ウオッチドッグは、毎日放送「ミント」が8月19日に放映した、旧湖南有線放送の放置電柱の内容を見て、メディアのあり方を考えさせられた。

毎日放送「ミント」は「憤懣本舗」の中でウオッチドッグ(2019年1月28日報道)朝日新聞(2019年5月5日報道)関西テレビ(2019年5月22日放映)などが先行した報道を、追い掛ける形で報じた。しかし、新たな視点や情報は何もなかった。県や市への取材は、テロップのみで、コメントも従来通りの内容だった。今まで動いてこなかった責任者の1人、瀬田学区自治連合会長の内田一豊氏を、まるで“心配顔の被害者”のように描く始末だった。本丸の「湖南有線放送農業協同組合」には手つかず。追及すべき相手を追及しない、名ばかりの「憤懣」にとどまっている。

元々、湖南有線放送の放置電柱の問題は、ウオッチドッグが今年1月28日付で、報道したことが発端となっている。ウオッチドッグとしては、この報道をきっかけに、取材網が広く、たくさんの記者を抱える大手メディアが、歴史的な背景を突き止め、責任者を明らかにし、組合財産はどこに行ったのかを突き止めてほしいと思っていた。そして、関係機関や関係者への責任追及を徹底的にやり、出来るだけ早く、危険な電柱を撤去できる道筋を見つけてほしかった。

ウオッチドッグは、1月28日の最初の報道の後も調査を続け、ウオッチドッグとしてわかった範囲の検証記事を4本書いた。これが小所帯のウオッチドッグとして、精一杯の取材と報道だった。

一方、他のメディアの報道は、ウオッチドッグの初報(1月28日)、「こういうことが起きている」という事実に焦点を当てた記事をなぞっただけの内容だった。

↓参照記事:後の調査でわかった県や市と組合の関係などをウオッチドッグが、2019年5月7日に報道した。

代表理事は元市議・元県職員/県と市が責任追及せず/市は関係文書を大量廃棄/湖南有線放送問題/ウオッチ滋賀№22

ウオッチドッグ記者としては、こうした大手メディアに対するイライラ感を、大手メディアで、新聞と通信社で記者経験があるデスクに、ぶつけてみた。

記者とデスクが、「メディア遊歩道」でやりとりを始めた。

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ウオッチドッグ記者
毎日放送の番組は、まったく物足りない内容で、がっかりしたというのが正直なところです。電柱を残したまま解散した「湖南有線放送農業協同組合」の責任を追及していません。滋賀県や大津市にも、大きな責任があります。
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ウオッチドッグデスク
まず、メディアの特性を考えてみましょう。テレビの場合は「わかりやすい内容」「伝えやすい内容」が優先されます。その上で大事にされるのが、「画(え)があるかどうか」です。電柱問題でいうと、「危ない電柱が放置されている」という現象が、シンプルでわかりやすい部分です。
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なぜ、こんな状態が放置されているのか、なぜこんなことが起きたのか、そこが伝えられていないような…。
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割れかかったり、接ぎ木した電柱が民家の庭に立っている。これがテレビというメディアが必要とする「画(え)」です。それに比べると、電柱を建てた組合の話は、「画」になりにくいですよね。複雑な背景や、過去の話は、短い時間で伝えにくいわけです。
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印象だけが強烈に読者に残る形となり、結局、「問題がある」「これからどうするんでしょう」ぐらいのレベルで終わってしまっています。
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もし、内容が正確で、方向も「正しい」ということであれば、読者・視聴者に強い印象を与えたとしても、問題ないはずです。
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正しければですが…。誰に責任があるのかを追及せず、解決の道筋も示さないでは、地元住民にとっては、何の役にも立たない、野次馬的な話題になるのではないでしょうか。
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もともとメディアは「野次馬的なもの」です。「何か問題あり」と報じるメディアが存在すること自体は、喜ばしいことだと思います。
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確かに、「問題あり」と報じるメディアが増えるのはよいと思いますが、伝えるべきことは伝えてもらいたいです。テレビが、情報提供者の自己保身に利用されるのであれば、喜ばしいとは言えないです。
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もちろんです。今回の番組の取り扱いにはさまざまな問題があると考えています。どこが問題だと思いますか? 
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なぜ、もっと多くの住民の声を取り上げなかったのか。なぜ、内田会長の声が中心なのか。そこが問題ではないでしょうか。当時の組合の元役員らも、大手メディアの情報網を使えば、探しだせると思います。組合の元役員らを取材し、私有地の住民の声を取材し、通勤で通る住民の声を取材し、保育園や学校に通う子どもたちや保護者の声を取材して…。そうした多数の声を取材できる立場に大手メディアはあると思います。
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その通りだと思います。一部の住民の声は取り上げていました。しかし、正確に秒単位で計れば分かることですが、明らかに内田会長のコメントは長すぎます。情報源が1人に片寄りすぎています。
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最初から最後まで、結局、内田会長が思い描いたストーリーを下地に作られているという印象を持ちました。つまり、内田会長が、自分には責任がない、行政には何とかしてもらいたいと訴えているように描かれています。
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内田会長が情報提供者だと思われますが、まるで「被害者を代表するリーダー」気取りです。また、番組を作る側が、情報提供者の言い分を、取材する側が鵜呑みにしているわけです。何の意図があるのかを探らないと。
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とりあえず、先に報道した他社のものをベースに、手早く簡単にVTRを作ったとしか思えませんね。
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時間と手間をかけた、本格的な取材をしていないわけです。上っ面の“取材”。内田会長の話を聞き、現場を歩かせて撮影し、電柱も撮る。「画」をつないでいくだけ。これは、厳しい言い方になりますが、素人レベルの取材であり、プロだとは言えません。
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まぁ、 朝日新聞もそうでしたけど。 結局、後追いしたテレビ局も、朝日の報道に頼っても大丈夫だろうぐらいの感覚で、内田会長のコメントをベースに編集したのではないでしょうか。
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番組のコーナーは「憤懣本舗」です。「憤懣」の相手と位置づけた、滋賀県や大津市にどのような取材をしたのかわかりません。最後の方に、テロップでコメントを流しただけです。ひょっとしたら、メールや電話で聞いただけなのかもしれません。担当者の名前はもちろん、顔も声も出てきません。
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滋賀県や大津市に対しても、他のメディアが聞いたことと同じような質問をして、県や市も同じ答えを繰り返すだけ。あの市役所の外観と文字だけのテロップの映像が流れても、コメントした職員の部署や役職さえもわからないのですから、県や市も屁とも思わないでしょうよ。
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例えば、「憤懣」の相手がごみ屋敷の主人ら、一般市民だったら、カメラを向け、モザイクをかけてまで「画」を使うでしょう。ところが、相手が行政だったら「画」がなくてもOKなんでしょうか? 行政に対しては手加減しているのではないかと感じざるを得ません。担当者に現場を歩かせて、「画」を撮ればよかったのに。内田会長ではなく。
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なぜ、コメントした県や市の職員の氏名や顔を出さなかったのか。そこは謎です。そもそも、今回の「憤懣本舗」は、相手がわからない中途半端な「憤懣」になっています。あの放送で、内田会長は、誰に「憤懣」していたという構図になるのでしょうか。本当でしたら、清算手続きをせずに、解散した組合への「憤懣」になるはず。それなら、放送する側は、組合の元役員らの行方を追って、「憤懣」をぶつけないと。
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「内田会長 VS 県・市」という構図は明らかに間違っています。内田氏は地元の自治会長として、これまで何もしていない。一定の責任はあります。それにしても、県や市の見解について、担当者の名前も、顔も声も出さずに報じるのはアウトでしょう。この時代、「湖南有線放送」でネット検索すれば、ウオッチドッグや朝日新聞が既に報じた内容を、確認することができます。検索画面の上位に並んでいます。そしたら、誰もが容易に気がつきます。「憤懣本舗」は他のメディアが報じている内容をなぞっただけだと。バレています。
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確かにそうです。その後も調査を続けていたウオッチドッグにでも問い合わせすれば、取材を深めることかできたのに。こちらが取材で入手した資料は、今からでもいくらでも提供しますよ。
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さも、「憤懣本舗」が独自取材で明らかにしたかのように報じるのも、フェアではないです。先行して報じたメディアに敬意を表するべきです。少なくとも「一部のメディアでは既に報じて、問題が広がっている。今回、この番組は新たに、次のような新たな事実を掘り起こし、伝えていく」という形にすべきです。
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しかし、報道するだけまだ、マシなのかもしれません。少しも報道しないメディアがたくさんでしたから。テレビはともかく、深堀り取材できる新聞社に、もっと調べてほしかったですよ。
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新聞は「画」がなくてもいいわけですから。わかりやすくかみ砕いて伝えることができるはずです。問題意識が低いか、記者の取材能力が低いか、どちらかだと思います。特に、地元紙である京都新聞はどうしたのでしょうか? 盛んに「地域住民に寄り添う」とPRしていますが、電柱問題には寄り添うつもりがないようです。
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地元紙には、もっと頑張ってほしいですね。 地元に根差した報道機関がきちんとした取材をしてくれたら、社会は良くなると思います。