大阪府水上警察署の署長の収賄を報道したことがきっかけで、明治のジャーナリスト、宮武外骨は大阪地方裁判所から「官吏侮辱罪」の罪状を言い渡された。禁錮刑が確定したら、刑務所に収監させられる。この判決を「蛮的判決」と呼び、控訴院に控訴した一方、明治37年(1904年)3月23日発行の滑稽新聞第69号でも、「賄賂軍の真相」と題してますます収賄署長を追及した。目を見張るのが「漫画」による表現手法だ。
賄賂を受け取った萩欽三署長を上段、滑稽記者の小野村夫子(※宮武外骨のペンネーム)を下段に主人公として登場させ、2つのストーリーを比較させながら、栄華と没落のストーリーを滑稽に表現し、収賄署長を一刀両断している。


漫画①
▲上段
「賄賂は取ったが3日後に返したという御警視殿の現在
・1コマ目(右)
警察署長 萩欽三 安治川水上警察署
・2コマ目(左)
退署時刻で自宅に向はる
▼下段
警察署長が賄賂を取ったと告発した滑稽記者の未来
・1コマ目(右)
七赤金性 村夫子 滑稽新聞社編集所
・2コマ目(左)
裁判確定で堀川(※牢獄)に送らる


漫画②
▲上段
・1コマ目(右)
下女「お帰りやす」
旦那「今日も誰かが何ぞ持ってきただろう」
・2コマ目(左)
女房「ごゆっくりおあがりやす。ビールは貰ったのがまだたくさんおまっせ」
▼下段
・1コマ目(右)
門衛「やあ妙な奴が来た」
看守「今日はステモノを引っ張って来たぞ」
・2コマ目(左)
押丁(おうてい ※看守補佐)「早く食わぬか。何をグズグズしているのだ・・・何? お代わりを呉れ? 馬鹿をぬかすな」


漫画③
▲上段
・1コマ目(右)
用人「お礼方々何処かへお供を、ヘイ」
・2コマ目(左)
欽三「愉快、愉快」
▼下段
・1コマ目(右)
押丁「罰するぞ。その方は今何をしていた」
・2コマ目(左)
村夫「つまらん、つまらん」


漫画④
▲上段
・1コマ目(右)
茶屋の芸妓「おや、もーおやすみですか」
・2コマ目(左)
巡査「萩欽三はその方か」
▼下段
・1コマ目(右)
牢屋の便器「早、ぐうぐう寝ている」
・2コマ目(左)
出迎者「小野先生は貴方様ですか」
滑稽新聞・第69号が発行された時期は、日本がロシア軍と闘っている日露戦争の真っ只中。日本全体が「ロシア軍」との戦争報道一色になっている中、滑稽新聞社は「賄賂軍」との闘いに紙面を割いている。緊張状態の日本の庶民へ笑いで、権力腐敗を伝えている。収賄署長の漫画だけでなく、69号には、「秘密外の〇〇」と、伏せ字だらけの記事で世間の度肝を抜いた記事も掲載されていた。伏せ字だらけの記事はウオッチドッグでも滑稽新聞№37で紹介した。さらに、四天王寺の割れた大吊鐘(※四天王寺は世界最大の大吊鐘と世間に吹聴し割れていること秘密にしていた)をロシア軍との闘いに備えて大砲にせよと書き、大釣り鐘を坊主たちが引っ張っている皮肉を込めた挿絵を記事に入れた。大吊鐘の大砲記事もウオッチドッグの滑稽新聞№35で紹介した。宮武外骨の類まれな表現力は、これらの3本の記事が掲載された滑稽新聞・第69号で余すことなく発揮されている。
