大津市が2021年度から3年間、約3億円の予算を投入し、大石学区に大規模なグラウンドゴルフ場(28,900㎡)の設置事業を進めていることが、ウオッチドッグ独自の調査で明らかになった。計画を大幅に拡張し、当初予算1.8億円を3億円に増額した。市の説明では、11年前の2010年の請願書を根拠として計画が始まったという。請願書は任意団体「大津市グラウンドゴルフ協会」の「グラウンドゴルフ場設置促進委員会」からの要望だが、市協会の会員(南部)は、2020年6月時点で365人にとどまっている。
2010年の目片信市政時代に、グラウンドゴルフ場の設置の請願書が採択された。しかし、越直美市政(2012年1月~2020年1月)になると、巨大なグラウンドゴルフ場を設置する計画は、伊香立学区にあった候補地が無許可造成の土地であることが発覚したため、いったんは頓挫した。
■24ホール→32ホール、1.8億円→3億円
その後、大石学区の淀町最終処分場跡地(大石淀3丁目)を一つの候補地にする代替案を、市側が提示した。大津市の厳しい財政状況もあり、地元と協議を重ね、「3コース24ホール」のグラウンドゴルフ場を、大石学区の淀町最終処分場の埋め立て地(※産業廃棄物対策課の意見書によると、安定化が完了していないので2021年時点でも跡地とは表現しないということ)に2020年に造成する計画で、地元と合意した。2018年には実施設計まで進み、2020年から造成工事を進める段階まできていた。しかし、佐藤健司市長の就任直後の2020年3月頃から、「3コース24ホール」を「4コース32ホール」に拡張し、予算も約1億8,000万円から約3億円に跳ね上がる計画が浮上した。
市担当者の説明では、2021年、22年に歩道整備などを含んだ造成工事に約2億5,000万円、23年には東屋やトイレの建設工事(計画案では約2,500万円)を予定しており、諸々の設計費や工事費を含めると総額約3億円ほどかかるという。
■佐藤市長「この金額で大丈夫か」
佐藤健司市長は、2020年4月10日(国内初の緊急事態宣言の発令中)の市内部の協議で、大石淀グラウンドゴルフ場の設置について「この金額で大丈夫か。中途半端はよくない」と大盤振る舞いを示唆する発言をしていた。この協議の後、市長の「鶴の一声」で後押しされた、大幅な増額予算を実施するため、2020年5月22日に市担当者らが、大石学区淀町自治会館に赴き、地元担当者らに、「1コース増やした4コースで整備できないか検討をしている」と説明している。
そして、2020年6月補正予算案に、修正分の実施設計予算1,528万円を新たに追加した。2018年に約900万円で完了していた実施設計に加え、2020年の修正完了分1,400万円(1528万円の予算だったが約1,400万円で実施設計完了)が上乗せされ、約2,300万円が、拡張した大石淀グラウンドゴルフ場の実施設計の総額となった。
■2010年に5会派が請願
元々、このグラウンドゴルフ場の造成計画は、伊香立学区に巨大な64ホールのグラウンドゴルフ場(32ホール2面、約2万㎡)を設置する要望で、2010年に市グランドゴルフ協会のグラウンドゴルフ場設置促進委員会の幹部らが動き出した。中心となったのは、促進委員会の委員長(伊香立在住)と、副委員長(大津市元建設部長)らだった。
市協会のグラウンドゴルフ場設置促進委員会は「グラウンドゴルフ場設置に関する請願書」を、2010年8月に大津市議会へ提出した。この請願書の紹介議員は、伊香立出身の泉恒彦市議(当時)や、湖誠会の幹事長だった北林肇市議(当時。議員辞職後は、市体協会長に2013年から2015年まで就任)ら5人の市議だった。
紹介議員として名を連ねた5人の市議は、自民党系、民主党系、共産党、公明党らのほぼ全会派の幹事長だった。5会派の幹事長らが請願書に名前を連ねるという珍しい状況の中、この請願は2010年9月の市議会で採択された。2010年当時の大津市議会議長は、湖誠会の竹内照夫市議(湖誠会、現幹事長)で、副議長は、同じく湖誠会の佐藤健司市議(現市長)だった。
↓大津市議会ホームページ/歴代議長、副議長より。
2010年(平成22年5月)~11年(平成22年4月)までの議長は、竹内照夫市議、2010年(平成22年5月)~11年(平成23年1月)までの副議長は佐藤健司市議(当時)。
この請願書が採択された後、目片信市長(当時)は、2011年2月の定例会で、グラウンドゴルフ場の設置に関する泉市議の質問に対して、「非常に課題が多い」ことや「現段階では、伊香立公園サッカー場や既存の公園施設や市民運動広場を活用してほしい」と、設置には消極的な答弁をしていた。
■当初計画の候補地は無許可造成地
2012年に越直美市長が就任すると、市グラウンドゴルフ協会の会長とグラウンドゴルフ場設置促進委員会の委員長は、「グラウンドゴルフ場設置に関する要望書」を提出したりと積極的に動いていた。そのような状況の中、2013年に、市協会が求めていた伊香立北在地にあるグラウンドゴルフ場の設置候補地が、無許可造成地であったことが市側の調査で発覚した。無許可の不法な土地に設置できないということで、2014年に伊香立での造成計画は白紙撤回となり、設置促進委員会も解散となった。候補地が無許可造成地であったことが発覚した後の市側との協議の場で、市グラウンドゴルフ協会の会長は、「その場所について白紙にしてほしい」ことや「2010年の請願についてはそのままでお願いしたい」と懇願した。そこで市側は、大石学区の淀町最終処分場跡地にグラウンドゴルフ場を設置するという代替案を、市グラウンドゴルフ協会側に提案した。
この話は元々、市グラウンドゴルフ協会のグラウンドゴルフ場設置促進委員会から、伊香立学区にある土地を候補地にしてグラウンドゴルフ場を設置してほしいという要望から始まった。しかし、2015年には大石学区からの地元要望に変遷し、さらに一時は、大津市と大石学区が交わした大津クリーンセンターの覚書が失効される2020年3月以降でも、淀グラウンドゴルフ場の造成費用として約8,000万円を地区環境整備事業(迷惑料)の直接事業から捻出しようと市内部で画策していた。ウオッチドッグが、佐藤市長発信の画策に関する公文書を入手し、疑問点を市施設整備課へ取材すると、迷惑料での予算計上は断念していたことがわかった。
■佐藤市政で3億円へと大幅増額
越市政時代、市は厳しい財政事情を大石学区側に説明し、24ホールで造成することに地元関係者らの同意をこぎつけ、実施設計まで進み、設計事務所に支払いも済んでいた。しかし、2020年1月に佐藤健司氏(元市議、元県議)が市長に就任した後、実施設計が完了していたにもかかわらず、さらに修正設計分1,528万円を、2020年6月補正予算で追加計上し、総額3億円の巨大グラウンドゴルフ場の造成計画へと突き進んだ。
佐藤市長は、2010年当時は湖誠会の市議で、市議会の副議長を務めていた。そして議長は、現湖誠会幹事長の竹内照夫市議だった。伊香立学区の泉市議(当時)や各会派の幹事長らが中心となり、巨大なグラウンドゴルフ場設置の請願書を採択しながら、「候補地が無許可造成地だった」という、市と市議会のお粗末な調査実態が、市民に説明されることはなかった。大津市グラウンドゴルフ協会・設置促進委員会の副委員長だった元建設部長が、無許可造成地ということを知りながら、市側と協議していたのかも明らかにされていない。
■本当に必要? 佐藤市長は説明を
リーマンショック後の2010年の大不況時に、市協会の会員らが欲した巨大なグラウンドゴルフ場が、大津市に必要かどうかを検証した公文書は見当たらなかった。そして、2020年から新型コロナウイルス感染症の影響で、市民生活が厳しい状況が続いている中、巨大なグラウンドゴルフ場を拡張して造成することが経済活性化に繋がるのか? 他都市からの誘客をどれぐらい見込んでいるのか? 年間の維持費はどれぐらいかかるのか? 誰が運営をするのか? グラウンドゴルフ場に関する文書を情報公開請求したが、こうした資料やデータは見当たらなかった。佐藤市長には、2020年に大石淀グラウンドゴルフ場の造成を拡張した理由を市民に説明する責任がある。
↓大石淀グランドゴルフ場の修正スケジュールと説明の記録