合は、ほぼ決定している」と話していた。

今年2月の市議会では、市民センターの統廃合を前提とし、モデルケースとして手を挙げた6学区に公民館運営委員会を作らせ、3月に1ヵ月ほど試験的な運営をさせるとし、約40万円の予算が設けられた。こうした状況を知っているにもかかわらず、一部の自治連合会は今年に入って、住民の声を聞くかのように署名集めに回っている。

↓大津市ホームページ/「市民センター機能等あり方検討」の資料が掲載http://www.city.otsu.lg.jp/soshiki/010/1170/g/1482126197601.html
↓大津市市民センター機能等の在り方検討業務に係るスケジュール
PDF:大津市市民センター機能等の在り方検討業務に係るスケジュール
↓2018年2月に全戸回覧した「青山学区自治連合会の反対署名」/関連資料などの添付なし