滋賀県東近江市で2003年に起きた人工呼吸器事件で、滋賀県警が、元看護助手の西山美香さん(39)に有利となる証拠が含まれた「捜査報告書」を、約15年間も隠し続け、2019年7月になってようやく検察に提出していたことを、11月7日付で報道機関各社が一斉に報道した。西山さんは、滋賀県警から自白を誘導され、作成された「自供書」を基に有罪判決を受け、12年間にわたり服役させられていたことになる。西山さんは再審で近く、無罪となる見通しだが、失われた年月は戻らない。滋賀県警は、報道機関の取材に対し「コメントを差し控える」としている。
↓11月7日付読売テレビニュース
https://www.ytv.co.jp/press/kansai/48228.html
↓11月8日付ABCニュース
https://www.asahi.co.jp/webnews/pages/abc_3818.html
↓11月8日付MBSニュース
https://www.mbs.jp/news/kansainews/20191108/GE00030321.shtml
↓11月8日付FNNニュース
https://www.fnn.jp/posts/2019110812111001KTV
元看護助手の西山美香さん(39)は、2003年に滋賀県東近江市(旧湖東町)の湖東記念病院で、人工呼吸器を外して男性患者を殺害したとして有罪判決を受け、12年服役したが、2018年12月に大阪高裁で、2019年3月に最高裁で再審請求が認められた。10月に入ると、検察が有罪立証を断念し、無罪となる見通しを各社が報道していた。
再審確定後、検察が捜査当時の資料を弁護団側に開示した中で、西山さんに有利となる証拠が含まれた「捜査報告書」が出てきたという。2019年7月に滋賀県警が検察に初めて提出したという。
西山さんが逮捕される前に、解剖医が「チューブ内の痰づまりが原因で死亡したことも十分に考えられる」と記した所見や、「チューブが外れたのは故意ではない」とする西山さんの自供書が、この「捜査報告書」に含まれていたと、各社が報道している。
↓2019年11月7日付日本経済新聞(一部)
↓2019年11月7日付朝日新聞(一部)
中日新聞大津支局の調査報道が真実の扉を開けた
ウオッチドッグは、2018年1月30日付のウオッチ番犬記事№1で、中日新聞が報道した呼吸器事件について紹介した。中日新聞の角雄記記者は、2017年5月21日付の記事で、滋賀県警の捜査手法を批判していた。
「アラームが鳴った」という誤ったことを半ば暴力的に言わされ、「うそ」を前提にした自白は「自発性」を論じるに値するのか。夜も眠れないほど悩み、取調室で自滅していくように出た言葉を「自ら供述した」と額面通り受け取れない。
中日新聞の丹念な調査報道が、真実の扉を開けた。
「私は殺していません」/呼吸器外し事件を徹底追及/中日新聞と毎日放送/ウォッチ・番犬記事№1
殺人犯として12年も服役した元看護助手の西山美香さんの再審開始が決定したのは、昨年12月。その7ヶ月前の5月14日から、中日新聞の取材班が、自白の「自発性」が疑問だとして、西山美香さんの事件を追及し始めた。中日新聞は、5月14日から12月まで、13本の記事を発信し、事件の全容に迫っている。
2018年1月30日 ウオッチドッグ
5人の取材班の中心となったのが、中日新聞大津支局の角雄記記者。西山美香さんが家族に宛てた手紙もしっかり読み込み、さまざまな角度から検証し、西山美香さんの事件は冤罪ではないかと問題提起している。中日新聞の一連の報道は、1人の女性の人生を変えた真実に迫る調査報道といえる。
角記者と取材班が2017年から地道な報道を続けた
↓2017年5月21付中日新聞/西山美香受刑者の手紙・(中)強要されたうそ/自白の「自発性」疑問
↓執拗に調査報道を続けた中日新聞の呼吸器事件取材班。過去の報道より(一部のみ)