大津市内で不要になった1,000本超の有線放送用の電柱が長年、放置されてきた問題について、地元の議会では関心が薄いことが明らかになった。2001年から現在までの17年間、滋賀県議会での質問はゼロ、市民の身近な自治体を監視する大津市議会では、同じ期間に本会議で質問した市議は2人だけだった。

◆市「計画的に対応」→「撤去は考えていない」

大津市議会では、湖南有線放送農業協同組合が業務を休止した2001年から17年間に、本会議で質問したのは、2人だけだった。2001年6月の本会議で、初田茂議市議(市民ネット21)の質問に、大津市は「防災上、問題もありますので、計画的に対応していきたい」という回答をしていた。しかし、2014年6月の本会議では、黄野瀬明子市議(共産党)の質問に「土地所有者の自己責任により処理していただくことが民地の場合適切ではないかというふうに考え及んでいるところでございます」、「市のほうで撤去するということについては考えておりません」と、市で撤去する考えがないという姿勢に変わった。この回答から4年間、関連の質問をした議員はいない。市が何も対応しないのを市議会が容認した形になっている。

◆市議の質問と市側の答弁

議員名
(敬称略)
日付 議員の質問(要旨) 大津市の答弁(要旨)
初田茂議 (市民ネット21) 本会議
(2001年6月12日)
加入者がいないで放置されている架空線や加入者の家への引き込み線が軒下で外され、残った通信線が電柱に巻きつけられているような光景を見かけます。古くなった電柱は倒壊し道路をふさぐことも考えられます。また、町の美化の観点からも早急に撤去されるようお願いします。 藤崎聡 産業振興部長
本市といたしましては、今後事業廃止に向けましての手続きをあわせ、議員御指摘の電柱の撤去につきましても防災上問題もありますので、計画的に対応してまいりたいと、このように考えております。
黄野瀬明子
(共産党)
本会議
(2014年6月9日)
一つ目に、所有者のなくなった構造物の管理について伺います。
放置された1,164本の電柱が通行の妨げになっていないか、腐食、倒壊など安全面からは問題はないのか、また道路占有料はどうなっているのかなど、調査し、管理すべき責任は誰にあるのか、伺います。
二つ目の質問です。撤去することについて伺います。
全国的に所有者のなくなった空き家の管理が問題にもなっていましたが、これも同様の事例ではないかと思います。空き家の問題と同様に、自治体が撤去して持ち主に費用請求し、持ち主がいない場合は自治体の負担で撤去する以外に対処のしようがないと思います。大津市の負担において撤去すべきと考えますが、見解を伺います。
若園龍二 建設部長
組合は既に解散されており、責任を問うことの可否につきまして今後調査してまいります。
また、道路占用料につきましても、放置電柱であることから徴収しておりません。次に、撤去することについてでありますが、建設部が所管する道路敷内におきましては、道路法に基づき、(中略)緊急的に撤去を要する箇所については速やかに道路管理者が撤去を行っているところです。
黄野瀬明子
(共産党)
本会議
(2014年6月9日)
大津市は2011年6月に残された電柱の実態調査を行っておられます。そのときはまだ湖南有線が解散をしていない時期でありましたし、その時点で大津市が実態調査をしたというのは、湖南有線放送が行政サービスの一環だという認識で、この電柱については大津市にも管理責任があるというふうに思ったから調査を行ったのではないかというふうに思うんですけれども、どういう根拠で大津市がこのときに実態調査を行ったのかという点についてお伺いしたいと思います。

滋賀県はこの要望書の回答として、電柱の対応についてはどこに責任があるというふうに判断しているんでしょうか。湖南有線放送農業協同組合を管理監督する滋賀県の責任はないのかということについてお聞きをしたいと思います。

井上敏 産業観光部長
平成13年(2001年)4月には組合員の減少により休業となり、電柱が放置状態に至ったということでございます。(中略)同組合の指導監督官庁でございます滋賀県農政課との業務上の関連がございます大津市農林水産課が平成21年12月から実態調査を行いました。
井上敏 産業観光部長
平成23年(2011年)6月に本市ではこうした調査結果を踏まえて、指導監督官庁である滋賀県に対して電柱の撤去要望、適正な維持管理について要望を出させていただきましたが、回答なく、その後県は同組合に対し農業協同組合法に基づく解散命令を出し、同年10月に組合が解散したということでございます。(中略)組合の実態のない現在、土地所有者の自己責任により処理していただくことが民地の場合適切ではないかというふうに考え及んでいるところでございます。
黄野瀬明子
(共産党)
本会議
(2014年6月9日)
大津市がこれまで危険だという判断であれば撤去をされてきた経緯もありますし、そういった判断で、先ほど法的に処理するのは難しいというふうにおっしゃったんですけれども、そういう危険なものであれば大津市が対応するということでありますか。 井上敏 産業観光部長
道路法に基づく道路の安全の確保のために大津市として動くことはできますけれども、例えば民地に所在するような電柱につきましては、いわゆる民地の土砂崩壊と同様、民地の中で土地所有者の責任で処理をしていただくべきと、現状では大津市としてそれしか言えないという状況でございます。
若園龍二 建設部長
(中略)緊急性があるものについて撤去をしているということでございますので、それ以外のものについては、責任の所在がはっきりするまで市のほうで撤去するということにつきましては考えておりません。

◆2011年、県が組合に解散命令/嘉田由紀子知事(当時)

問題になっている電柱は、湖南有線放送農業協同組合が、1972年(昭和47年)から2001年(平成13年)までに管理していた有線放送の電柱。組合が有線放送の事業を休止してから8年後の2011年10月に、嘉田由紀子知事(当時)が解散命令を出した。

◆清算手続き完了せず、電柱・電線は残る

解散命令を受けた組合は、清算手続きを完了させなかった。そのため、組合は、今でも法人格を残した形となっている。瀬田や、田上、上田上地域など広範囲にある電柱・電線の撤去費用は、組合の財産から充てられることがなかった。かつて、公共インフラ設備である有線放送を運営していた団体に、滋賀県や大津市は密接に関わってきたが、不透明なまま組合は解散となった。

◆県議会で質問なし = 県の責任問わず

2001年から現在まで、滋賀県議会の会議録を、「湖南有線放送」、「電柱撤去」、「有線放送」のキーワードで検索しても、該当する質疑は見当たらない。嘉田元知事が解散命令を出した2011年の年でさえ、県議の誰1人この問題について、質問をしていなかった。このため、県がこの問題についてどのような責任があるのか、どういう対応をすべきなのか、問われないままになっている。

↓滋賀県議会ホームページの「会議録・検索」
http://www.shigaken-gikai.jp/voices/g08v_search.asp

次ページでは、大津市議会ホームページで「湖南有線放送」のワードを検索してわかった大津市と市議らの質疑やりとりを参考までに全掲載する。本会議だけでなく、生活産業常任委員会のやりとりを含めている。質問した市議は、本会議2人を含め、計4人。次ページへ→

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