約12年服役した元看護助手の西山美香さんが、再審で3月31日に大津地裁から無罪判決を言い渡され、メディア各社が報道した。報道では、滋賀県警や大津地検を批判する記事が多かった。西山さんが名誉を回復する15年9カ月の間、メディアはどう報じてきたのか、メディア側が自らを検証した記事は見当たらなかった。

2017年5月から、この呼吸器事件をめぐる問題を調査し直し、報じたのは中日新聞だった。当時、西山さんは服役中。中日新聞の大津支局の記者が、西山さんの手紙と裁判資料を読み込んで、「冤罪ではないか?」と疑問に思ったことから調査が始まった。中日新聞大津支局によると、2017年5月14日から、2020年3月31日までに、中日新聞が報道した連載記事は、40本という。

中日新聞は、過去の調査報道をまとめた冊子『無実の訴え12年 滋賀呼吸器事件』(定価400円)を2019年12月に発行した。その冊子の最後に、秦融編集委員が次のように書いていた。

「しかし、忘れてならないのは、私たちは2004年、警察の発表のままに西山さんを犯人扱いした『加害者』でもあることです。それについては、編集局長の言葉をもっておわびし、西山さんに『そこまで言ってくれて、もう十分です』と許して頂いてはいるものの、私たちが、今も『西山さんの手紙』というタイトルで報道を続けられるのは、西山さん本人とご両親が私たちを信頼し、私たちに託してくれた思いがあってのことだということを肝に銘じていかなくてはならないと思っています」

「冤罪は『組織』が作り出す側面があります。報道の側についても、それは同じです」

警察発表をそのまま鵜呑みにし、長い年月、苦しんできた無罪の市民を救い出せなかったメディアの事件担当記者らは、自らを省みる必要があるのではないか。本人や家族、支援者らが、報道機関へ、何度も「無罪」を訴えていたのにもかかわらず。

↓2020年3月31日付・京都新聞
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/204052

↓2020年3月31日付・毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20200331/k00/00m/040/296000c

↓2020年4月1日付・中日新聞

https://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2020040102000117.html

↓2020年4月1日付・読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20200331-OYT1T50316/

↓2020年3月31日付・産経新聞
https://www.sankei.com/affairs/news/200331/afr2003310046-n1.html

↓2020年3月31日付・朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASN3072ZXN3YPTIL014.html

↓2020年3月31日付・NHK

https://www3.nhk.or.jp/lnews/otsu/20200331/2060004513.html

↓2020年3月31日付・毎日放送

https://www.mbs.jp/news/kansainews/20200331/GE00032336.shtml

↓2020年3月31日付・テレ朝

https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000180523.html

↓2020年3月31日付・読売テレビ
https://www.ytv.co.jp/press/kansai/59075.html

↓2020年3月31日付・TBS

http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3944221.html

参照記事:2020年1月29日付・ウオッチドッグ

冤罪を生む刑事司法の病理に迫る/呼吸器事件の一連の報道が冊子に/中日新聞/ウォッチ・番犬記事№5