新型コロナウイルス感染症の影響で、生活困窮者が増加している社会状況の下、大津市が市自治連合会へ、300万円の運営補助金を4月1日付で交付決定していたことが情報公開請求でわかった。市自治連の運営補助金は、定例会の会場代(ホテル使用代)、研修旅行、各種大会参加費などを補助対象としている。

情報公開請求で入手した「2020年大津市自治連合会の運営補助金」の交付決定通知書によると、4月1日の通知だった。4月1日時点で、市自治連は、新年度の運営について議決する総会を開催していなかったが、市は、自治連との慣れ合いで、300万円の運営補助金を、総会議決前に支出していた。

交付申請書の添付資料では、新年度の事業計画書や歳入歳出予算書などを添付するとしているが、総会もしていないのに、「事業計画書」や「歳入歳出予算書」は、どのようなものが提出され、いつ、決定されたのか不明である。

市自治連の300万円の運営補助金については、これまで、ウオッチドッグが度々、問題を指摘してきた。例えば、2018年8月23日付・ウオッチ大津№61では、運営補助金の交付基準に記載していない事務員の人件費に充てていることから、「運営交付基準に違反している」と指摘した。

すると、報道後に、運営交付基準を改定して「事務員の人件費」を入れ込んだ。2020年4月1日改定版では、「人件費」が交付基準に含まれている。支出根拠となる「運営交付基準」すら、「知られてしまったから変える」という、そのとき、そのときの市と自治連合会の都合で変わる、いい加減な規定と運営になっている。

運営補助金の交付基準にあるように、この300万円は、総会や会議代(琵琶湖ホテルなどでの使用代)、視察研修(毎年恒例の温泉旅行)、各種大会参加などの事業費(各地方の市自治連会長らが集まった式典や大会)などに使用されている。市自治連の活動といっても、研修旅行記念式典ホテルや市役所での会議研修旅行記念式典ホテルや市役所での会議を繰り返しているだけ。研修を開催しても報告書もなく、ホームページ上で研修の成果を公開してるわけでもない。何をしているのか、不明のままだ。一応、市自治連の三役や理事として、各地域の自治連会長らの名前が連ねているが、事務は補助金で雇用した事務員に丸投げ。それ以外は、市がほとんどお膳立てしている自主性・自立性のない団体だ。

このご時世なのに、活動を伝えるホームページすらない。コロナ禍では、市自治連は全く存在感がない。活動休止状態になっている。市自治連とべったりの市議会の老舗会派、湖誠会の市議らが、越直美市政時代、降って湧いたように「デジタル革命」を市議会で連呼していたが、仲良しの市自治連は「デジタル革命」とは無縁のままだ。

大津市は、「住民福祉の増進と地域社会の発展のため」に、市自治連へ毎年、運営補助金を出し続けているが、どれだけ住民福祉の増進に、役立っているのか、活動内容を検証していない。それなのに、市自治連の総会後の宴会だけには、各部の部長らが参加していた経緯がある。ズブズブの慣れ合い関係で、不必要な補助金を市自治連の関係団体のために、しこたま支出してきた。

市職員と自治連会長らの宴会については、市民オンブズマンから、「慣れ合い関係」を批判され、食糧費裁判などで問題提起されたこともあった。その度に、一部を改善し、反省したと見せかけながら、実態は、昭和時代から延々と続く慣行を続けてきた。

これまで、市職員は、総会が行われる琵琶湖ホテルの会場にいながら、市自治連の総会資料さえ、受け取らなかった(ことにしている)。活動実態がわかる資料を受け取らないのに、市自治連へ300万円の運営補助金を出し続けてきた。民間人の自治連の事務員を、自治協働課の部署内に在籍させ、密着した関係でいながら、活動内容がわかる自治連の総会資料さえ、受け取らず、公文書として保管していない。

新型コロナ禍で、困窮している市民らがいる一方で、自治会の地域ボス連が、市から毎年、300万円の運営補助金を受け取り、研修旅行という名の温泉旅行、ホテルでの会議、内輪だけの大々的な記念式典、自治連創設70周年の大式典パーティ(2024年)に向けての準備金(余剰金から特別会計への積み立て)などを、これからも延々と続けようとしている。

2020年4月1日・大津市から市自治連合会へ支出する300万円の運営補助金の交付決定書

大半が事務員の人件費へ

2019年度の自治連合会の歳入歳出決算書によると、断トツ経費がかかっているのが、事務員の人件費。市自治連の役員には、事務局長や会計担当者がいるのに、300万円の運営補助金から、わざわざ人件費250万円を支出している。地域の単位自治会の役員などは、仕事のかたわら皆、ボランティアで活動をしているが、上部組織の市自治連は、事務員を補助金で雇い、役員らは何をしているのか。

今回の決算書で、特に笑えるのが、市議会のように、「補正後予算額」などという項目をいつのまにか追加したことだ。過去の自治連の「歳入歳出決算書」には、「補正後予算額」という項目はなかった。何でもかんでも、市議会議員らがやっていることの、マネをしたい体質がにじみ出ている。

2019年度の歳入歳出予算額を見ると、当初予算額で、50万円としていた研修費を、補正後予算額では、70万円増額した120万円になっており、実績では100万円だった。それ以外の金額はほとんど、大きな変動がなかった。それなのに、「補正後予算額」とは…。

2019年度大津市自治連合会の歳入歳出決算書

宴会、式典、旅行… 10年前と変わらぬ活動内容

ウオッチドッグは、2009年度分から2019年度分まで、大津市自治連合会の運営補助金の歳入歳出決算書を精査し続けてきた。何がどう変わったのか、何をしようとしているのか、手にとるようにわかる。

その中でも、特に驚いた2011年度の歳入歳出決算書を大津WEB新報の記事から紹介する。2019年度の歳入歳出決算書と比較してみよう。

 大津市自治連合会が、大津市との宴会で、「給仕費」として35万円を支払っていたことが、情報公開制度で開示された資料から明らかになった。市職員によると「給仕費」とは外部から呼んだ「コンパニオン代」。明細書が添付されていないため、具体的な内容は分からない。 

開示された2011年度の「歳入歳出決算書」によると、歳出(支出)の総額は約543万円。このうち全体の約5分の1に当たる約104万円を、「総会、懇談会経費」として支出。その中の35万円が「給仕費=コンパニオン代」に回されていた。

これらの原資は、大津市からの補助金300万円と、自治会員の会費。「給仕費」は事務局の大津市自治協働課の職員が、メモ書きしたとみられる。したがって、大津市も事実上、「コンパニオン代」の支出を認識していたと言える。
過去の担当職員に聞くと、「春の懇親会か秋の懇親会のことか記憶が定かでない。市ではなく大津市自治連合会が呼んだと思う。思い出せない」と話している。

2015年7月7日付・大津WEB新報より
2011年度大津市自治連合会の歳入歳出決算書

2011年度の歳入歳出決算書によると、会議室使用料30万円(琵琶湖ホテルの会場代など)、会議費100万円。会議代として、会場代を合わせ年間130万円を使っており、そのうち、35万円が給仕費(コンパニオン代)だった。功労者記念式典(長年、自治会長をやっていた人物を内輪で表彰)に、94万円。春季と秋季の研修旅行(紅葉の美しい季節に各地の温泉巡り)に、160万円など。

市と自治連の関係者だけの旅行と式典に、公金ズブズブ支出の実態だった。2019年度も、金額の減少はあるが、活動内容は変わっていない。市補助金+自治会費を使い、コンパニオンを呼ぶことだけは、大津WEB新報でしつこく追及したからやめたようだが。これが、昭和から延々と続いている市自治連の活動内容だ。2011年当時の大津市長は、元衆議院議員の目片信氏。

2011年当時、市自治協働課の職員は、市自治連の事務局として、業務時間内に、民間の任意団体の市自治連の事務作業をしていた。2012年に越直美市長が就任した後、事務作業を市職員が行わないことになり、2013年に自治協働課は、市自治連の事務局から離れた。

この切り離しのとき、大津市は、市自治連に対して、毅然とした対応で自主運営を促すことができたのに、しなかった。結局、自治連の事務員を市補助金で雇い、個人情報の宝庫でもある市役所の部署内で、民間人が事務作業することを許可した。行政改革を標榜していた越市政だったが、市自治連に対しては、毅然とした態度をとらず、ずっと甘かった。

【解説】運営補助金の返還を求む/自治会活動は自治会費で

大津市が、昭和の化石のような団体だけを優遇し続ける施策を続ける限り、地域発展どころか、このままだと時代に取り残される。自治会の加入率が低下している現状、自治会活動は、自治会員から集めた自治会費だけで、身の丈に合った運営をするべきだろう。地域に必要な事業を構想したら、その都度、さまざまな団体が、それぞれ補助金を申請し、厳正な審査を経てから、受け取るべきだろう。地域住民のため、真摯な活動をする団体がどこなのかを見極め、そうした団体をきちんと支援できるような仕組み作りが、行政側に求められる。

内輪の式典や旅行しかしていない一部の団体へ、財政的に厳しい社会状況下でも、補助金を出し続ける佐藤市長は不甲斐ない。どこが「市民主役」なのか。

旧態依然とした活動内容、不透明な運営実態、そして、長年、同じ顔触れが牛耳っている組織に、果たして、若い人が参加したいと思うだろうか。市と自治連は、いつまでこんなことを続けるのか。公金300万円を、熱意ある若い人たちが運営している草の根の団体などへの地域活動費に使ってもらった方がよほど、世のため、市民のためになる。

大津市自治連合会には、運営補助金300万円を市へ返還してほしい。コロナ禍の年にまで、公金300万円を受け取らなくても、特別会計に積立てができるほど、たっぷりカネを持っているだろうに。

交付申請の様式に、「大津市自治連合会 運営補助金事業中止(廃止)承認申請書」も存在していた。今年こそ、これを使ってほしかった。

2017年度・大津市自治連合会の運営補助金交付基準/この時、人件費は、対象経費に含まれていなかった。
2019年度・大津市自治連合会の運営補助金交付基準/一部改正して、対象経費に人件費を加えた。
大津市自治連合会の運営補助事業中止(廃止)承認申請書