大津市内に湖南有線放送の電柱が多数放置されている問題をめぐり、一部の大手メディアの報道とは異なり、市に対し学区自治連会長が撤去を要望した事実はなかったことが、ウオッチドッグの取材で明らかになった。市路線課の説明によると、4月に電柱を撤去したのは、2月25日に住民から危険な電柱があるという通報があったためで、自治連からの要望に基づいたものではないという。

2019年5月5日に報道された朝日新聞の湖南有線放送の記事で、「(大津)市に何度も撤去の要望をした」とコメントした瀬田学区自治連合会長だが、自治連合会から撤去要望が来ていなかったことが、市への取材でわかった。4月に撤去した電柱は、市がすぐ撤去に動いたという。

朝日新聞(2019年5月5日付)は、瀬田学区自治連合会の内田一豊会長の「木柱は根腐れはしていないが、もう10年はもたない」、「柱に加え、電線も撤去しないといけない」などのコメントを掲載。1本の電柱が「内田会長らが市に何度も撤去を要望し、4月上旬にようやく撤去されたという」と報じている。

「木柱は根腐れはしていないが、もう10年はもたない」。大江地区を含む瀬田学区の内田一豊・自治連合会長(79)は不安な表情を浮かべた。木柱の電線は道を挟んで向かいの倉庫や住宅につながっている。「柱に加え、電線も撤去しないといけない」と内田会長。
 5分ほど歩くと、瀬田小学校の通学路に出た。車がすれ違いできないほど狭い。緑色に塗装された歩道上にも、つい最近まで高さ10メートル近い湖南有線の電柱が残され、子どもたちは電柱をよけて車道にはみ出て通学していたという。内田会長らが市に何度も撤去を要望し、4月上旬にようやく撤去されたという。

2019年5月5日付朝日新聞デジタルより。
https://www.asahi.com/articles/ASM3Z5JJ1M3ZPTJB00C.html

朝日新聞の記事は、内田会長らの働きで4月上旬に、高さ10メートルもある電柱がようやく撤去されたとしている。しかし、大津市の説明によると、事実は異なる。ウオッチドッグの取材に対し路政課は、「今年2月25日に住民から、撤去してほしいと電話があったので、すぐ撤去に動いた」とコメントしている。

朝日新聞の報道によると、内田会長はこれまで市に何度も撤去を要望したとしている。ところが、これもウオッチドッグの取材結果とは食い違っている。昨秋、ウオッチドッグが関係課に取材した際、「年に何回か、住民の方から問い合わせ電話がくる」という説明はあったが、自治連合会から何度も要望が来ているという説明はまったくなかった。

内田会長が瀬田学区の自治連合会の会長に就任したのは、今から12年前の2007年。これまで、地元の大江地区に残されている約150本の電柱を撤去してほしいという要望を、市農水課や路政課が受け取った記録はない。

内田会長は2008年から2013年まで、大津市自治連合会の副会長、2014年から2015年まで、大津市自治連合会長に就任している。その間、湖南有線放送の放置電柱の経緯を熟知し、要望を出そうと思えば、いくらでもできた立場にある。それだけに、朝日新聞記者の取材に対し、内田会長が放置された電柱を前に「不安な表情を浮かべた」という記述には驚かされる。

大津市自治連合会や学区自治連合会は、大津市から多額の補助金を受け取っている任意団体である。ウオッチドッグがこれまで何度も報じてきたように、大津市はこうした団体と幹部を特別扱いしてきた。なかでも内田会長は、大津市政において“大物”である。

例えば、ウオッチドッグは、琵琶湖市民清掃の過去の取材で、内田会長の瀬田学区について、市が領収書をチェックすることなく、電話で確認するだけで公金支出していた事実を掴んでいる。さらに、市役所内で環境部の政策監が平身低頭で、内田会長へお伺いをたてている姿も目撃している。内田会長が務めた大津市自治連合会の60周年記念式典(2014年10月)は、公金をふんだんに使い琵琶湖ホテルで盛大に催された。大津市はこれまで、内田会長らの大津市自治連合会へ、運営補助金を含め、大小の協力を惜しまなかった。

大津市は危険電柱の実態や組合の内幕を知りながら、2011年に滋賀県へ電柱問題の責任転嫁を図った。当時の市長は目片信氏(在任期間は、2004年から2012年の8年間)。その目方氏と、内田氏は親族関係にある。

ウオッチドッグの参照記事
↓2019年1月28日付

1,000本超の電柱が放置/住民から「腐って危険」指摘も/電線は全長97㌔/県・大津市は責任押し付け合い/旧湖南有線放送/ウオッチ滋賀№20

↓2019年5月7日付

代表理事は元市議・元県職員/県と市が責任追及せず/市は関係文書を大量廃棄/湖南有線放送問題/ウオッチ滋賀№22