大津市の佐藤健司市長が、本庁舎が開庁した5月7日の会見の中で、大津市役所における新型コロナウイルスのクラスター(集団感染)発生について、保健所から疫学調査による中間報告書が提出されたと言及した。「職場環境」の問題が指摘され、「衛生管理の徹底」などの提言を受けたとしている。肝心の報告書は、市対策本部会議の資料に掲載されておらず、詳細は不明である。

全国各地に、大津市と同規模の中核市は60あるが、民間事業所より、対策用の備蓄品も豊富にあり、資金もあり、対策の先頭に立っているはずの役所内で、クラスター発生というのは珍しい。

佐藤市長は、4月21日(火)の記者会見で、25日(土)から12日間の全庁閉鎖について、「本庁に勤務する職員間の接触を12日間断ち、この間に健康観察を行い、感染を封じ込めることが有効である。これ以上執務を続ければ、かえって市民や事業者の皆さんへの感染リスクを高める」と説明した。しかし、佐藤市長は全庁閉鎖の間、4月28日(火)、30日(木)と、「保健所で執務」していたことが、公務日程から明らかになった。

佐藤市長は、5月7日の記者会見で「保健所からは、クラスター発生にかかる積極的疫学調査の結果について5月4日付けで中間報告をいただいております。換気が不十分など執務室の環境や物品の共用といったリスク因子が指摘され、職場環境の衛生管理の徹底などについて提言をいただきました」と話した。

ウオッチドッグは、これまでの経緯を徹底検証した。その結果、職場環境の衛生管理問題だけではなく、佐藤市長や市幹部らの「危機管理能力」の低さによる後手後手の対応が、クラスター発生の要因だとみられることがわかった。また、国の緊急時短宣言発令中、12日間も全庁閉鎖するという重要な決定は、対策本部ではなく、庁内協議で済ませていたことも明らかになった。

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大津市保健所は、大津市の所管なので、あらゆる情報やアドバイスは、市長の元にすぐに入るはず。初めての職員感染例が出た4月11日(土)以降、保健所は上部組織の大津市役所へ、どのような指導をして、市長がどう判断したのか。その部分の経緯を、今後の感染症対策のためにも、伝えてほしいですね。

これまでの経緯を徹底検証

↓参照:2020年4月14日付・ウオッチドッグ

市職員120人が自宅待機へ/庁内コロナ感染2例目/本館3階西側フロアを閉鎖/お知らせ№24

↓参照:2020年4月15日付・ウオッチドッグ

佐藤市長の新メッセージなし/大津市役所で職員3人目感染でも/ウオッチ大津№174

↓参照:2020年4月16日付・ウオッチドッグ

中核市なのに情報発信は県任せ/大津市の佐藤市長だんまり/職員コロナ感染4例目/ウオッチ大津№175

↓参照:2020年4月17日付・ウオッチドッグ

大津市、建設部35人も自宅待機に/同じフロアの100人は業務続行/職員4人目感染で/ウオッチ大津№176

4月17日(金)、さらに2つの課で職員の感染が拡大した。大津市は、トイレや机など共有部分を消毒した後すぐ、本館4階西側フロアの職員ら100人の業務を継続させようとしていた。17日時点で、100人は出勤していた。夕方になると、今度は、この100人を含めた140人を、20日から自宅待機にするとした。市の対応は、朝令暮改が続いた。そして、3階、4階でクラスター発生しているのに、上の階の5階に、一部の課を移し、窓口業務を継続させようとする不可解な対応も続いた。

こうした緊急事態の情報は全て、人事課が発信していた。佐藤市長も、危機・防災対策課も、秘書課も、広報課も、何の情報も発していなかった。人事課に責任を押し付け、出来るだけ、大ごとにならないように、役所の内々の問題として扱おうとしているようにみえた。この時期の保健所の対応も不透明だった。

17日に対策本部会議が開かれたが、どのようなことが協議されたのか、配布資料の掲載どころか、お知らせも、市ホームページになかった。

4月に行われた対策会議は、17日(金)が最後だった。

2回目の「市長メッセージ」も、17日に市ホームページに掲載されたが、役所内のクラスター発生のことよりも、政府の「緊急事態宣言」が全国へ拡大されたことが中心だった。

人事課は18日(土)、本館西側フロア3階の職員140人を、20日(月)から自宅待機にすると発表した。14日(火)から自宅待機中の3階の職員は、120人だったので、3階、4階合わせて260人が自宅待機となった。この時点でも、同じ本館西側フロア1階と5階は、そのまま業務を継続していた。大勢の市民も来庁していた。

佐藤市長は、市ホームページで、役所内クラスター発生について何も語らなかった。

↓参照:2020年4月18日付・ウオッチドッグ

20日から140人自宅待機へ/「役所クラスター発生」の可能性/対策は朝令暮改/佐藤市長、ようやく言及/ウオッチ大津№178

↓2020年4月21日付・ウオッチドッグ

前代未聞! トップが逃げる/佐藤市長と幹部ら も自宅待機へ/4/25〜5/6 職員1,200人/各支所と保健所は勤務続行/ウオッチ大津№181

市職員の感染者が11人まで増え続け、21日(火)になると、ようやく佐藤市長が記者会見を開き、庁内クラスターについて言及した。4月25日(土)から5月6日(水)までの本庁舎全部(本館だけでなく、新館、別館も)の閉鎖を決めた。対策本部の会議(4月17日が最後)ではなく、参加者不明の庁内協議で、全庁閉鎖を決めている。このとき、保健所から、どのような指導があったのか、どのような話し合いが行われたのかは、不明のままである。

全庁閉鎖について佐藤市長が会見した21日当日、市ホームページに「市長メッセージ」は出ていない。「記者会見」の映像も、出していない。つまり、佐藤市長は日頃「市民が主役」と言いながら、肝心なときに、市民のことは眼中になかったと言える。

25日からは全庁閉鎖するとしながら、22日(水)〜24日(金)の3日間は、通常業務を続けたままで、窓口は開いていた。市民の来庁は続いていた。やはり、「主役」であるはずの市民はないがしろにされた。

本庁閉鎖を経て、5月7日に再開すると、佐藤市長は、会見で「本日(7日)に、新型コロナウイルス感染症対策本部を開きました」と話した。

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本当に、市民のことを考えての全庁閉鎖だったのかなあ。市民の感染リスクを本当に考えていたのなら、4月22日(水)から24日(金)まで、市民の来庁をストップしていたはずでしょ。少なくとも市ホームページで、積極的にお知らせを出すはずでしょう。まもなく全庁閉鎖せねばならないほどの環境なのに、それも知らずに市民は次々と市役所を訪れた。

当初、内々の問題として済ませようとしていたけど、後手後手対応のせいで、拡大してしまった。佐藤市長は「自分も感染したらどうしようと」と急に不安になり、緻密な対策をとる余裕もなかった。市民を置いて、逃げ出した。そんなところが真相なんじゃないのー。

↓大津市新型コロナウイルス感染症対策本部は、4月25日から5月6日までの「本庁舎の閉鎖」を決めていない。

↓市ホームページ「市長メッセージ」は、4月8日(国の宣言後)、17日(国の宣言後)、5月7日(自宅待機後)の3回のみ。全庁閉鎖を決めた4月21日当日、「市長メッセージ」発信なし。

全庁閉鎖中、佐藤市長は保健所で執務?

大津市秘書課は、4月25日の本庁舎閉鎖前に、23日以降の「市長の公務日程」を更新せずに、自宅待機に入った。公務日程は、4月15日から更新していなかった。

5月7日に大津市役所の本庁舎が開庁したが、それでもなお、丸一日、市ホームページの「公務日程」を更新しなかった。

10日に市ホームページを確認すると、市長の「公務日程」が更新されていたのに気づいた。23日から30日までの「公務日程」が出ていた。新事実がいくつか明らかになった。

↓更新されてた23日から30日までの市長の「公務日程」

本庁舎内の感染拡大防止のために、25日(土)から本庁舎を全館閉鎖すると、記者会見で発表しておきながら、24日(金)に本庁舎で「マスク寄附の贈呈式」をやっていた。

27日(月)は、「県と各市町間でのWEB意見交換会」(県庁)としている。4月25日から、感染拡大防止のために、自宅待機に入る大津市長が、27日(月)に滋賀県庁へ行ったのか、自宅から「web意見交換会」したのか、不明。この書き方では、どこかへ行って「仕事した」感を演出している。

28日(火)、30日(木)は、「庁内執務(保健所)」としている。なぜ、感染拡大防止のため、自宅待機に入っている大津市長が、最前線の保健所にわざわざ行き、執務をしたのだろうか? 大津市保健所は、大津市役所の本庁舎と別の場所、「明日都」浜大津にある。佐藤市長がもし感染していたら、明日都の職員らにも感染を広げるリスクがあった。

21日(火)の記者会見で、佐藤市長は、記者からの質問に、「自宅が原則で、必要に応じて当庁(本庁舎)する」と説明してた。1週間後に、明日都にある「保健所」で仕事をするとは、説明していなかった。

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この公務日程が、市長の危機管理能力のなさを完璧に表しています。もし、この日程が事実であれば、保健所は、市長だけ特別扱いしたことになります。感染拡大防止のため、市長を含め市職員1,200人が「自宅待機」するんじゃないですかー? 保健所は本庁職員の来訪を拒否すべきでした。

仕事をするのであれば、自宅で「オンライン会議」などのオンライン執務や、消毒後の本庁舎の新館(本館と離れている)の危機・防災対策室や、中消防署がある別館(本館と一番離れている)などで、執務することができたはずです。何も保健所に行く必要はありません。

↓2020年4月21日の記者会見(抜粋)