滋賀県漁業協同組合連合会が運営する南郷水産センター(大津市田上黒津)に対して、滋賀県が土地と建物の使用料(約5,000万円/年相当)を徴収せず、50年以上無償で提供し続けていた。いったい、どのようにこの問題が明らかになったのか。

ウオッチドッグは、調査に至るまでの、今回の取材過程を明らかにする。

♦2019年6月6日
ウオッチドッグ記者の元に、青年会館の減免率に関する1年前の財政課の協議文書が情報提供として届いた。

青年会館に対して、従来の減免率100%無償から、使用料を取る減免率75%にする方向性を、県財政課と子ども青少年局、自然環境保全課が2018年6月に協議していた。この時は、減免率75%で協議しているが、その後、なぜか、減免率95%へ変更となった。

この協議録の中で、75%の減免率にし、青年会館から利用料を徴収した場合、他の団体へどう影響するかを財政課が言及していた。「減免率100%の該当団体数は少なく、影響範囲は狭い」という話が出ていた。その中でも、影響を受ける団体として「水産センター(水産課。減免なしで3000万円)」と「文化教室(文化振興課で使用料100万円)」という記載があった。

水産センターへ、3000万円タダで貸し出し?
滋賀県が、ホテルを営業している一般財団法人滋賀県青年会館へ県有地1300万円をタダにしていたという情報を耳にしたときも驚いたが、さらに大きな規模の土地を一民間団体へタダで貸し出していたようだ。
この破格の金額に驚いたウオッチドッグ記者は、県水産課へ確認の電話をした。滋賀県漁業協同組合連合会が運営している南郷水産センターへ、2018年度まで土地と建物を無償提供していたという。「3,000万円ですか?」と質問すると、「5,000万円ぐらいになります」という回答だった。「ある文書には、3,000万円と書いてましたが」とさらに質問をすると、「今まで、土地の評価をしたことがなかったので、だいたい3,000万円ぐらいだろうとおおよその金額を出したのだと思います。今年度は、きちんと土地評価をして、5,000万円の使用料だということがわかりました」と答えていた。

これだけの規模の土地を、一民間団体へ貸しだしておきながら、減免率がなかった場合、本来いくらの使用料なのかを調べていなかったのか?
県の対応を不審に思ったウオッチドッグ記者は、南郷水産センターの現地調査をすることにした。

◆2019年6月13日(木)快晴
午前10時30分に、大津市田上黒津にある南郷水産センターへ着く。南郷水産センターの向かいにある駐車場へ入ると、広大な敷地に、ほとんど車が停車していない。

県有地をタダで借りていたんだから、駐車場もタダだろうと思っていたら、なんと利用時間に関係なく一律500円(乗用車)を、水産センターの入場券売り場で支払わされた。入場料も、大人400円。

入場券売り場の事務所は、けっこうな広さで、それなりの机もあった。事務所には、3人の職員がいた。
「ここの駐車場も県の土地ですよね? タダで借りてますよね? どうして、駐車場代がいるですか?」と受付の女性に質問すると、「この紙にも書いていますけど、乗用車は500円です。運営は滋賀県漁業協同組合連合会です」という説明だけだった。
センター内に入ると、入場者はゼロ。釣り堀やらもいくつかあったが、魚をみかけない。「誰かいませんか?」と声をかけると、年配の作業員らしき男性が出て来た。「釣り堀ってやっているんですか?」と聞くと、「はい、マス釣り400円です」と答えた。
「お客さんがいないですね?」と聞くと、「土日は、1,000人ぐらい来ます」という説明だった。

何か面白いものがないかとセンター内を回っても、目ぼしいものは何もなし。これが、野外食堂かと思ったものはあったが、魅力なし。センター内に入って15分ぐらい回って出た。受付の女性に、ひと言「何も面白いものがなかったですね」とだけ告げた。
平日は、ほとんど開店休業のセンター内を見てまわるのに、駐車場代500円と400円の入場料計900円を支払ったことになる。土日は1,000人ほどが来るということだが、駐車場代に入場料だけで、単純計算で1日90万円。金魚釣りや、マス釣りやらをして、その度に、客からお金を受け取るとなると、漁連もかなりの売り上げだろう。県民の財産でもある県有地や建物の賃借料がタダなのだから、気楽な商売だ。

南郷水産センターの駐車場横に、国土交通省の琵琶湖河川事務所が運営する入場無料の「アクア琵琶」もある。アクア琵琶に来場した団体客のマイクロバスの駐車場代900円も、県有地タダで運営していた南郷水産センターへ、バス会社が、直接、支払いをしていたという説明だった。これを商売上手というのだろうか。